第2話 僕は生き返った。
目を覚ますと僕はロイヤルスイートルームみたいな部屋にいた。
簡潔に説明すると白い、広い、豪華って感じ。
ベッドから起き上がり右を見る。
丸みを帯びた壁一面のガラスに透ける高所からの海。
左を見る。
同じベッドで横になり、俺と目が合って固まるメイド姿の美少女。
「……」
手には何かの本があった。寝そべって読んでいたらしい。
尚、傍らにはポテチみたいな物もあった。
「……おはよう?」
メイドさんは小首を傾げながら僕にニッコリと微笑み、その後、ゆったりとした動作で起き上がると、そのひらひらとした服をぽんぽん、と何かを払うように叩く。
「王様ぁああああ勇者が生き返りましたぁあああああ!!」
そして、まるでゾンビでも見たかのような形相で部屋を出ていった。
状況に追いつけない僕は、一連の流れをアホ面で見送る。
いや、文字通り置いてけぼりな訳だが。
「なんやねん」
やがて静まり返った室内で、やっと口にできたのがそれだった。
「……どこからが夢で、どこからが現実なんだ?」
死ぬ前の僕は、なんだかゲームみたいな世界で目を覚ましていた。そんで綺麗な王様が出てきた。スカートの中身は黒で、そんで火の玉が飛んできて。それが顔に直撃して……?
「顔! ……は、なんともないな……?」
なんか死にそうな大けがをしていた気がするのだが、触ってみた感じ痛みもなければケガもない。まあ触っただけじゃ分からないし、鏡でも見て確認をしよう。
「って……豪華な部屋の割に、なんだか随分と生活感があるな」
ベッドから降りた俺の目に飛び込んだのは、床のあちこちに放り出された衣服。そして散乱するお菓子の袋。あとはメイドが読んでいたものと似た装飾の本が、床のあちこちに散在していた。
「どう考えてもあのメイドの仕業だよな」
ともすれば、ここはあのメイドの部屋なのか?
うん、かなりくつろいでいたもんな。じゃあなんで僕がここに居るんだか。
僕は床に広がるアレコレを踏まないように移動し、バスルームと思われる部屋を見つけ、その鏡をのぞき込んだ。映っているのは長い黒髪をテキトーに後ろで束ね、同じく長い前髪で半分隠れたさえない顔を見せる高校生男子。
とても見慣れた自分の顔だった。
「……ケガ一つないな」
夢……だったって事なのか? いや、でもあのメイドさんはさっき王様って叫んでたし、やっぱりあの美少女のこと、なんじゃないのか。ってことはやっぱりあの顔面大火事も現実ってことに……? でも傷は一つもないし……???
ああもう、分からない事だらけだ。
そもそもここは何処なんだ?
僕の住んでいた世界ではなさそうに思えるが。
……と、鏡の前で首を傾げに傾げていると、リビングの方からバダーン! とドアを蹴り破ったかのような轟音が響いてきた。
「勇者様ー! よくぞご無事で!」
それはなんだかとても聞き覚えのある声だ。
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