第31話 泣き虫とナルシスト


健が防犯ブザーを見せると直ぐに奪い取られてしまい、地面に投げつけて踏み潰される。


ガシャッン!!

バラバラになり大きな音が鳴り止みました。

不良達は顔を見合わせて笑い始める。


「 あっはっはっは!!

本当にお前みたいなお坊ちゃんは、世の中の不条理が全く分からんみたいだな。

あんな音で助けに来ると思うか?

ここは人がほとんど来ないとこだぞ?

誰が助けに来るんだよ!! 」


そう言い鍛え抜かれたムキムキの腕から、また重いパンチが顔に入る。


ズドォンッ!!

健は勢い良く転がる。

不良達は一斉に笑いました。

またゆっくり健は立ち上がる。


「 何が不条理だよ…… 。

悪いヤツが偉そうに…… 言うな。

みんながみんなお前みいな奴らに、屈すると思うんじゃない。

お前らは復讐がしたいんじゃない…… 。

ただの気分の為に殴る、犯罪者なんだよ。 」


フラフラで立っているとまた、副リーダーの渾身のキックをお腹にもらう。

何とかガードが出来て、痛みを軽減できましたが凄い威力で草むらまでぶっ飛んでしまう。


「 犯罪者? あっはっは!

それは褒め言葉だぜ!

敵討ちをバカにした罰だ。

お前を袋叩きにしてやる。 」


倒れている健はまたゆっくりと立ち上がる。

そして不適な笑みを浮かべる。


「 相変わらず低能なヤツと頭が悪くなるぜ。

…… 誰も来ない? こんな場所からじゃ誰にも聞こえない?

まだまだ甘い…… なっ。 」


健は何度でも立ち上がる。

周りもイカれてしまったのか?

と思う人達も出てしまう。


「 俺は防犯ブザーを鳴らしたのは二つの理由がある。

一つは周りに助けを求めた事…… 。

二つめは…… 人並み外れた相棒が、今の音を聞いて助けに来る為だ!! 」


迷いのない信じ切った表情をし、相手に言い切った。

みんなは呆れて笑い始める。


「 ふざけんなよ!

あはははっはっは!

聞こえる訳ないだろうが。

わはははっは! 」


笑い声が小玉して反響し響いている。

健は負けじと笑う。


「 …… 待てぇえーーーーっ!! 」


もっさりとした男の野太い声が聞こえる。

みんなは一瞬にして笑いが止まる。


「 待てええーーっ!! 」


どんどんと声が大きくなる。

不良達が声の方を見ると、一人の大男が来ました。

汗だくで息を荒くして、ヘロヘロになりながら現れたのは…… お察しの通り、ハラケンでした。


「 なんだって!?

本当に…… 本当に聞こえたと言うのか?? 」


副リーダーが慌てると、勝ち誇って笑う健が言う。


「 俺の相棒はそこらの人間と一緒にするな。

なぁ。 相棒…… 。 」


ハラケンが健の元にたどり着きました。

周りは怯えている。

ハラケンの存在に? それは違う!

来る前に警察に通報しているに違いない…… 。

ここから直ぐに立ち去らなくては。

そんな迷いと恐怖に襲われて動揺してしまう。


「 あめぇーーな!!

マシュマロより甘いんだよ!

俺の相棒をなめてたからだな。

もう警察が来るぞ。

なぁ? 相棒。 」


笑いながらハラケンと肩を組む。

勝ち誇りながらハラケンの顔を見る。


「 健…… 健くん…… 。

ちょっと…… ちょっと良いかな? 」


小声で呟き始める。


「 何だよ!? …… 今は酔ってんだから! 」


健も小声で言うと、挙動不審にもじもじしながらハラケンはまた小声で話し始める。


「 助けようと必死に走って来てですね…… 。

つい…… ついやってしまいました。

通報する事忘れてしまっていました…… 。 」


出てしまいました…… 。

超超超…… うっかりさんな事を…… 。

健は呆れてゆっくり口が開いてしまう。


「 おっ…… お前さん…… 。

こんな勝ち誇って…… えっ??

って事は…… 。 」


そうなのです。

状況は変わらず、やられるヤツが追加されただけ。

地獄の再開!!


( でも待てよ…… 充分こいつの存在事態が、ブラフになる。

嘘を突き通すしかない!

それしかないんだ…… 。)


そうです。 最後の希望…… 。

健の話を信じて逃げる。

それを願うしかない!!


「 あの…… もしもしお二人さん。

もしかして…… 通報してなかったりします? 」


控えめに副リーダーが聞いてきました。

ハラケンは青ざめた顔になり、目が大きくなってしまう。

しまった…… 忘れていたのです。

ハラケンは嘘をつくのが下手な事を…… 。


「 やっぱりそう…… ぷっ!!

ぶっはっはっはっ!! 」


大勢で真実に気づき笑い始める。

笑い過ぎて涙を流す者もちらほら。


「 バレたならしょうがない…… 。

だが10何人くらいで俺ら二人をやれるとでも? 」


負けずに健が牽制する。


「 10?? ここに居んのは大体…… 。

35人くらいかね? 」


思った三倍多かった…… 。

世の中そんなもんですよね。


「 ま…… まぁいい。

一人13人くらいやれば良いんだろ?

簡単に倒せるかな? 」


「 そ…… そうだ!

俺達は最後まで諦めない!! 」


二人は最後まで諦めない。

必死に言いました。


「 蕎麦を届けるんだ…… 行くぞぉーー! 」

「 おおぉーーーーっ!! 」


二人は大群の中へ走って行きました。

一人でも多く…… 一人でも多く倒して、早く蕎麦を届けなければいけない。

その目は全く迷いのない、絶対に負けない男達の目になっていました。

不良達も負けじと迎え撃つ!!

群れの中に入り、姿が見えなくなる…… 。

鈍い音が沢山聞こえてくる。


そしてゆっくりと音が鳴りやむ…… 。

不良達がゆっくり下がると、二人はぐったりと倒れている。

倒した数…… 0。

やっぱり専門の人達にしかも、人数の差は埋められる筈もありませんでした。


「 すげぇ…… 何て弱さだ。

かなりボコったし、そろそろずらかるか。 」


そう言い帰ろうとすると、健が何か大事そうに持ってるのが分かる。

直ぐに無理矢理取ると、それは大事な蕎麦の麺でした。

必死に守っていたのです。


「 こいつら金も持ってないし、こんな蕎麦で良いから頂くか。

帰って蕎麦パーティーだ。 」


そう言いながら歩いて離れて行く。

ハラケンは何とか立ち上がる。


「 おい…… 健。 立て。

はぁはぁ。

頑張るんだ…… 盗られてしまう。

健…… 健!! 」


健は酷くやられてしまい、全く動かない。

ハラケンは頑丈なので何とか立ち上がりましたが、柔な男は気絶してしまっている。

もう出来る事は何もない…… 。

不良達は帰ろうとバイクの方へ向かう。


「 その蕎麦を返すんだ。 」


一人のおじさんが立っていました。

不良達はいつの間にか居たおじさんに、びっくりしてしまいます。


「 えっ?? 誰おっさん? 」


「 その子の父親だ…… 。 」


健の父。 九条秀作の姿でした。

見た目も相変わらずキッチリして、立っているだけでオーラが普通とは違う。


「 んで何の用だ!? 」


「 私の息子から取った物を返せ。

今すぐにだ。 」


秀作が鋭い眼光で睨み付ける。

一瞬その目にやられて動揺しましたが、人数の差は埋められません。

直ぐに開き直り、笑って話し始める。


「 ふざけんなよっ!

お前みたいなおっさん一人に負けるとでも?

あははははっは!! 」


大勢で笑っている。

秀作は一切負けずに立っている。


「 もういい…… 。 時間の無駄だ。 」


秀作がそう言うと副リーダーが近寄る。


「 子供のやった落とし前…… 責任とれーーっ! 」


そう言いパンチを振り下ろす。

全く動かない秀作…… 。


ハラケンは健の肩を持ち上げながら、不良達の所へ歩いて行く。

すると男達が倒れている…… 。

一人…… 二人。

いや30人以上が倒れている。

全員が気絶している。

ハラケンはびっくりして声も出ない。

何が起こったのか状況が分からない。


「 原田君かな? 」


倒れている男達の奥に一人立って居たのは、健の父でした。


「 えっ…… おじさん?

どうしてここに? 」


「 会場に行ったがバカ息子居ないから、ここら辺一体を探したらこのさまだ…… 。 」


お父さんは健が心配で探しに来たのでした。

姫が前日電話していた相手は、健の父だったのでした。


「 でも…… どうやってこの数を……? 」


そうです。 ハラケン達が不良から目を離したのは、約5分程度。

こんな短時間にやれるなんて出来る訳がない。


「 私には優秀なボディガードが沢山居る。

こんなバカ共片付けるの何て、容易い事なのだ。」


優秀な鍛え抜かれたボディガード達に、社会の厳しさを教えられてしまったのでした。


「 通報して時期に警察が来る。

息子を…… 健を宜しくお願いします。 」


そう言い秀作は帰ってしまう。

そこにじいやがやって来る。


「 旦那様の言う通りに。

この事は坊っちゃまには、ご内密にとの事。

後の処理は私にお任せ下さい。 」


ハラケンはほとんど状況が分からず歩き始める。

ハラケンは嬉しかった。

どんなに離れてケンカしていても、子供の事が大好きな優しいお父さんなんだなぁ。

っと分かったからです。

正直に言えないとこも親子そっくり。

ゆっくりと歩き始める。

残り…… 30分。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る