第32話 タイムリミット


試合開始まで残り…… 20分。

会場ではカメラを回す準備や、司会者の人達が舞台に上がったりして着実に試合開始に近づく。

バーガー兄弟は専用のキッチンに立ち、いつでも試合が出来る状態に。


対する定食屋武蔵は愛さん以外誰も居ません。

しかも蕎麦すらないありさまに…… 。

麺が無ければどう足掻いても勝てる気がしません。


( まだなの…… 二人共。

もう始まっちゃう…… 頑張って。 )


愛さんは願い続けるしかありません。

客席は満席で始まる前から大盛り上がり。

この田舎でこんなに盛り上がった事が、これまであっただろうか?

戦う選手はそろそろ会場へ上がらなければいけません。

愛さんも来るのを信じて先に行く事に。

一体どうなるんでしょうか?


その頃、二人はと言うと…… 。

ハラケンは健を背負いながら坂を歩いていました。

ハラケンはケンカの怪我や痣で、足腰痛めていて早く歩けません。

健を置いてはいけないので、ゆっくりと会場へ向かう。


「 はぁ…… はぁ。

クソぉ…… 後20分…… 。

まだ会場までは時間がかかる。

何の為の…… うっ! 筋肉だ。 」


冷や汗をかきながらゆっくり上って行く。

ハラケンは暑さで意識が朦朧もうろうとしながら、止まらずに歩き続けました。

後もう少し…… この角を曲がれば会場に。


バタンっ! 大きな音と共に倒れてしまう。

ここまで来ただけでもかなり凄い事。

ですが頑張っても結果が全て…… 。


「 誰か…… この蕎麦を…… 。

誰か…… 来てくっ…… れ…… 。 」


ゆっくりと意識が遠くなっていく…… 。

健も気絶して動きません。

絶対絶命のピンチに!


そして試合の時間に。

カメラは回り始めて司会者からの説明が始まる。


「 始まりましたーー っ!

グルメ対決! 勝つのはどっちだ!?

生放送でお送り致します。

司会のグルコサミン健吾です! 」


有名人が現れると会場は大盛り上がり!


「 きゃーーっ!! グルコサミン!! 」

「 健吾ぉーーっ!! 」

「 こっち向いてぇーーっ! 」


女性からの人気は抜群!

人気司会者なので女性は応援しまくりに。

謎の七三分けでガチガチに髪を固めている。

七三と言うよりも九一にしか見えません。


「 頑張ってぇーーっ! グルコサミン! 」


姫はミーハーなので喜びまくり。

でも直ぐに現実に戻されてしまう。


「 はっ! こんな事してる場合じゃない。

健とハラケンはまだ来ないの?

もう始まっちゃったよ…… 。 」


姫は焦って待っていました。

光は心配で探しに行く事に。


( もぉ…… 何処に行ったの…… 。 )


光は走るのが早いので凄いスピードで走って行きました。

入り口を出て行こうとした時…… 。


「 えっ? 何であんたここに?? 」


光は一体誰に会ったのでしょうか?


そして試合が遂に始まってしまう。

効果音や音楽が鳴り出して、テレビで見る世界が目の前で今、始まり出しました。


「 さぁ〜始まりました!

福島で行われる料理対決。

勝つのはどっちだ!?

司会を勤めさせて貰います、その名も…… 。

グ・ル・コ・サ・ミ・ン…… ? 」


すると会場からは大きな声で。


「 健吾ぉーーーっ!! 」


これがグルコサミン健吾の自己紹介のお約束。

会場は賑わいを見せる。

そして選手の紹介をされる。


「 まず最初に紹介するのはハンバーガーを売り始めて、圧倒的の売り上げを誇る。

バーガーショップ…… 出てこいやっ!! 」


会場に大量の煙が出て来て、バーガー兄弟が姿を現す。

エプロンやキッチンコートの色は派手派手の赤。

二人が舞台に上がろうとすると歓声が上がる。


「 バーガー兄弟!! 」

「 いやぁ〜〜 っ! 」

「 こっち向いてぇーーっ! 」


いつの間にか女性の人気まで手に入れている。

恐ろしい人気…… 。


「 そして…… 料理の侍。

どう迎え撃つ? 定食屋武蔵出てこいや!! 」


また大量の煙が上がる。

舞台までの道を歩くのは、愛さんただ一人。

会場からは拍手が起きる。

どう見ても分かってしまう、歓声の大きさは明らかに違う。

愛さんは迷わずに舞台に上がる。


「 どちらも気合い入ってますねぇ。

私も気合い入ってますよ。

食べる方に。 」


あははは!! 笑い声が鳴り響く。

何が面白いのか分かりませんが、会場はグルコサミン健吾に夢中。


「 それでは意気込みを聞かせて下さい。 」


バーガー兄弟にマイクが渡される。


「 今日はその様な企画に参加させて頂き、本当にありがとうございます。

私達二人が描くテキサスを、皆様にお届けさせて頂きます。 」


強気なコメント!

会場はバーガー兄のコメントで、期待度が最高潮に到達する。


次に愛さんにマイクが渡されました。

一人で不安になりながらゆっくりと口を開きました。


「 私達は亡くなった父の跡を継ぎ、頑張って働いて来ました。

まだまだ未熟者ですが、店の為にも負ける訳にはいきません。

どうぞ宜しくお願いします。 」


同様に拍手が起こる。

そして一時間の中で料理する事に。

何品作っても良いのです。

審査員達と会場の合計の投票により、試合の勝敗が決まる。


バーガー弟がマイクを渡して貰う。


「 皆様…… 話しにくいのですが、これは先にお話しなければいけません。

武蔵さんの参加人数は、確か…… 目の前に居る愛さんと、もう二人の参加者が居た筈。

さて…… 何処に居るのでしょうか?? 」


会場からは不安の声が起こる。

愛さんは直ぐに訳を話そうとする。


「 それは…… 少しハプニングがあり、今はまだここには居ません。

ですが必ず来ます。

なのでこのまま始めさせて下さい。 」


深く頭を下げる。

バーガー弟は大笑いをする。


「 ふっはっはっは!!

ふざけるんじゃないよ。

参加者は絶対参加しなければならない。

ルール違反はその時点で負けになる。

確かそう言う話ではなかったですか?? 」


確かにそう言うルールがありました。

何も言い返せません。


「 これは私達の不戦勝ですな?

ぽっひゃっひゃっひゃっ!! 」


下品な笑いをしました。

司会もどうすれば良いか慌ててしまう。


「 安心して下さい。

その分私達のバーガーで皆様のモヤモヤしてしまった気持ちを全て、天国へ連れて行ってあげましょう。

バーガー兄弟の名に懸けて…… 。 」


会場は不安から幸せの歓声で盛り上がる。

姫と愛さんママと華ちゃんは悔しそうにする。


「 どうして…… どうしてお兄ちゃん来ないの。」


華ちゃんは泣きそうになってしまいました。

愛さんママは仕方ない事で、何も言えなくなっていました。

姫は我慢出来ずに立ち上がろうとする。

それを父、龍平に手を引っ張られ止められる。


「 お父さん。 放して!!

私が助ける…… こんな負け方…… 絶対認めない。

あんなに頑張ったのに…… 。 」


姫は自分の財力や地位を使ってでも、このルールをねじ曲げようと立ち上がっていたのです。

どんなに間違えていても、こんな結果だけは納得いきませんでした。


「 姫子…… 。 それは駄目だ。

そんな事してしまったら、あのお店に泥を塗ってしまうんだ。

お金で勝ったと言われてしまうかもしれない。

これだけは私達にはどうしようもない。

おさえるんだ…… 姫子。 」


龍平がそう言うと、姫はおさえきれない悔しさで涙が溢れる。


「 悔し…… い。 悔しい…… 。 」


姫は頑張ったあのお店の事を思い、悔しくて涙が止まりません。


司会者は協議の結果をみんなに伝える。


「 残念ではありますが…… 協議の結果。

武蔵さんの不戦……っ。 」


悲しい結果を口にしようとする。

バーガー兄弟はニヤケてしまう。


( ふっひっひっひ。

来れる訳ない…… 。

苦労した甲斐があったぜ。 )


何と!? 今までの妨害は弟の仕業でした。

道路を滑るようにしてたり、ハラケン達の事を不良に教えて、復讐出来る機会を与える。

弟は負けたくなくて、もしもの可能性を潰しに来たのです。


( さぁ…… 言え。

我らの勝利宣言を…… 。 )


目を瞑りながら酔っていると。

うぉーーーーっ!! 何故か歓声が起きる。

弟が目を開けると、舞台に向かう二人の姿が。

ハラケンと健の姿でした。

割烹着に着替えて準備万端で舞台へ。

健は何故か深くバンダナを頭に巻き、顔が良く見えなくなっている。

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