第38話 天災


次の日に大型台風が訪れました。

台風、地震、雷。

毎年必ずやって来ます。

今回はどんなもんかな?

と甘く見ていると痛い目にあってしまう。

1日雨は降り続きました。

川は洪水寸前になり、どうにか溢れないようにとみんなで防いだりしていました。


ハラケン達は男は外へ少しでも手伝いに。

女性陣は食料確保やもしもの時の準備。

みんな台風に振り回されてしまっていました。


「 ん?? …… これは…… 。 」


ハラケンは山道を歩いているとき、何か異変に気付きました。


ゴゴゴゴゴゴ……ッ。

崖に耳を当てると聞いた事もないような、凄い地響きが聞こえて来たのです。


「 ヤバい!! 土砂崩れが来る!!

下まで逃げろーーーっ!! 」


大声でハラケンは叫んだ。

ですが土砂崩れしてる気配もありません。


「 どうしたんだ?

土砂崩れするように見えないぞ? 」


翼が駆け寄るとハラケンは慌てて説明しました。


「 本で読んだんだ。

雪崩れや土砂崩れとかは、起こる前に凄い地鳴りが崖とかから聞こえるって!

今、耳当てたら凄い音が…… 。 」


震えながらそう言うとみんなは、一斉に耳を当てました。


ゴゴゴゴゴゴッ…… !!

凄い音が聞こえてきて、ハラケンの言った事は間違いではないと思いました。

直ぐに男達は凄い勢いで山道を下る。

ぐちゃぐちゃな地面で滑りながらも、早く下りなければ土砂崩れに巻き込まれてしまう…… 。

水も凄い勢いで流れ始めました。


「 この坂道下ると…… 定食屋武蔵がある。

早く避難させないと!! 」


健は直ぐに村長さんに連絡して、緊急避難命令を流してもらいました。


プオーーーッ!!

直ぐに緊急避難命令が鳴り響きました。

近くに住んでる人達は直ぐに、近くの安全な公民館に避難を始めました。


そして愛さん達は…… 。

その避難放送聞き、絶望してしまいました。

何故ならここの場所は、坂道から少し横に曲がったとこに建っているので、もし土砂崩れが起きたら被害が起こる可能性はかなり高かったのです。


「 どうすんの…… どうするのよ…… 。

ここの店置いていけないよ!

沢山…… 沢山思い出もお店もあるのに。

絶対行けないよ!! 」


愛さんは店を置いて行けなくて、かなり動揺していました。

直ぐに愛さんのお母さんが駆け寄る。


パチンッ!!

店内にビンタの音が響く。


「 バカ言うんじゃないよ!

命より大切なもんなんてないのよ。

さぁ…… 早く大切な物だけ持って、直ぐに行くわよ。 」


愛さんも悔しくて泣きながらも、支度をして避難する事に。

華ちゃんも泣きながらお母さんの手を放しません。

みんなここから離れたくないのです。

おじいちゃんは先に避難していたので、残りの人達で避難所へ。

その日の雨は残酷にも、止む気配は全くありませんでした。


ズドドドド…… ッ!!

その少し後に土砂崩れが起きました。

間一髪の所でみんな退避出来ました。

激しい濁流が流れ、木や家などが無情にも簡単に崩れ流されてしまう。

こんな酷い事態にも関わらず避難出来たのも、ハラケンのやんちゃってキャンプ経験者だったお陰です。


激しい雨は朝まで続きました。

避難所で一夜を過ごして外へ。

激しい台風は嘘のように過ぎ去り、何事もなかったかのように太陽が昇る。


愛さん達女性陣は外に出て、やっと去った現状に少し一安心しました。

そしてゆっくりと我が家へ。

周りは悲惨な現状。

家の破片や倒れた木々が激しさを物語っている。


そして定食屋武蔵に到着。

運が良くて家は無事に残っていました。

大きな土砂や大木は武蔵の方にはあまり来なかった模様。

何て言う奇跡。

ですが中へ入ると酷い有り様…… 。

食器は割れて料理器具は土砂がかかり、沢山流された物もありました。

ガスも使い物にならなくなっている。

二階は無事でしたが一階は部屋も、料理場も悲惨な事に…… 。


「 みんなの…… 私達のお店が。

家が…… こんな…… 。 」


愛さんは膝を着いて落胆してしまう。

愛さんのお母さんは華ちゃんを少しでも安心させる為に、二階へ連れて行きました。

みんな心を痛めていました。

折角借金を払い終えて、これから頑張ろうと思っていた所で…… 。


その後直ぐに男達が到着。

その惨劇を見て言葉を失う。


「 愛さん…… 大丈。 」


健が駆け寄ろうとすると、姫が止めました。

今はそっとして置くしかないと分かっているからです。

健も何も力になれずヤキモキしてしまう。

愛さん達は希望を失い、二階で少し休む事に。

災害は希望を全て奪い去って行きました。


数時間が過ぎて光は一人で厨房へ。

するとそこにはハラケンの姿が。

一人で木の破片やゴミを片付けたり、道具を拾い集めていました。


「 ハラケン…… ?

あんた何してんの? 」


「 …… ん? あぁ…… 。

こんな酷い光景見せられないだろ?

だから少しでも力になりたくて。

俺には…… よいしょ!

力仕事しか出来ない。

考えるの苦手だから体を動かす。

ここは…… 俺の大好きな場所だから。 」


ハラケンは一人掃除していました。

光も一緒に片付け始めました。

何も話さず黙々と綺麗にしていきました。

何か…… 何か力になりたくて。


姫は一人お父さんと会っていました。

何やら深刻そうな表情で話し始めました。


「 お父さん…… お願いがあるんだけど。 」


「 すまないがお金は出せないぞ? 」


お父さんは姫の話そうとした事を、全て見透かしていました。


「 どうして…… ?

だって、だってあんなのって…… 。

これから何だよ?

これからなのに…… 。 」


やるせない気持ちでいっぱいに。

お父さんは姫に背中を向けて話し始めました。


「 姫子…… これだけはダメなんだよ。

私達はお金がある…… 簡単に出せるかも知れない。

だからと言って仲良しだから、友達だから簡単にお金をあげたりして良いのか?」


姫は黙って聞いていました。


「 私達が出来るのはお金だけか?

お金を渡す以外何も出来ないのか? 」


お父さんが言うと姫は怒り。


「 お父さんのバカ!!

何言ってるのか分かんない!

勝手にやらせてもらう。 」


そう言い姫は走って行きました。

お父さんは一人濁った川を見ていました。

ゆっくりとお母さんが駆け寄る。


「 あなた…… 。

わざわざ悪者になる必要あったのかしら?

あなたが誰よりもお金を出してあげたいくせに。」


そう言いお母さんは微笑みました。

お父さんは静かに涙を流していました。

お母さんは奥さんなので分かっていました。

もし今回助けても、次また何か起きたら?

またお金を出すのか?

もしその境界線を越えてしまったら、互いにお金だけの関係になってしまう。

そうなって欲しくなくて、そこだけは非常になって言ってしまったのです。


健は一人むなしく坂を下って歩いていました。

何も考えずにただひたすら歩き続けました。


「 何かもうどうでも良くなってきた…… 。

俺達が来たの間違いだったのかな。

何も力になれない…… 。 」


とひたすら何も考えずに歩きました。

ただひたすら現実から逃げたくて。

そこへ一台の車がやって来ました。

ゆっくりと健の横に来て止まりました。


「 健。 乗りなさい。 」


健のお父さんでした。

健は車に乗り込みました。

ゆっくりと街へ車は走って行きました。

健は心も体もヘロヘロになっていました。


「 どうした? 私に反抗したのにもう音を上げるつもりか?

お前には本当ガッカリさせられるな。 」


健は無表情で黙って聞いていました。


「 私はお前が頑張ってるとこを初め見た。

人の為に汗を流して働く姿を。

意外に悪くなかったがな…… 。

まあどうでも良いことだが。 」


お父さんはそう言い黙りました。

健はもうやる気を失っていました。


( 色々頑張った…… 。

沢山汗かいたし、すげぇボコボコにもされた。

何回も筋肉痛になったし…… 。

もう疲れた…… 。 疲れた…… 。

なのにどうしてだ…… ? )


健の心が高鳴っていた。

心の高鳴りを抑えられない…… 。

まだ頑張りたい…… 。


「 俺は…… 俺は諦めない!

もう逃げない。 降ろせじいや!! 」


そう言うと車が止まる。

降りて健は。


「 父さん…… ありがとう。

諦めるの諦めるわ。

親不孝もんでごめん…… 。 」


そう言い走り街へ。

お父さんは健を見詰めていました。


「 バカもんが…… 。

相変わらずヘタレもんだ。

なぁ…… 母さん。 」


お父さんは亡くなった奥さんの写真を見て微笑み、車は走り去ってしまう。


明日ハラケン達は帰る日……。

一体何が出来るのか?

それぞれ考える…… 。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る