第28話 決戦前日


遂に田中の蕎麦を納品して貰えるようになり、バーガー兄弟に勝つための秘策も準備が出来ました。

そして味の微調整をしたり、通常の仕事をしたりとあっという間に前日になりました。

来て欲しいのか来ないで欲しかったのか…… 。

運命は料理勝負にかかっているのでした。


もう一つ気がかりな事が。

夏休みもそろそろ終わってしまう。

二人はここから帰らなければいけない。

ハラケンのお母さんはカンカン!

早く帰って宿題もやらなければいけない。


健のお父さんからは一度も連絡はありません。

どうせ勘当されているからどうでもいい。

と健は言っていました。

でも…… やっぱり仲直りしたいと思っていて、たまに上の空になっている。


そしていつものように仕事をする事に。

いつもと変わらずに、来てくれるお客さんの為に。

バーガー兄弟はあちらこちらに、チラシを貼って対決の日を宣伝。

沢山の観客を集めて宣伝して、勝った後はここら辺一体を自分達の料理に虜にさせる。

勝つためより勝った後ばかり考えてしまう程に、負ける気がしていませんでした。


「 兄貴…… 遂に…… 遂に明日。

俺達兄弟の店は田舎を越え、全国へいや…… 世界に名を轟かせるのだ。 」


弟は笑いながらナゲットを食べる。

兄貴はシェイクを飲みながらこちらの店を見ている。


「 何も気にする事はない。

ただの通過点に過ぎない…… 。

楽しみなのは確かだがな。 」


そう言い笑っていました。

バーガー兄弟も準備万端のようでした。


その頃、華ちゃんは公園で遊んでいました。

そこへハラケンが来ました。


「 お兄ちゃん!!

一緒に遊ぼう。 ねぇーーっ。 」


そう言い手を引っ張りました。

ハラケンは少し固く笑っていました。


「 華ちゃん…… 実は大事な話が…… 。 」


華ちゃんはボソボソ話したので聞こえません。


「 お兄ちゃんブランコ押して?? 」


大好きなハラケンに押して貰う。

ハラケンは笑い、押してあげました。

ハラケンはまた言いそびれてしまいました。

そろそろお別れしなければいけない事を…… 。

また違うときに言う事に。

相変わらず不器用な男なのでした。


帰り道。 二人はいつものように肩車で帰る。


「 お兄ちゃん…… 私ね。

毎日…… 毎日楽しいんだぁ。

お兄ちゃん。 ずっと居てね? 」


来た! このタイミングで打ち明けるしかない。

ハラケンは唾を飲み込み、勇気を振り絞り深呼吸して打ち明ける。

このタイミングを逃したらもうない!

子供でも分かるくらいのタイミング。


「 当たり前じゃないか!

ずっと居るからね。 」


その時ハラケンは心の中で自分は、どんだけビビり屋なのか?

と改めて感じるのでした。

自分へ落胆しつつ家に帰りました。


お店では愛さんは最後の微調整しつつ、美味しい料理をしようと試している。


「 愛。 ちょっと。 」


愛さんのお母さんが居間から呼んできました。

居間へ行き話をする事に。


「 どうしたの? お母さん。」


お母さんは少し思い詰めた表情で座っている。


「 愛。 …… ごめんね。

沢山無理ばかりさせてしまって。 」


お母さんはそう言い悲しげな表情になっていました。

愛さんは驚きながら直ぐに。


「 何言ってるの?

店を守る為なら当たり前じゃない!

全然気にしないでよ。 」


そう言うとお母さんは頭を横に振る。


「 そうかもしれないけど、あなたには大学の生活や将来があるんだから。

愛は愛のしたい事をすれば良いの。

お父さんだって同じように思ってるわ。 」


そう言いました。

お母さんは愛さんに自由な道をい来て欲しい。

重荷にだけはなりたくなかったのです。

お母さんなりの親心。


「 お母さん違うよ?

私は大学は卒業して仕事を探すのも考えたの。

でも分かったの…… 。

私は料理が好き…… 。 このお店が大好き。

絶対にここを守りたい。

私の家なんだもん!

卒業したらここ継ぐからね?

その為にも明日は絶対負けないからね? 」


そう言いお母さんの手を握り締める。

お母さんは肩の力が抜けてしまう。

愛さんは真面目で家族想いで、一度決めたら絶対に変えようとしません。

もう止めようとは思いませんでした。


「 そぉ…… 分かったわ。

もう止めたりしない。

明日一生懸命やって、悔いが残らないようにしなくちゃね。」


二人は少し話して仕事に戻りました。

明日の為に…… 。


姫と光も掃除をしながら染々と店内を見渡す。

ハラケン達と比べて過ごした時間は短かったですが、とても大好きなお店になっていました。

二人も絶対に負けて欲しくない…… 。

そう思いました。


「 セバス!! ちょっといい? 」


そう呼ぶと直ぐさま何処からともなく現れる。


「 どうなさいましたお嬢様。 」


「 電話かけたいとこあるから繋いで貰えます? 」


そう言いセバスにある人へ電話をかけて貰う。


「 もしもし。 おじ様?

私です姫子です。

少しお話出来ますか?? 」


そして少しお話をしました。

何処へかけているのでしょうか?


夜。 ご飯を食べ終えて静かな夜に。

熱い夏は夜になると涼しい風が心地良い。

自然に恵まれたこの場所は、夜は涼しく昼間は木々のお陰で、都会よりも涼しいのです。

虫達の鳴き声も響き合い、森のオーケストラに居る気分でした。

姫は疲れて寝てしまいリムジンに。

ハラケンと光は暗い中、街灯がある所を少し歩き話す事に。


「 ハラケン。 もうすぐ夏休みも終わりね。 」


「 そうだね…… 。 」


ハラケンは何かもごもごしている。


「 ハッキリしなさいよ!

いつも悩むともごもご、もごもごするんだから。

男ならシャキッとしなさい。 」


ハラケンは渇を入れられて、勢い良く光の手を取る。

光はドキッとしてしまい慌てる。


「 光。 帰ったらまた一緒に出掛けよ?

前みたいにすっぽかしたりしないからさ。 」


ハラケンがそう言うと光はニッコリして。


「 良いよ。 沢山食べれて美味しい所が良い! 」


ハラケンはその返事を聞き喜びました。

またいつものように出掛けられる。

その当たり前のようで、当たり前ではない。

今回でそれが目に沁みました。


「 任せておくれよ!

バイト代もあるから奢るくらい大丈夫!! 」


そう言い財布をじゃらじゃらさせる。


「 奢らなくて良いよ…… 割り勘にしよ?

そうすればその分多く出掛けられるんだからさ。 」


光もこの夏休みで少し成長しました。

もっと優しくなりたい。

ハラケンと同じで上手く気持ちを伝えられませんが、大好きな人ともっと一緒に居たい…… 。

そう思ったからこその答えでした。


「 うん!! うん! 嬉しいな。

練り物とか沢山食べれる市場なんてどう?

凄い新鮮で美味しいんだぁ。

行ってみない?? 」


「 もう少し頭つかいなさいよ!?

デートで練り物??

さすがにウチだからってそんなのは、わざわざ食べ放題なんてゴニョゴニョ…… 。 」


光はふざけたハラケンを叱りながら笑いました。

ハラケンも頭をかきながら笑う。

二人の恋は少し進展したようでした。

静かな森も今日は賑やかに、二人の笑い声がこだまする。


その頃、田舎の夜に一人の青年が歩いていた。

テクテクと地図を見ながら何処かへ歩く。


「 …… 完全に迷った。

ここは何処だ…… 。 」


その青年は何者!?

敵か味方なのか??

キャリーケースを引きずりながら歩くのでした。

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