第39話 繋がる輪


愛さん達はショックで何も出来ずにいました。

二階の部屋で愛さん家族はじっとして、これからの事を考える事しか出来ませんでした。

おじいちゃんは近くの何も被害がなかった、知り合いの家にお世話になっていました。

おじいちゃんにはこの光景は、あまりにも辛すぎるので。


「 愛…… 少し良いかしら。 」


お母さんから愛さんに話がありました。


「 実はね…… ウチのお店は保険とか入ってなくて、この被害はどうにもならないの…… 。

こんな事なら入っとけば良かったね…… 。

本当にごめんね。 」


愛さんは横に頭を横に振りました。

もうこれだけは誰の責任でもありません。


「 お母さん…… もう良いよ。

私達こんなに頑張ったんだから。

お父さんも許してくれるよ。 」


そう言い抱きしめ合いました。

これからは別の生き方をするしかありません。

愛さんはどうにか大学を続けながら、働く決意をするのでした。


ハラケンと光は廊下でその話を聞いていました。

ゆっくりと一階へ降りて行きました。

入れる雰囲気ではなかったからです。

一階で二人は座りました。


「 ハラケンは充分頑張ったよ。

あんたはウチが思ってる以上に、ここのみんなを笑わせて喜んで貰う為に頑張ったよ。

だからそんなに落ち込まないで? 」


光はハラケンを励ましました。

ハラケンは静かに立ち上がり、また掃除をし始めました。

それしか出来ないからです。

光も黙って手伝いました。

もう夏休みは終わるので帰らないといけない。

せめて何か出来る事をしたいからです。


その日はハラケン達は旅館に泊まりました。

家があの状態では仕方がありません。

愛さん達は家で休み、ハラケン達は最後の日夜を旅館で過ごす事に。


姫は一人近くの池を眺めていました。

何も出来ない無力さで心苦しくなっていました。

そこへ黒崎がやって来ました。


「 姫…… 大丈夫かい?

色々大変だったから仕方ないけど。 」


黒崎は気にして肩に手を置く。


「 お父さんがお金出すのダメだって…… 。

なら何が出来るの?

私達はこのまま帰るしかないのかな。 」


姫は悲しそうに話しました。

黒崎はじっくり考えましたが答えが見つからず。


「 姫は充分頑張ったよ。

多分姫のお父さんは助ける方法は、お金だけじゃなくてもっと他にもあるって言いたかったのかな。

僕にも全然分からないけどね。 」


姫はそれでも納得できませんでした。

あのお店に何が出来たのだろうか…… 。

黒崎の手を握り静かな夜を過ごしました。


ハラケンと光は二人で旅館の友楽室に居ました。


「 明日で最後なのかぁ…… 。

あっという間だったなぁ。 」


ハラケンは夏休みの生活を思い出していました。


「 色々あったんだもんね。

ハラケンは成長したよ。

あんなにお店の為に頑張ったんだもん。

凄いんだよ。 」


光はハラケンを誉めました。

そんな事は滅多にある事ではありません。


「 俺はいつも諦めたり投げ出したりしてばっか。

でも今回だけは逃げたくないんだ。

でもこれ以上何が出来るか…… 。 」


ハラケンはそう言い悔しがりました。


「 ハラケン…… 今回は仕方が。 」


光がそう言うと突然走ってハラケンは部屋へ。

部屋に行くなり買っといたお弁当やお菓子を食べまくり始めました。

バクバク…… バクバクと沢山。

光も部屋へ来るなり驚きました。


「 えっ…… 何やってんの?? 」


「 バクバク…… ごくんっ!!

わからん! だから食う。

食えば何か思い付くかも。

だから食欲を満たして考える。

だから今はそっとしといてくれるかな? 」


そう言い勢い良く食べ進めました。

光は訳が分からず自分の部屋へ。


「 本当に…… 男ってバカ。 」


その日、健は旅館には来ませんでした。

帰ってしまったのでしょうか?


その夜に愛さん達は家族で話していました。


「 明日はハラケン君と健君達帰る日。

本当に感謝する事ばかり。

私達はもう大丈夫…… だから明日は堂々と見送りましょう。

それが私達の最後の出来る事だから。 」


お母さんがそう言うと愛さんも華ちゃんも納得しました。


「 私は泣かない…… もう大きいんだもん。 」


華ちゃんも離れるのは悲しいですが、また会えるので泣かない事にしました。

過ごした時間はそんなに長くなくても、絆はとても強いものになっていました。


「 そうだね…… あのお店が大手のお店に負けなかった。

それだけでも証明出来たんだもん。

もう後悔なんて…… ない。 」


まだまだ未練がありましたが、ハラケン達を送り出す為に明日だけでも強くありたい。

沢山の笑顔をこの家族に与えてくれました。

男はこの家にはほとんど居なくて、家に来てからと言うもの、騒がしく笑いが絶えませんでした。

思い出してもくすっと笑みが溢れる。

愛さん達は明日、ハラケンを元気で心配させず送り出す覚悟をしました。

その日の夜は少し静かな夜でした。


同じ時間…… 下の街の中古品を扱う店に一人の男の姿が。


ドンドンドンッ!!

閉まったシャッターを叩く。


「 うるせぇーーなっ!!

こんな夜中に…… ってお前さんは。 」


そこはハラケンが自転車でケガしたとき、お世話になった中古のお店。

おじいさんがイライラして出ると、目の前には健の姿が…… 。


「 じいさん。 一生の頼みがある。

頼むっ…… 聞いてくれ!! 」


健は膝を着き頼み込む。

おじいさんも急な事にびっくりしてしまう。


「 どうしたんだよ急に!

まぁ中へ入れ。 話はそれからだ。 」


健は何をしにお店へ?

その日は健はおじいさんの家にお世話になりました。


そしてハラケン達の帰る当日。

愛さんは目を覚ますと、一階が騒がしくて起きてしまいました。

ゆっくりと一階へ降りると、そこではハラケンや光と黒崎と姫が必死に、店内の掃除や瓦礫や木の破片をどかしていました。


「 えっ…… どうしたの?

こんな朝早くから。 」


愛さんはびっくりして聞くと、ハラケンは汗だくで言いました。


「 帰るのに掃除しなきゃ気分悪くて。

いつまたこの店やるにしても、こんな散らかってたら出来るもんも出来ませんからね。 」


ハラケンは沢山食べて出来る事は、やっぱり体を動かすしかない。

その結果がこれでした。

光達もおバカな発想かもしれないけど、こんな事でもしないより何倍も良い。

そう思い朝早くから手伝っていました。


「 えっ…… でも機材も食器も全部ダメになって、もう再開なんて…… 。 」


ガタガタ…… 外からおんぼろな軽トラの音が聞こえて来ました。

みんなで外に出るとその軽トラには健の姿が。


「 はーーっはっは。

はーっはっはっはぁ!

この物語の主人公のお通りだぁーーいっ!!」


窓から顔を出して現れる。

そして店の前に止まりました。

二階からも華ちゃんやお母さんも駆け付ける。


「 健君…… これって一体?? 」


トラックの荷台には沢山のお皿やお箸やフォークにナイフ。

ガステーブルに冷蔵庫。

沢山乗っていました。

愛さんは驚きながら訳を聞くと、運転席から一人の老人が降りて来ました。


「 初めまして。

ワシは中古品を扱うスーパーじいさん。

山田鉄夫63歳じゃ。

商売させてもらいに来たぞ。 」


そう言い歯を見せながら笑う。

健は一体何をしたのか?

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