第35話 麺神
「 さぁ〜〜 ! 続いての料理は、武蔵さんからの料理で御座います。
どんな料理が出てくるのかぁーーっ!? 」
司会者に呼ばれて料理を運んで行く。
その料理に全てを託して…… 。
「 お待たせしました。
クルミ蕎麦と天ぷらの盛り合わせになります。 」
愛さんが料理の紹介をしながら運びました。
天ぷらは揚げたてで美味しそう。
良い匂いをさせてみんなの食欲をそそらせる。
みんなの元へ料理が運ばれました。
姫や愛さん家族も緊張してきました。
「 じゃあ…… 頂こうかね。
いただきます…… ずるずるーーーっ!! 」
評論家のおじさんは勢い良く麺をすすって口へ。
もぐもぐ…… みんなもまずは麺から。
( 麺を選んだ瞬間にお前らは負けてるんだよ。
しかも司会者と俺らはどっぷりグルになってるから、料理を食べる順番も不公平に選んでる。
さらにはあのグルコサミンが無駄にトークを長引かせてくれたお蔭で、間違いなく麺は伸びている。
あのグルコサミンって奴も悪い奴だねぇ。 )
またもやバーガー弟の悪巧みにより、不公平にされていた事実。
お金の力でどんな事もしてしまう。
兄は当然知りません…… こう言うズルいやり方は、バーガー兄は好まないのを知っているからです。
料理評論家のおじさんは食べてから一瞬止まり、
そしてまた一口。
天ぷらも頬張る。
サクサク良い音と共に大きな海老を味わう。
「 …… 信じられるん…… 何だこの蕎麦は? 」
評論家のおじさんは何か様子がおかしい。
すると??
「 うまぁーーーーいっ!! 」
お客さんの一人が大きな声で叫ぶ。
周りからもちらほらと同じ声が。
「 うまい! 」
「 麺の歯ごたえが段違い。 」
「 クルミのつけ汁凄いんだけどーーっ! 」
さっきまでのアウェイだった空気がひっくり返る。
みんな美味しくて麺をすすりまくる。
天ぷらもつけ汁に浸して食べる。
「 天ぷらも絶品よ! 」
「 天丼でも食べたいぜい!! 」
「 つけ汁との相性抜群だ。 」
みんな絶賛している。
料理評論家やYouTuberも美味しそうに食べている。
「 おかしい…… ちょっと嘘評価はやめろ!
俺にも食わせろ!! 」
バーガー弟はお客さんから無理矢理箸を奪い、麺をつけ汁につけて食べる。
ずるずるーーーっ! 激しく下品に食べる。
「 何だってんだ!?
何だこの歯ごたえは?? 」
弟は腰を抜かしてしまう。
「 おい! 返せよ!
食べてる途中でしょうが!!
全くぅ…… ずるずるーっ。 」
バーガー弟はお客さんに箸を取りかえされ、また蕎麦を食べ始める。
バーガー弟はその味に絶望してしまう…… 。
「 おい! どうなってる。
あの麺はそんなにうまいのか!? 」
兄が駆け寄り聞くと絶望しながらも話始める。
「 あの麺…… 田中製麺だ。
あの歯ごたえに茶葉の香り…… 。
間違えようがない…… 麺の神と呼ばれた麺神。
田中製麺に間違いない!! 」
その通りでした。
この麺は田中製麺。
選び抜かれたお店にしか発注しない、偏屈でこだわりの塊の男。
あの蕎麦を使える選ばれしお店。
バーガー兄弟はそれを悟ってしまう。
「 つけ汁…… つけ汁はどうだったんだ!? 」
バーガー兄はいつもと違い、取り乱しながら弟の肩を揺する。
「 あれは…… クルミ蕎麦だ。
あの濃厚なつけ汁が蕎麦に絡み、最高のハーモニーを奏でている。
完全調和だ…… あんな店に…… あのつけ汁が作れるなんて。 」
弟は絶望して膝を何度も叩きました。
二人は今敵にしていたのは、とんでもない実力者なのだと分かったのでした。
健と光も客席から見ていました。
「 凄い…… あの蕎麦そんなに美味しいのかぁ。
ウチも試食でちょっと食べたけど、完成形はそれより遥かにうまいのが良く分かるわ。 」
光も感激していました。
いえいえ…… 姫も愛さんのお母さんも、華ちゃんだって踊ってしまうくらい喜んでいました。
「 すげぇ…… 本当にすげぇな。
あの蕎麦がこんなにみんなを魅了するとわ。
最高だぜ! …… って気になる事が…… 。 」
健はやはりあの事だけが気がかりに…… 。
「 何故伸びてないのか? って事かな? 」
急にみんなの後ろに現れたのは、頭に包帯を巻いた田中さんの姿でした。
みんなもびっくり!!
直ぐに愛さんのお母さんも声をかけました。
「 田中さん!!
さっき聞きましたが、事故にあわれたとか。
もう大丈夫なのですか?? 」
田中さんは頭の包帯を触りつつ。
「 全然大した事なくて、応急処置だけで済みましてね。
私もこの戦いの為にここ最近は、生きてきましたのでね…… だからどうしても自分の目で見たくて。」
観客の歓声や喜びの声は、自分の麺にたいしての評価でもあるので嬉しくてたまりません。
「 田中さん…… あの麺に秘密があるんですか? 」
健が直ぐに伸びていない事が気になり聞きました。
「 そうですね…… 私の麺は通常の麺より、コシが遥かに上だと思います。
だからと言って何分も放置してしまうと、さすがに伸びていってしまう。
ですがみんなを見てください。
凄い美味しそうに食べていますね。
どう言う事だか分かりますか? 」
みんなは麺だけではない…… ならどうして伸びていないのか?
分かりませんでした。
「 多分ですが武蔵さんは前から、冷やしの麺を料理していたのでしょう。
今回は冷やしのクルミ蕎麦にしたのは、武蔵さんが得意としていたからだと思います。
愛さんは麺が茹で上がると同時に、高速で氷たっぷりのザルで麺のヌメリを取り絞めているので、通常よりコシが良く、伸びにくくなっているのでしょう。
さすがは武蔵さんの娘さんです。 」
その通りでした。
夏にはキンキンに冷えた蕎麦は絶品!
人間は夏に冷えた料理を食べるのが大好き。
そこをちゃんと理解していたのです。
みんなも納得の答えでした。
「 分かったぜ…… あのデクの棒が自信満々だった理由が。 」
健は麺のトリックが分かり、ハラケンの余裕な表情の理由も分かりました。
「 あいつ…… 愛さんの練習してた余った麺、全部後で食べてたんだ。
だから時間が少し経っても大丈夫なの知ってやがったんだ。
さすがは食いしん坊野郎だ。 」
健は笑いました。
食いしん坊がここで一人だけ自信があった理由が分かり、笑うしかありませんでした。
ハラケンらしい。 そんな感じに。
「 本当に…… バカなんだから。 」
ステージの上に居るバカ顔しながら自分の事のように笑うハラケンを見て、光はハラケンの事が自慢出来るくらいに良い男に見えていました。
光はニヤケながら見ている。
「 クソ…… クソ…… まさかこんなに苦戦するなんて、想定の範囲外じゃないか。 」
バーガー弟が動揺している。
ハラケンが小声で相手に言いました。
「 あなた達がバカにしたお店は、こんなにも大きいと言うのが分かりましたね。
どちらが勝つのか見物ですね…… 。 」
あの日…… バーガーショップで客席で定食屋武蔵をバカにし、その日からずっと頑張って来ました。
遂に報われる為に全力で注いで来たのです。
ハラケンとバーガー弟はお互いにらみ合い、火花がバチバチに。
でもちょっと怖いので、直ぐに目をそらすハラケン。
そして全員が食べ終わり点数の合計が終わりました。
「 それでは武蔵さんの点数は!! 」
司会のグルコサミンから結果が!?
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