第29話 運命の料理対決


試合当日。

決戦の舞台は町内会でお祭りの屋台とかを出したりする場所を、この料理対決だけの為に街の人達やテレビ局がお金をかけて盛り上げようと準備している。

バーガー兄弟がテレビ局に今回の経緯を話し、局の人達も面白そうとワクワクしている。

田舎で料理頂上対決なんて盛り上がらない筈がないのです。

こちらの事情なんてお構い無しなのだ。


( 緊張するなぁ…… 。 俺はほとんど準備だけど。

にしてもまさか、失恋旅行が料理対決になるとはあの時の俺には想像もつかないよなぁ。 )


ハラケンは準備しつつ一人考え事を。

光と姫はケンカの切欠の日に居なかったので、料理の手伝いは出来ません。

なので観客席からの応援に。

二人も前日に出来るだけの手伝いをしました。

後は勝利を信じるのみ。


そして定食屋武蔵メンバーは、荷物をまとめて軽トラックに乗り会場へ。

コンロや鍋とかの調理器具はあちらで準備してあり、どうしても使いたい食材や器具だけを持って行く。

テレビが関わるとお金のかかり具合が段違い!

武蔵メンバーは小さな軽トラにパンパンになりながら、決戦の聖地へ向かう。


( にしても俺達は一緒に出て大丈夫なのか?

少しでも力になれるのか? )


ハラケンのお得意の悩みながらの、高速貧乏ゆすりが発動してしまう。

リズミカルにトントントントンっ!

自分を落ち着かせる為に自然とやってしまう。


パシッ!!

健が貧乏ゆすりを止める。


「 落ち着けよ。 どう転がっても最後だ。

全力を出せば問題ねーじゃん? 」


チャラいながらもハラケンを鼓舞する。

ハラケンも貧乏ゆすりしたい衝動が治まりました。

少しですが落ち着けたのでしょう。


「 ありがとう。 勝って蕎麦食べよう!

社食はバイトの最高の権限さ。 」


目を輝かせ言いました。

健はくすりと笑いつつ。


「 お前みたいな不細工と、こんなに仲良くなるとは思わなかった。

この旅の終着点を決めてやろうぜ!! 」


「 ぶさい…… おうよっ!

ここからは俺が主役さ!

最高のフィナーレと行きましょうぜ。 」


そう言い熱い握手をする。

これが親友…… そんな言葉よりも深く、熱い友情がここにありました。

軽トラで酔いつつも会場へ向かう。

ゆっくり…… ゆっくりと…… 。

現在の時間は7:00…… 。

試合開始まで残り、5時間。


その4時間半後…… 試合まで一時間前。

ハラケンと健は草むらで倒れている。

服はボロボロで口も出血して青アザだらけ。

ゆっくりと立ち上がろうとするハラケン。

足もヘロヘロで立ち上がるのがやっと。

健は完全に気絶している。


「 健…… 健。

目を覚ませ…… ってて。

身体中ボロボロだ…… 。

どうしてこんな事に…… 。 」


残酷な出来事からさかのぼる事、4時間前の事。

会場は試合までに簡易的なキッチンが用意され、少しずつ着実に完成へ近づく。

観客席には今か、今かとお客さんがぞろぞろと入って来ている。

こんなイベントは滅多にある事ではないので、町中が大盛り上がりなのです。


チーム武蔵も今の内に道具などを並べ、使いやすいようにスタンバイする。

ほとんどは用意してもらった野菜などを使いますが、麺だけは持参で準備。

つけ汁はここで作りますが、麺は田中さんの麺を使うので届くのを待ちます。

試合開始2時間前には、必ず着くように田中さんが車で運んで来る事になっていました。


「 緊張するなぁ…… 。

絶対負けないように頑張ろう! 」


ハラケンはみんなを励ましました。

どちらかと言えば自分を励ましているのでしょうか?


「 当然…… 余裕勝ちだ。 」


健は自信満々。


「 えぇ…… 絶対負けない。

お父さんの残したこの料理で! 」


愛さんも強く勝つ為に鼓舞しました。

お母さんは観客席で華ちゃんと見守る事に。


「 お姉ちゃん達勝てるぅ? 」


華ちゃんも少し不安そうになりました。

それもその筈…… 観客席はバーガー兄弟の話ばかり。

不安になるのも当然。


「 大丈夫よ…… お姉ちゃんは、私なんかよりも料理が大好きで誰よりも努力してる。

お父さんが見守ってるわ。

それに…… 二人の救世主も居るんだから。 」


そう言いハラケンと健を見ました。


( お願いします…… ハラケン。

健君。 私達のお店お願いします…… 。 )


とお母さんは願いました。

それを隣で見ていて、一緒に願う華ちゃん。


っと言う間に2時間が経ちました。

会場はほとんど完成。

テレビ局のカメラや証明。

司会者の人や局員の人達でいっぱいに。

客席も満席で立って見ている人も沢山。

凄い戦いの予感…… 。


すると観客席からは雄叫びが上がる。


うおぉーーーーっ!!

バーガー兄弟と従業員の到着。

会場入りだけでこの歓声…… さすがは王者。

ハラケン達も圧倒されてしまう。

直ぐにキッチンに食材のスタンバイ。

道具をセットする。

鮮やかな手さばきに歓声が上がる。


「 さぁ。 もうそろそろだ。

観客にエンターテイメントを御見せしよう。 」


バーガー兄が大きく手を広げる。

凄い酔っている。

ナルシストに感じるくらいの動作。

でも女性ファンも中々!

女性の歓声も度々上がっている。


「 大したイケメンでもないのにあれだよ。

それが補正ってやつだよな。 」


顔だけはイケメンの健が少し嫉妬してしまう。

ハラケンもモテない男として、怒りで目をメラメラと燃え上がらせている。


「 絶対に負けない!

負けるもんかぁーーーっ!! 」


負けられない理由が別に感じる空気が流れる。

それにしても…… 麺が届きません。

田中さんが言っていた予定の時間になりましたが、まだ来ていません。

しかも連絡がつかなくなっていました。

実は山奥なので電波が流れてないとこも、まだ少なからず存在するのです。

なので電話が繋がらないのかもしれません。

それでも心配になってきました。


「 どうしよう…… 。 」


愛さんが心配そうになってしまう。


「 大丈夫。 俺達が近くまで見てきます。

ここら辺はもう詳しいですからね。

行くぞ! 健。 」


そう言い二人はママチャリでここまで来る道のりを、少し探して見る事にしました。

二人乗りして自転車で坂を下って行く。


( 頼んだよ。 二人共…… 。 )


愛さんは二人に全てを託しました。


二人を乗せた自転車はぐんぐんスピードを上げて、坂を猛スピードで下りて行く。


「 おいおいハラケン。

大丈夫か? この前みたいに事故るなよ? 」


健は事故を思い出しながら、注意を呼び掛けました。


「 ぜーはぁー。 ぜーはぁーっ。

任せ…… ろっ。 はぁはぁ…… 。 」


ハラケンは凄い脚力でペダルを漕ぎました。

日々のバイトや無駄に有り余った体力が今、役にたとうとしていました。


「 ハラケン…… お前はやっぱすげぇよ。 」


小さく健は誉めました。

自分にないモノを沢山持っていたからです。


「 へぇっ?? 何か言った? 」


漕ぐので必死で風の音により、健の声は全く聞こえていませんでした。

健はくすりと笑い。


「 行け! ゴリラ野郎って言ったんだよ!! 」


大声で照れくさそうに言いました。

ハラケンも汗だくで急いで漕ぎました。

すると少し離れた場所で田中さんらしき車が、横転してしまっていました。

急カーブを曲がり切れなかったのでしょう。

田中さんの安否を気にして駆け寄る。


「 …… うっ…… 健くんに原田くん。

すまない。 急ぎ過ぎてしまった。

これを…… これを頼む…… 。 」


田中さんは頭から出血していましたが、そこまで大事にはいたらなそうでした。

直ぐに救急車を呼び、ここで少し待つことに。


「 田中さん。 直ぐに来ますからね。

一緒に待ちましょう。 」


ハラケンが手を握りながら言うと。


「 大した事じゃない!

早く…… 早く行ってくれ!!

私も手当てしてもらったら直ぐに行く。

私達の蕎麦は負けない事を証明してくれ。 」


そう言い少し眠ってしまう。

いびきをかいているので、問題はないと思いますが心配になる。


「 ハラケン…… お前は疲れてる。

俺が蕎麦を運ぶから、救急車が来るまで待ってろ。

俺はまだ体力がある。

任せておけよ! 」


そう言い自転車のかごに蕎麦を入れる。


「 健…… 頼むぞ?

俺も直ぐに向かうから。 」


心配そうに見つめる。

健はニッコリしながら。


「 俺達は絶対に勝つ! 」


そう言い二人は拳を合わせる。

そうして健は坂道を上りました。

残り1時間30分前…… 。

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