最終話 さよならは言わない


健は中古品を扱うおじいさんを連れて来ました。

愛さんは直ぐに尋ねました。


「 あの…… そのスーパーおじいさんが何のご用でウチにいらしたんですか? 」


おじいさんは聞くなりトラックの荷台を見せました。

大量の家の家具やお店の道具が詰められている。


「 あんた逹色々大変だったんだって?

…… んでだなぁ。

あのぉ…… この商品を良かったら買って貰おうかと思ってな。 」


おじいさんは道具を売りに来たのです。

愛さん逹は困った表情を浮かべました。


「 気を使って頂きありがとう御座います。

ですが我が家にはもう、そこまでの余裕は実はなくて…… 。

以前のような生活をするには、少なくても何十万も必要に…… 何百万かもしれませんし…… 。 」


悲しそうに言うとおじいさんは照れくさそうに。


「 知っとるわい!!

だから…… この支払いは少しずつでいい。

じじいの趣味みたいな仕事だ。

急ぎはせんよ。 」


愛さん逹はビックリしてしまう。

直ぐにそんな図々しい事出来ないと、断ろうとしても納得しません。


「 本当に…… 本当にもう良いんです。

家族で色々話し合っ。 」


「 蕎麦!!

ワシ…… 大好物だから毎日食べたい。

だから割引してくれたらそれでいい!

これは哀れみではない。

交換条件だ。 堂々としてもらいたい! 」


おじいさんはそう言い照れくさそうに、荷台の荷物を見せようとする。

とても良い話…… ですが、肝心な業務用のガステーブルとかの用具はありません。

それだけ買おうとしても、凄い額になるはず…… 。


「 ありがとう御座います…… 。

凄く嬉しいのですが。 」


愛さんが言いかけていると。

大きなトラックが一台止まりました。

そして二人の作業員が降りてきました。


「 黒崎さんですね。

直ぐにお荷物運ばせて頂きます!! 」


みんなは驚きました。

慌てていると作業員逹は直ぐに、トラックから何やら大きな荷物を運んで来ました。

勝手にキッチンに入り、壊れたガステーブルを退かしてしまう。


「 あのぉ…… 何をやっているんですか?

私達は何も頼んでいないのですが?? 」


そう言ってる間に大きな荷物の梱包を外し、退けた場所に設置している。

みんなで見るとそれは、新品のガステーブルです。

しかも四台も!


「 えっ!? …… 健君。

これも健君が手配したの?? 」


愛さんが言うと健は違うと頭を横に振る。

じゃあ誰が??


「 早く冷蔵庫も壊れてるから退けて、直ぐに新しいのを設置してくれ! 」


外から現れたのは、バーガー兄弟の兄でした。


「 あの…… 一体何をしてるんですか!? 」


そう聞くとバーガー兄は深く頭を下げる。


「 今回は私の弟が本当に申し訳御座いませんでした!!

何とお詫びをしていいか…… 。

それと今、営業出来てるのもこの武蔵さんのお陰です。

感謝しきれません…… 。

だから少しだけですがお手伝いさせて頂きます。

これは我々からの気持ちです。

受け取って下さい。 」


バーガー兄は土砂でダメになったのを直ぐ察知して、業者に問い合わせていたのです。


「 こんな高いの…… 。

絶対頂けません! 」


愛さんのお母さんがそう言うと。


「 私も正直蕎麦…… 凄い食べたくなりました。

だから勝手にしてる事です。

あと…… これは弟からの責めてもの気持ちです。」


刑務所にいるバーガー弟が定食屋武蔵のピンチに、責めて機材くらいは出させてくれ!

と兄に頼んだのでした。


「 こんな…… こんな沢山…… 。 」


愛さんは何が起こってるか分からず、笑いながら涙がこぼれてきてしまう。


「 すみませんでした…… 。

仕事がまだ残ってるので失礼します。

何か足りなかったら連絡下さい。 」


そう言い帰ってしまいました。

店内には立派な機材が揃い、いつでも営業出来る状態になりました。


「 黒崎さん。

後はウチの道具をどうぞ。

かなりお安く致しますので! 」


「 あの!!

ありがとう御座います! 」


お礼が聞こえる前に居なくなっていました。

バーガー兄は照れくさいので、直ぐに行ってしまいました。

おじいさんの道具を買えばもう明日にも、営業は再開出来る。

もし営業出来れば直ぐに返済も出来る。


「 お母さん…… 私。 」


「 あなたが決めなさい。

やるかやらないかを。 」


愛さんは涙を流しながら、やりたい決意を伝えました。

もう諦めていたお店を再開出来る。

こんな嬉しい話、乗らない訳にはいきません。

直ぐに道具をトラックから降ろして、必要な物を買うことに。


離れた場所からハラケン達は見ている。


「 何かドラマみたい…… 。 」


ハラケンが目を大きくして口が開きっぱなしに。


「 これも全部このお店の料理のお陰だよ。 」


そう光は言いました。

みんな一安心して笑いました。

姫は涙もろく、泣いている。


「 うぐっ…… 。

ぐすっ。 良かった…… 良かったぁ!! 」


姫はようやく分かりました。

どんな困難も一生懸命頑張っていれば、いつか報われる事を。

簡単にお金を出せば良い訳ではない。

良く分かりました。


「 良かったぁ!!

良かったよーー ひっぐ! 」


大泣きしながら姫のお父さんが見ている。

お母さんがなだめつつ静かに車へ。

本当は誰よりも心配していたのかも知れません。


愛さん逹はまたお店を再開出来る事に。

みんな嬉しい気持ちでいっぱいに。


「 健! お前凄いな。

あのおじいさん呼んだりして。 」


ハラケンがそう言うと健はニヤつきました。


「 んふふふっ…… ぽひゃっひゃっ!!

俺様がタダでやると思ったか!?

全ては俺の策略よ! 」


何と健は大笑いをして何やら考えていた事を明らかにする。


「 こんなにやったら愛さんが俺様を好きになるのは当然!!

必然なんだよな!

これこそ夏休み最後に相応しい……

どひゃひゃひゃっ!!」


なんと!?

健は愛さんを惚れさせる為にここまで頑張って来ました。

今なら断れるはずない!

何とも汚ない男…… 。

遂に正体を現しました。


「 それはズルいぞ!

男がそんな…… 。 」


ハラケンが健を止めようとしても、全く聞く耳もちません。


「 うるせぇ! お前との友情もここまでよ!

そんでは告白してこよっと。 」


健はいつの間にか謎のスーツに着替え、愛さんの元へ…… もう健を止められる者は居ない。

ゆっくりと近付いて行く。


ドンドンドンッ!

お店に来客が…… 。

一人の男性だ。


「 愛っ!! 大丈夫だったかい!? 」


イケメンでカッコいい男が直ぐに愛さんの元へ駆け寄る。


「 薫!! 今更なんの用なの!? 」


愛さんが激しく動揺している。

店内は静まりかえる。


( 何か…… 何か嫌な予感が…… 。 )


健のパーフェクトプランに一つの不安要素が。


「 俺が間違えていたよ…… 。

もう迷わないよ!

結婚しよう…… 俺と。 」


そう言いダイヤの付いた指輪を出しました。

みんな急なプロポーズに驚く!


「 うぉーーっ!!

誰だか分かんないけど、今はもう俺の彼女になるんだ!!

邪魔させる…… 訳にはーーっ! 」


健は勢い良く走る!

今なら間に合う…… この夏休みの築き上げた絆。

それを失わない為に!!


「 薫…… 遅いよっ! 」


そう言い抱き締め合いました。

愛さんはプロポーズをお受けしてしまう。

健は大きく転んでしまう。


( そう言えば言ってた気がする…… 。

違う道に進んだ元カレが居たとか。

こんな女の弱ったとこ狙う奴…… ろくな男じゃないのに。

悔しい…… 少し眠らせてくれ。 )


健は無様にも告白する前に、目の前でプロポーズされてしまい玉砕してしまう。

儚い恋はここで幕を閉めるのでした。

ハラケン達は何も言葉が出ませんでした。


何やらともあれ帰る時間に…… 。

駅まで送ってもらい帰る事に。


「 お兄ちゃん!

また来てね。 待ってる! 」


華ちゃんがハラケンに抱きつく。

ハラケンも笑い。


「 うん! また絶対来る。

約束だよ。 」


愛さんやおばさん。

華ちゃんも見送りに。

そして…… 突然現れた薫も一緒に。


「 本当にありがとう…… 。

私は忘れない。 また来てね。 」


愛さんは薫と腕を組みながら感謝を伝える。


「 俺からも本当にありがとう御座います。

愛と二人でお店を頑張ろうと思います。

いつでも来て下さい!! 」


みんなも苦笑い。

でも悪い人ではない。

良い人なのがまた…… 。


「 それじゃそろそろ…… あれ?

健は!? 」


健の姿が何処にも見当たりません。

駅までは死人のような姿で居たのに…… 。

健は既に新幹線に乗っていました。


( 愛さん…… とんでもない女だったぜ。

傷が深い…… 少し眠らせてくれ。

俺は疲れた…… 。

って言うか…… 薫ってだれ!!!?? )


健は静かに深い、深い眠りへ…… 。


「 健ーーーっ!!

そっちの新幹線は逆だ!

それだと青森に行っちゃうぞ!? 」


ハラケンは走るも、ゆっくり扉が閉まる。

健を乗せた新幹線は青森へ。

みんな言葉が出ずに見送ってしまいました。

呆れて何も言えない…… 。


また冬休みにまた来る事を約束して帰る事に。

愛さん達は新幹線が見えなくなるまで手を振り、沢山の感謝を伝えました。

そして直ぐに見えなくなってしまう。


「 お姉ちゃん…… また会えるよね? 」


華ちゃんが愛さんに聞くと笑いながら言い返しました。


「 うん。 絶対また来るよ。

だからさよならはいらない…… ね。 」


ハラケン達は成長しました、それと同時に愛さんや華ちゃんも。

また冬休みにまた来る事を約束して帰って行きました。

本当に長くも短い夏休み…… 。

ハラケン達をまた一つ大人へ近付けた、そんな気がする夏休みでした。


ちなみにハラケンは久しぶりに帰り、お母さんに沢山叱られてしまいました。

当分は夜ご飯はふりかけご飯に…… 。

心配させてしまったので仕方がない。


新しいNEW定食屋武蔵はテレビの影響もあり、毎日大忙し。

店に入ると直ぐに見える場所に、ハラケン達と撮った想い出の写真が飾られている。


バーガーショップも負けずに新たな商品を出して、対抗してきました。


それぞれがまた新たな一歩を踏み出す 。

一人の迷い子を残して…… 。


「 …… ん?? ここは? 」

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ハラケンと健の地獄の夏休み ミッシェル @monk3

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