転移したのはスライムが最強の世界でした。

かんばあすと

第1話 僕は転移した。

 目を覚ますと謎の神殿だった。

 冷たい石畳に倒れていた僕は、むくりと起き上がる。


「成功だ! 勇者が誕生したぞ!」


 周囲で野太い声が歓声を上げている。

 知らない声だ。

 僕はぼんやりする頭を振って辺りを確認する。

 なんか怪しげなローブの連中に取り囲まれていた。

 え。なにこれ。誘拐されたの僕。


「エデンへようこそ勇者。私はこの国の王、メディです」


 戸惑っている僕に近づいてきたのは金髪の美少女だ。

 白いドレスを身に纏い、宝石の散りばめられた冠を付けている。

 年齢は僕とそう変わらない様に見える。

 たぶん15~17歳くらいだろう。王というには若い。

 背は僕よりも小さく、全体的に細い。正に華奢って感じの子だ。

 胸は例外だが。


「どうかこの世界を救うため、我々に力をお貸しください」


「……Why?」


 なんだこれ。古めかしい神殿とか、魔法使いみたいな男たちとか、若くて綺麗なお姫様とか……まるでRPGみたいな展開じゃないか。


 僕は頬をつねってみた。……痛い。なんてことだ。

 僕は姫様のスカートをめくってみた。


「いやッ!?」


 僕の頬がスパァンと弾ける。


「痛ァッ!」


 打たれた頬はヒリヒリしている。

 どうやら夢ではない。そして黒だった。

 見た目に似合わず大人っぽい趣味をお持ちの様だ。


「王に何をっ!? この無礼者め!」


 若い男の声で叫んだローブ姿の一人が、僕に杖を突き出した。

 すると杖の先へ光が収束し、遂には僕に向けて何かが飛び出す。


「フレイム!」


「え? あ、ちょっと待っ……」


 美少女が気づき止めようとしている傍らで、放たれた火球は僕の顔面に直撃した。


「ほぐぅうう!?」


 後頭部へ突き抜ける衝撃。焼ける肌。激痛を感じる間もなく遠のく意識。

 その消えていく視界の左上に一瞬、緑色の棒線が見えた。

 それは瞬く間に短くなり、黄色から赤へと変色していく。

 はっはっは、まるでHPバーじゃないか。


「あ……あ……」


「――――」


 それが消えるのと同時に、僕も意識を手放した。


「「「「「ゆ……勇者が死んだー!!!」」」」

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