第37話 代償


お店の存続と借金返済の為の売り上げ向上。

借金取りにせめて、返済の見込みあるお店だと理解してもらうには、結果が必要だったのです。

賞金獲得してついでにお客さんの量まで増やせる。

ただし負けた代償は…… 店を潰さなければいけない。

これはテレビの企画外での約束…… 。


そして今…… 遂にここに勝利者が誕生する。

定食屋武蔵。

定食屋武蔵があの人気バーガーショップに買ったのです。

ハラケンや健、他のみんなも泣く者や大きくガッツポーズを取ったりしました。

長き苦しみからやっと解放されるのです。

愛さん家族はどれ程この瞬間を待ったのか…… 。


今回のバーガー弟の暗躍により、田中さんの車への妨害行為。

ハラケンと健へ不良集団を差し向ける。

最後の保険として司会者の買収…… 。

最低行為の数々にみんなも口が開いてしまう。

ずるをしてしまえばいずれバレてしまうのです。

ゆっくりとバーガー兄が弟に近寄る。


「 兄貴…… 兄ちゃん…… 俺…… 俺。 」


悲しむ弟の頬に拳を振るう。

弟は拳を貰って倒れる。

そのときは既にテレビの生放送終了し、何とか暴力シーンはテレビで流されずに済みました。

悲しく立ちながら兄貴は。


「 バカ野郎…… お前なんて弟でも何でもない!

お前なんて直ぐに警察が来て、直ぐに刑務所行きだ。

とんだ家族の汚点だよ…… 。

二度と顔を見せるな!! 」


弟は泣いた…… 大人になってこんなに大泣きをした事があっただろうか?

弟は負けた事や捕まるのが悲しいのではない。

家族の為に…… 家族の為に負けられない。

もっと店を大きくする焦りでやってしまった。

一番の哀しみは…… 兄から拒絶されてしまった事。

ゆっくりとバーガー兄はその場から離れようとする。


「 違うよ、お兄さんがそんな事思う訳ないだろ?」


バーガー兄が帰ろうとするとき、大きな声で話したのはハラケンでした。


「 たった二人でここまでやって来たんじゃないか。

汚点とかもう家族じゃないなんて…… 思う訳ないじゃないか!

どんなに間違えても兄弟じゃないか!! 」


ハラケンは最初はバカにされたから、復讐だけの為にずっとここまで来ました。

悪い事を沢山した弟に情を持つ必要がない。

今の自分の身体中のケガも全て弟のせいなのに。


「 正直お前らなんてキライだ…… 。

お店への嫌がらせや侮辱。

こんなデカいテレビの企画で、あんな良い店を潰そうとして来た。

でもあんたらのバーガー…… 正直凄い食べたい!!

あんなうまそうなバーガー作るのどんだけ大変だったか…… 。 」


ハラケンは自分でも何で、こんな意味不明な事を話しているのか分からない。

二人を見ていたら言わずにはいられなかった。

我慢していた弟は大声を出して泣いてしまう。


「 怖かったんだ…… 怖かったんだよ。

もし負けたら…… 負けたらもうお兄ちゃんとバーガー作れなくなるのが。

うぉーーんっおん…… おん! おんっ! 」


怖さ故にしてしまった過ち。

絶対許されない数々の過ち…… 。

警察が来るのも時間の問題。


( 俺達はたった二人だけの兄弟だ。

俺達二人は最強だ!!

ハンバーガーで世界一になるんだ。)


バーガー兄の脳裏に一瞬、昔の思い出が頭を過る。


「 大の男が泣くんじゃないっ!!

情けねぇーーな! 」


バーガー兄は立ち止まり大声で叫ぶ。

弟は泣くのを止めて、兄の声に耳を傾ける。


「 バカ野郎が…… 。

どんだけバカやろうが兄弟だ。

店は潰さないといけないが、また二人で何度でもやり直そう。

刑務所にバーガーの差し入れに行ってやる。

だからもう泣くな!! 」


バーガー兄は少し声を震わせながら言った。

弟はその言葉が何より嬉しかった。

これから捕まる恐怖が少し消えていました。

だって自分にはこんな頼りになる、お兄ちゃんが付いて居るのだから。


バーガー兄はゆっくりと、愛さんの元へ歩いて来ました。


「 この度は本当に…… 本当に申し訳ありませんでした!!

私の…… 俺の弟がこんな事をしてしまって。 」


土下座して凄い大きい声で謝りました。

何度も何度も頭をを地面にぶつけて…… 。


( 料理はな…… 誰かを笑顔にする為に作るんだ。

うんめぇ料理食ったらみんな幸せだろ? )


愛さんは父との幼少期の頃を思い出していました。

自分も今、幸せにする為に作っていました。

目の前に居る兄弟も、やり過ぎていたかも知れません。

それでもみんなを笑顔にしたかったのは、同じだったのだろう…… そう思いました。


「 もう…… もういいです。

それとあのお店、潰さないで下さい。 」


バーガー兄は直ぐに顔を上げて。


「 何を…… 何を言ってるんですか!?

だってこの戦いの約束だったじゃないですか?

それだけは破る訳にはいかない…… 。 」


バーガー兄は店を潰したい訳がありません。

それでもこの約束だけは破れない…… 。

散々ルールを破ってしまったのだから。


「 私達は最初からそのつもりでした。

貴方を簡単には許せません…… 。

でも働いてる従業員さんやあなた達の、ハンバーガーを大好きな人達を悲しませたくなくて。

料理でみんなを笑顔にするのが料理人です。

ならもっとみんなを笑顔にしましょ?

私も実はハンバーガー食べてみたくなって! 」


バーガー兄弟二人は涙が溢れてしまう。

自分達が潰そうとしたお店は、こんなにも大きかったのだと感じました。

潰したくない…… そんなワガママを許してくれるとは思ってもみませんでした。

その後何度も何度も頭を下げました。

兄弟揃って。


会場にまだ残っていたお客さんから、大きな拍手が起こる。


「 負けんなぁーーっ! 」

「 うちの子供もハンバーガー大好きなのよ! 」

「 またバンズ大盛りキャンペーンやってくれよ。」

「 何度でもやり直せ!! 」


観客から熱いエールが送られました。

バーガー兄弟はその声が胸突き刺さりました。

こんなにも愛されていたとは、思ってもいませんでした。

利益を考え忘れてしまっていました。

料理人が料理をするのはお金だけではない。

この感謝の声を聞きたい…… 。

美味しいと言われたい…… 。

その言葉はどんな大金を積んでも買えない、最高の宝物なのだと再確認しました。


「 暑いなぁ…… 本当暑いのは俺には合わないぜ。

早く帰って蕎麦食いたいな。 」


健はそう言い笑いながら髪をかき上げる。

健もケガだらけですが勝った事で一安心。

姫も大喜び!

光はハラケンの珍しい活躍に、また惚れ直してしまった気持ちに。


そして料理をした三人が健達の元へ。

健とハラケンは見つめ合う。


「 ハラケン…… 。 」


「 健…… 。 」


バシッ!!

強く二人はハイタッチをした。

二人はここまでどんなに頑張ったか。

偶然ここのみんなに助けられ、ひょんな事からこのお店を助ける事になり、無事に助ける事が出来ました。

ナルシシストとおバカの夏休みの戦いは、静かに幕を閉じました。


バーガー弟はパトカーで連行されて、蕎麦の田中さんは病院へ。

田中さんは事故の原因がバーガー弟のせいでしたが、被害届けは出しませんでした。

また復活してほしいと思ったからです。


司会者のグルコサミンは生放送でやらせがバレて、テレビ業界から追放されました。

悪い事をしてはいけないと言う事ですね。

弟はそんなに重い罪にはなりませんでしたが、当分は刑務所で過ごして反省する事になりました。

やった事はやった事なので…… 。


その日、ハラケン達は武蔵でのパーティーで大盛り上がり。

沢山の料理に飲み物に華やかに彩られている。

笑ったり、泣いたり、本当に色々ありました。


「 一体どうしてこうなったの?? 」


翼は状況を掴めずにいる。

姫が笑いながら手を取り。


「 良いの良いの!

さぁどんどん食べようっ! 」


翼は何が起こってるか分かりませんが、少しでも役に立てて良かったと思いました。


「 おっほっほーーいっ!

私も混ぜてくれんかね。

ほらっ! お土産もあるぞぉ!! 」


姫の親バカ二人も参戦!

大きなマグロを板前に持たせ現れる。

極上の本マグロ。

どんな料理が出るのか??


「 私達も混ぜてね。

恋バナでもしましょ!! 」


姫のお母さんは姫や光と愛さんのとこへ。

いつまでも乙女でした。


すると華ちゃんがハラケンの元へ。


「 お兄ちゃん大好き!!

本当に楽しいなぁ。 」


そう言い華ちゃんはハラケンにべったり。

ハラケンもデレデレしてしまう。


愛さん達は賞金で借金返済をして、これからは借金取りが来る事がなくなりました。

本当に良い夏休みになりました。

ここに居る誰にとっても…… 。

その日は夜中まで宴が続きました。


大型台風が次の日に来る事は、誰一人知りませんでした…… 。

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