第25話 小さくも大きなヤキモチ


その次の日からは、ハラケンは元気いっぱいで仕事に励みました。

健や愛さん。 おばさんも笑って喜んでいました。

ただ一人を除いて…… 。


( なんだよ、なんだよ。

あんなウキウキしちゃって。

本当勝手なんだから!! )


ハラケン大好き華ちゃんです。

ハラケンが元気なのは嬉しいのです。

ですが光と仲直りしてしまい、ハラケンを取られてしまった気持ちになってしまいました。


「 あ〜〜 幸せだなぁ〜〜 。 」


鼻歌を唄いながら仕事をこなしている。

その姿を華ちゃんは不満そうに見ていました。


華ちゃんは光の事も大好きです。

初めて好きになった人を取られてしまい、自分の中ではどうしようもなく、やるせない気持ちになってしまいました。


「 どうしたのっ? 」


姫が後ろから華ちゃんの肩にそっと手を置きました。


「 いいの! これは複雑な問題なの。 」


そう言い、外へ行ってしまいました。

姫は心配そうに見詰めていました。

その日、華ちゃんはお店の手伝いに来ませんでした。

ちょっとしたヤキモチなのでしょう。

一人寂しく公園のブランコに乗っていました、


( 誰にもこの気持ちは分かんないもん!

なんだ、なんだ。 あんなデカいだけのヤツなんて。

仲直りしたら光ちゃんしか見てくれない。

私なんて…… 。 )


華ちゃん一人ふて腐れていました。


「 やっと見つけたっ!

ここ凄い良い景色だね。

はぁはぁ。 階段登るのも大変だったわ。 」


そう言い笑いながら現れたのは、姫子でした。

姫は華ちゃんの隣のブランコに乗りました。


「 何かあったの?

ずっと元気なかったみたいだけど…… 。 」


姫が心配そうに言うと。


「 別に…… 子供だからたまにこうしたくなるの。

姫姉ちゃんには分かんないんだ。

絶対に…… 私の気持ちなんて。 」


そう言い滑り台の方へ行ってしまいました。

姫は直ぐに付いて行く。


「 そうかぁ。 女の子は悩み事多いんだよ。

大きくなっても変わんないだ。

だから華ちゃんの気持ち良く分かるよ。 」


滑り台の上から姫を覗き込み、話に食いついてきましま。


「 本当…… ? 」


「 本当だよ。 料理もっと作ってみたいとか、もっといろんなとこ行きたい。

とかいっぱい悩みはあるよ。

でも私は悩んだときは、直ぐに親友に相談するの。

女同士なら分かる事もあるからね。 」


姫はゆっくり滑り台を上がって行きました。

華ちゃんは落ち込みながら、ゆっくりと話してきました。


「 私ね…… ハラケンお兄ちゃんが大好き。

でも光お姉ちゃん来て仲直りしたら、私にかまってくれなくなったの…… 。

なんかね…… 。 なんかお兄ちゃん取られちゃった気持ちなんだぁ。

苦しくて…… 苦しくて。 」


一生懸命に姫に話しました。

姫はその健気さが可愛い! と思う反面、あの男の何がいいのか?

と思う気持ちが同時に押し寄せてきました。

でもその気持ちは傷つくので、言わない事に。


「 うん。 それはハラケンが悪い!

華ちゃんをほっとくなんて、けしからんですわ。

私からビシビシと言ってやる。 」


そう言いながら滑り台を滑りました。


「 お兄ちゃんは私の事どうでもいいって、思ってないかなぁ?

光姉ちゃん来たから、もう遊んでくれないかな? 」


「 何言ってるの。

ハラケンは色々とあれだけど、みんなに優しくてそんな冷たい人じゃないのだけは本当だよ。

私のかけがえのない親友の一人。 」


姫が華ちゃんに言い聞かせると、少し元気になりました。


「 ありがとうお姉ちゃん。

お姉ちゃんに話してスッキリしたよ。 」


そう言い笑顔になりました。

姫もその笑顔で嬉しくなっていました。


「 何でもお姉ちゃんに聞いて!

私ならなんでも力になりますとも。 」


姫は一人っ子…… 。

いつもメイドや執事。

大人に囲まれてばかりで寂しかったのです。

もしもお姉ちゃんや妹、兄妹が居たら全然違っていたのかな?

と思う事があります。

なので華ちゃんを見ていると、妹のように愛おしくなってしまうのです。


「 よぉーーしっ!

肩車するぞ。 さぁ乗って。 」


そう言いしゃがみこみました。


「 えーーっ。 お姉ちゃん大丈夫??

お兄ちゃんと違って力強そうに見えないよ? 」


心配そうに言うと姫は何故か自信満々に。

そして勢い良く持ち上げようとする。


「 お姉ちゃんだってやれば出来るんだから。

行くぞぉ! それぇ…… うわぁっ!! 」


直ぐにバランスを崩して倒れてしまう。


「 痛たたたっ…… あっ!

華ちゃん大丈夫!? 」


少し汚れてしまっていましたが、華ちゃんは全然大丈夫でした。


「 あはははっ! だから言ったじゃない。

あははは。 」


華ちゃんは思いっきり笑いました。

姫は苦笑いするしかありませんでした。

そこへ?


「 居た居た! ここに居たのかぁ。

愛さん達がまた試食頼みたいんだって。

早く帰ろう。 」


ハラケンが探しに来ました。


「 うん…… 。 」


華ちゃんは素直になれずにいました。


「 ん? どうしたの??

よぉーーしっ! なら肩車して帰るぞ!

それぇーーっ! 」


そう言いながら軽々と持ち上げてしまいました。

華ちゃんは満面の笑みが出ていました。


「 大型ジャンボ帰宅しまぁ〜〜 す! 」


そう言いながら帰って行く。

華ちゃんは後ろを振り返り、姫にシーっ!

とさっきの話を内緒だとジェスチャーしていました。

姫もお口にチャックする。

そして二人は笑いました。


( 本当…… ハラケンって子供には大人気なんだから。

でも、今日はなんだかハラケンが羨ましいな。

華ちゃんの気持ち少し分かる気がする。 )


そう思いながら姫も後を追いました。

華ちゃんと姫はまた仲良くなったのでした。


その頃…… 。 健と愛さんはクルミのつけ汁を作るのに、試行錯誤していました。


「 駄目だ…… 。 出来ない。

何個か候補があるけど、絶対にこれだとは言えないんだよなぁ。 」


愛さんは自信を失くしてしまっていました。


「 まあまあ。 まだまだこれから。 」


健はそう言い笑いました。


ガラガラーーッ!


「 いらっしゃいませ!

只今は営業終了となって…… えっ!? 」


健はお客さんに営業終了を伝えようとすると、そこに立って居たのは!?


「 久しぶりだな…… 健。 」


高級な服を着こなして颯爽に現れる。

手にはロレックス。 指輪もギラギラ。

サングラスに白でまとまった服装に、白いおしゃれな帽子。

靴は白でピカピカに光っている。

間違いなく分かる事は…… 目立ちたがりや!


「 健君…… お知り合い? 」


愛さんがそう言うと健の重い口がゆっくり開く。


「 親父です…… 。 」


「 えーーーーーっ!? 」


愛さんはびっくりして腰を抜かしてしまう。

何故なら健の父は、大企業の社長。

こんな所に来る筈ありませんでした。


「 初めまして。 申し遅れました。

私はこのバカの父。

九条秀作です。 どうぞ宜しく。 」


まだ若々しく40代。

その貫禄は姫の父に匹敵する。


「 何しに来たんだよ…… こんなとこまで来て。 」


健がそう言うと秀作が近寄って来ました。


「 連れ戻しにだよ。

時間の無駄な事やり過ぎだ。

さぁ。 帰るぞ! 」


なんと!? 健を連れ戻しに来たのです。

その場は凍りつく。

そして健の答えは??




「 ん? 帰んないよ? 」


田舎の定食屋で小さくも大きな、親子ゲンカが始まろうとしていました。

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