第17話 そびえ立つ巨大な壁
姫達の前に現れたのは、少しだけ怪我で入院していたセバスでした。
「 あんた誰だい?
この子達の家族なんかい? 」
女将さんがあたふたしていると、直ぐにセバスが丁重に返答をします。
「 申し遅れました。
私はこちらのお嬢様の執事をさせて頂いています、セバスチャンと申します。
以後お見知りおきを。 」
そう言い名刺を渡す。
「 セバスだがロケバスだか知らんが、ここの支払いがまだなのよ。
どうすんだい? 」
優しかった女将さんは、お金が払えないと言った瞬間に変貌してしまいました。
仕方がない事ですが悲しい瞬間でした。
「 ほうほうほう…… 。
お嬢様。 だからあれ程現金をもっと持ち歩きなさい。
と申し上げたじゃないですか。
これで足りるかと思うので、精算を宜しくお願い致します。
姫様がご迷惑お掛けして申し訳御座いません。 」
そう言いながらえげつないくらいの分厚い札束を渡し、精算をしてもらう事に。
「 ななな…… なんだってばぁ!?
この大金は!! お嬢様??
ご令嬢か何かなんかい!?
それは…… 失礼致しました。 」
水戸黄門の登場のように、女将さんは深々と頭を下げました。
「 謝らないで下さい女将さん。
私達が現金あまり持ってないのが、常識知らずだったのですから。 」
姫がそう言いながら謝りました。
「 そうですかい?
じゃあちょっとお釣持ってくらからね。
待ってて下さいな。 」
そう言い下へ降りて行きました。
「 お嬢様。 遅れて申し訳…… 。 」
ガバッ!!
姫はセバスの無事な姿に喜び抱きしめました。
「 セバスっ! 良かった無事で。 」
姫のセバスへの愛情が伝わりセバスも泣きそうになりました。
「 申し訳御座いません。
あのような衰退さらす事はないように致します。」
セバスは本当に姫の執事をやっていて幸せに感じました。
「 セバス…… さん。
あのぉ…… ご…… 。 」
光は自分の思いつきで二人をここまで連れてきてしまい、あんなに危ない思いをさせてケガまでさせてしまいました。
全ては自分の責任に感じ、謝ろうとすると。
「 光様。 謝るのは私の方です。
私はあなた達を安全に旅できるように、任された責任が御座います。
なのでこんな事は想定の範囲内なのです。
気にする事は微塵も御座いません。 」
光はずっと考えて気にしていました。
そう言って貰えて少しだけ気が楽になっていると。
「 そんな事より、光様!
怖くありませんでしたか?
ケガはありませんでしたか?
私はずっと、ずっとそれが気掛かりで。 」
光はセバスの自分の事より、自分なんかをずっと気にしていてくれた事に心が痛くなっていました。
そして我慢してた気持ちが溢れ出る。
「 セバスさん! ごめんなさい。
ごめんなさい…… バカな思いつきでこんなケガさせちゃって。
ウチは…… 全然っ。 ぐすっ!
なんにもケガなんて…… して。
ないし、ひっぐ!! もう気にしてもいないです。」
光は泣きながらセバスに何度も、何度も謝り続けました。
ずっと自分のせいだと思い込んでいたのです。
「 私は全くケガしてません!
ただのかすり傷です。
良かった…… 本当に良かった。
謝る事ありません。 」
セバスは光のその気持ちだけで、守って本当に良かったと思いました。
セバスは隣の部屋を借り、今日からは隣で寝泊まりする事になりました。
布団をしいて二人は部屋を暗くして寝ようとしていました。
「 光…… 起きてる? 」
姫が話し掛けると当然まだ起きていました。
「 私ね。 本当に最近毎日が楽しいの!
光とこんなに毎日大冒険して、美味しいご飯食べて温泉入って。
だから一緒に来て良かったよ? 」
光は姫のそんな優しい気持ちに、いつも一緒に居て良かったなぁと再確認するのでした。
「 ありがとう。
本当はもっと観光もしたいのにね。
あの寸胴のせいで…… 。 」
イライラしつつも情報のない今を、心配で心配で仕方なくなってしまうのでした。
同じ夜…… 。
ハラケンはベランダから星空を見ていました。
( 拝見。 光様。
お元気にしていますでしょうか?
光にフラれてからもう何日が過ぎたでしょうか?
どんなに楽しい毎日でも、キミを思い出さない日はありません。
どうか…… どうか…… 。
幸せになって下さい…… 。 )
静かに一人寂しく泣いていました。
その時同じ夜空を心配そうに見つめる光の姿が。
どんなに離れていても同じ夜空を見ているのでした。
次の日…… 。
いつものように昼の営業に向け下準備をしていました。
ガラガラーーッ!!
強く扉を開ける音が。
「 うぃっ! 邪魔するぜぇい。 」
いかついサングラスをかけた男二人が中へ入って来ました。
入るなり椅子に座り、偉そうにテーブルに足を起きました。
健とハラケンが男なので対応しようとすると、置くから奥さんが慌てて出て来ました。
「 那須さん…… いつも支払い遅くて申し訳御座いません。 」
那須さん…… ? ここのメンバーは誰一人知らない名前でした。
さらに少し重たい雰囲気の内容。
「 おいっ! 先月と先々月の支払いはまだかよ?
何度も言ってんだろうよ?
もうここ畳んだ方が早いって。 」
「 本当にすみません…… 。
主人の大切にしていたお店なんです。
ここだけは…… 勘弁して下さい。 」
おばさんが深々と頭を下げる。
「 お母さん…… ウチに借金あったの? 」
愛さんは不安そうに尋ねました。
「 ここのお店を開く為に少しね…… 。
お父さんが居たときは少しずつだけど返せてたのに、お父さん居なくなっちゃったから。
どうにか代わりに頑張ったんだけど…… 。 」
悲しそうにおばさんは話しました。
愛さんはそんな事とは全く知りませんでした。
「 まぁー、色々あるみたいだけど返済貯まってるんだから、約束通りここは売却する事になるな。
だからさっさと立ち退きしてもらおうか。 」
突然起こる悲劇…… 。
言葉を失う親子。
( ヤババババ…… 。 一体どうなってんだよ。
色々大変だったみたいだけど、こんなにまで追い込まれていたなんて。 )
ハラケンはこの状況に困惑してしまう。
助けたかったけど、ただの高校生に一体何が出来たのだろう?
ただ無駄な希望を見せてしまっただけなのだろうか?
ハラケンは罪悪感に押し潰されそうになってしまう。
「 まずな。 こんなボロボロな店は流行るはずねぇーーだろうがっ!! 」
椅子を思い切り蹴り飛ばす。
ドォーーンッ!
椅子は壁に当たり音を立てて倒れる。
「 やめてぇーーっ! 」
華ちゃんが走って行き、借金取りにしがみつく。
「 華!! 何やってるの!?
やめなさい! 」
愛さんは必死に止めようとする。
そんな言葉を振り切り華ちゃんは必死に。
「 大切なお店なんだよ?
みんなで毎日掃除したりしてるの。
古いかも知れないけど、壊したりしないで!
私たちには大切な場所なんだから!! 」
必死に抗う姿は虚しくなるだけでした。
「 うるせぇな。 このガキが!! 」
借金取りは華ちゃんを振り払い、倒れた所に蹴りを入れようとする。
「 華ーーっ!! 」
おばさんの悲しい声が店を
愛さんは走って庇おうとしても遅く…… 。
華ちゃんは怖く、目をつぶる。
( 俺は何しに来たんだろう…… 。
俺は何しているんだろうか…… 。 )
ハラケンはふと考えていました。
元々裕福ではありませんでしたが、ハラケンは何不自由なくすくすくと育ちました。
両親もどっちも元気。
それが当たり前だと思っていました。
失恋して偶然助けてもらって、恩返しに手伝っていました。
ここの生活は大変な事も沢山。
父親が居ないだけで、こんなにも大変な暮らしになってしまう…… 。
それでも負けずに生きている家族を見て、力になりたい…… 。
そう思うようになっていました。
( 無駄なお節介したせいで、こんな見なくても良いものまで見てしまった。
本当に無駄なお節介だった…… 。 )
「 あんたの唯一の取り柄は、頭より先に体が動く。
失敗ばっかりしてるけど、そう簡単に人の為に動ける人は居ないんだからね?
そんなハラケンが…… 嫌いじゃないよ? 」
ハラケンの頭の中では光の声を思い出してしていたした。
ズドォーーンッ!!
借金取りの蹴りは鈍い音を立てて鳴り響く。
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