第22話 バーガー兄弟からの果たし状


ハラケンはその日帰っては来ませんでした。

山と一体化したいと思うくらいに、もうどうでも良くなっていました。


健は必死に蕎麦に合うつけだれを模索していると、姫がやって来ました。


「 健。 ちょっと良い?? 」


そう言い少し話すことになりました。

姫はどうしても健から聞きたい事が。

椅子に座ってゆっくり口を開く。


「 ハラケンってどうして約束すっぽかしたの?

何の理由もなくそんな事する人じゃないよね?

ならどうしてしたのか気になって…… 。 」


健は険しく渋い顔になりながら困りました。

男の友情で黙ってる約束になっていたので、口が裂けても絶対に話さない!

男に二言はありませんでした。


「 そんなバカ面してもダメだよ!

はい。 これあげる。 」


そう言い健の手に置いたのは、健が勘当される前に毎日食べていた愛する高級チョコレート。

ル・ショコラ。

板チョコなのに一枚8000円もするのです。


「 うわっほい!!

ぱくぱく…… バリバリ!!

たまんない食感に程よく甘い高級な後味。

…… はっ!?? 」


つい夢中になり食べてしまいましたが、このチョコがワイロのような物だとやっと分かりました。


「 それで理由はなんなの?? 」


姫が追い討ちをかけました。

健の口は硬い…… 。

今回だけは負ける訳には…… 。


「 セバス!! 」


姫がセバスを呼ぶと箱事チョコが運ばれて来ました。


「 ハラケンの野郎は約束の前の日に、見てしまったらしいんだ。

とんでもねぇー どぎつい光景を…… 。 」


そう言いハラケンから聞いた経緯を話しました。

偶然光を見つけて隣には、長身のイケメンと仲良さそうに歩いていた事を。

姫は話を聞くなりポカンとしてしまう。

光は浮気するとは到底思えなかったからです。


「 そうなの…… ありがとう。

光に遠回しに聞いて調べてみる。 」


そう言い、姫は帰りました。

健は男の友情よりチョコを取ってしまい、後悔しつつも口の中は幸せいっぱい!

久しぶりの高級チョコを楽しみました。


次の日…… 。

ハラケンは昨日から帰って来ません。

失恋の傷が痛くて、少し一人になりたかったのでした。

大きな木の上で泣きつかれて眠っていました。


「 お兄ちゃん。 お兄ーちゃん! 」


大きな声で呼ぶ声が…… 。


( んんっ…… 。 誰だこんな朝早くから。 )


そう思い下を見ると、そこには華ちゃんがハラケンを探しに来ていました。

みんなは直ぐに戻ると思い、探しに来ませんでしたが華ちゃんは連れ戻しに来ました。


( 華ちゃん…… 今はそっとしておいてくれ。

この木の上に居れば見つからない。

ごめんね…… 。 )


そう思いながら華ちゃんの呼び掛けを無視する事に。

可哀想に…… 華ちゃんは何度も呼び掛けました。

少し疲れてしまい、座り込みました。


「 疲れちゃった。 これ食べようっと! 」


ハラケンが下を覗くと、華ちゃんは農家から貰った美味しい甘い、甘い桃を取り出しました。

見るからに甘そうな桃。

大きくかぶりつく。


「 あんむっ! もぐもぐもぐ。 」


噛った瞬間に周りに甘い匂いが広がりました。


ぐぅ〜〜〜〜っ!!!!


大きな音が鳴り響きました。

華ちゃんは直ぐに上を見ると、そこにはお腹を空かせたハラケンの姿が。


「 あっ! 腹ペコお兄ちゃんみっけ!! 」


「 あわっ!! 」


ハラケンのお腹は正直者。

仕方なく下に降りました。


「 …… おはよう。 」


ハラケンは気まずそうにそう言うと。


「 おはよう。 これお兄ちゃんの分。

一緒に食べよっ! 」


そう言いニッコリ笑いました。

ハラケンは頭をコクリとうなづいてから桃を食べる。


「 美味しい。 美味しい…… バクバク! 」


下品にこぼしながら食べていると、華ちゃんは笑いながらハンカチで口の周りを拭いてくれた。

ハラケンは少し元気が出て、二人で手を繋ぎながら帰りました。


昼の営業時間。

また今日も人があまり来ません。

いつもの常連さんのご老人や、近くに住んでるおばさま達ぐらい。

おかしい…… また全然来ません。

何かが起きていました。


ガラガラーーッ!

扉の開く音が。

そこに立って居たのはバーガー兄弟!!

一体どうなっているのでしょう?


「 おい! お客様だぞ。

ご挨拶はどうした!? 」


声を荒げる弟。


「 待て待て。 そんなに荒げるな。

今日はケンカしに来た訳じゃない。

立派にお客として来たんだから。 」


二人は食事に来たのです。

全員でイライラしていましたが、お客はお客。


「 い、いらっしゃいませ。

何になさいますか? 」


ハラケンが注文を取りに行きました。


「 おいおいおいおい! ここはパンがねぇのか?

アメリカならパンがない店なんか、一日も持たずに潰れちまうよ。 」


相変わらずの弟のアメリカ被れが炸裂!

そもそも定食屋にパンを求める方が悪い。

文句良いながらさば味噌定食を頼みました。

不穏な空気が店内に流れる。


「 美味しいですね。この料理。 」


バーガー兄貴が静かに語りました。

全部綺麗にたいらげました。


「 にしてもゴリラくん。

こんなに美味しいのに、どうしてこんなにもガラガラなのか分かるかな? 」


ハラケンにいきなり尋ねました。

ハラケンはバカにされてしまい、怒ってしまう。


「 何だと!? もう一回…… 。 」


勢い良く走って兄貴の所へ行くと、難いの良い弟が立ち塞がる。

まさに巨大な壁。

その圧に負けて殴るのを保留する。


「 ゴリラくん。 この世は美味いだけでは売れない。

戦略的投資やマーケティング。

広告やCM。 あらゆる所からお客様を呼び込む為に、日々精進するんだよ。

ガキ共がどう足掻こうが無駄なんだよ。 」


健が近よって反論する。


「 何でもそんな戦略だけで、全てが決まる訳ないだろ? 」


「 バカ面くん。 じゃあ何故今ここにお客が全然居ないのかな? 」


健は言葉を失う。


「 今我々は大ビッグキャンペーンにより、アニメとコラボしたり、歌手のブロマイドがオマケに付くのさ。

味もだけどこんな事君達に出来るかな?

この世界。 勝った者が偉いんだ!

強いんだよ!! 」


立ち上がり声を荒げる。

全員言葉を失う。


「 失礼…… 大人げなかった。

ただし。 一つ救いをやろうではないか。 」


救い? 一体何を言っているのか?


「 今度ここら辺はテレビの企画で取り上げられる。

そのテレビ局の人に言われたんだ。

この店とバーガー店…… どっちが美味いか勝負したら面白くないか? ってね。 」


何と! いきなりの申し出。


「 それを受ける意味が私達にあるんですか? 」


愛さんが聞くと弟が笑いながら。


「 勝った店は間違いなく売れる。

しかも賞金が出るだ。 500万。

お前さんらはやる以外に生きられないんだよ!! 」


弟がそう言うと納得するしかありません。

どうする…… 。


「 分かりました。 その申し出お受け致します。 」


お母さんがその勝負に乗ることに。


「 そう来なくてはね。

それでは失礼するよ。

ちなみに食べて分かった事がある。

間違いなく俺達が勝つ!! では一週間後に。 」


そう言い帰りました。

決戦は一週間後に…… 。


「 二度と来るんじゃねーーっ! 」


ハラケンは聞こえなくなってから、デカい声で言い返しました。

相変わらずのビビり。

そして塩を撒きました。


「 ハラケン…… 。 」


「 愛さん良いんですよ。

これぐらいしないと! 」


ハラケンは少し気が晴れました。


「 今、撒いてたのは砂糖よ? 」


………… 塩と砂糖を間違えた。

もういきなり嫌な予感が漂う。


バーガー兄弟は笑いながら歩いて帰っていると。

向かい側から姫と光が歩いて来ました。


「 あっ…… 。 」


兄貴は立ち止まりました。

姫はキョトンとしながら会釈だけして、店に向かいました。

そして兄貴は動けなくなっていました。


「 兄貴…… ? どうしました? 」


「 白鳥財閥のご令嬢だ…… 。 」


震えながら言いました。

姫の事を知っていたのでした。


「 何故こんなド田舎に?? 」


バーガー兄弟は少し嫌な予感がしました。

これから起こる戦いに、小さな不安が出来てしまうのでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る