第16話 おじいさん


ハラケンが寝てから一時間。

おじいさんの向かい側に座り、気まずい空気の中時間が過ぎるのを待っていました。


「 おじいさん…… って独身?? 」


健が耐えきれずに話題を振る。


「 妻に先立たれて一人じゃ。 」


( おえ〜 …… 。 墓穴掘った。 )


健は更に気まずくなりました。


「 お前ら。 ここら辺で見ない顔だな。 」


「 あ…… 色々事情がありまして。

話すと長くなりますので。 」


おじいさんはお茶をすすり。


「 時間ならある。 」


( わぁーー おっ! 面倒くさい。

ハラケン。 お前が相手しろよ。 )


健は元々老人があまり好きではありませんでした。

それには色々事情があります。

老人は話が長くて、自慢話や耳が遠かったりと話してて疲れてしまう。

それと何より…… 女性以外に全く興味無かったのです。


「 そんじゃあ、助けてもらったんで話しますよ。

ちょっと前にこのボンクラが…… 。 」


今までの経緯を全て話しました。

おじいさんは話を聞いている間、しっかりうなづいて聞いていました。


「 そんで俺が地蔵桜を見せれば元気になると思って、そのぉ…… あれでして。 」


健は話すので夢中になっていて気付きませんでしたが、おじいさんは笑っているように見えました。


( おろ?? このじいさん…… 。

意外に良いじいさんなのでは? )


健はそう思い始めました。

そして突然立ち上がりました。


ドンッ!!


「 ひぃっ! 何よいきなり!? 」


健がビクついていると、立ち上がり近くの台所へ向かいました。


「 これ…… 近くの農家の人から届けて貰ってる、手作りのリンゴジュース。

好きなだけ飲みな。 」


瓶に入った手作りリンゴジュース。

果汁は当然100%。


「 じいさん…… 俺は結構食通だぜ?

手作りなんかで満足出来るかな?? 」


嬉しかったのに照れ隠ししながら、瓶を開けてコップに注ぐ。

市販の安い飲み物とは違い、少しドロドロ感があり見た目は少し違いました。

光に照らしたジュースは光輝き、天使の注いだ贈り物にも感じるくらいでした。


「 さっさと飲め! バカちんが。 」


そう言いおじいさんは店内の掃除をする。

遠慮せずにジュースを飲む。


ごく…… ごく…… 。


「 なんじゃこりゃあぁっ!!

段チ《だんちがい》の飲み物じゃねぇーか。

ごくごく…… ぷはぁーー ! 」


健が美味しそうに飲んでいると、遠くから誇らしげに微笑みながら見ていました。

おじいさんは口は悪くても、とっても優しかったのです。


「 ん…… ん!? 」


ムクッ!! 凄い勢いで立ち上がるハラケン。

少し眠ったら痛みも和らぎ楽になっていました。


「 よっ! 良く寝たか? 」


「 ん…… そうだ。

凄い高い所から落ちたんだった。

体中痛いけど問題ない。

なんだ? そのジュースは?? 」


ハラケンが起きるとおじいさんは、直ぐにコップを持って来てくれました。


「 ほら! デカいのも飲め! 」


態度は悪く口も悪い。


「 あ…… ありがとうございます。

おい。 誰だよあのおじいさんは??

すげぇ怖いし、ここは何処なんだよ? 」


ハラケンはビビりなので怯えていました。


「 恩人さんだわ。 態度最低だけどな。

でも…… 俺は嫌いじゃない。 」


健は気付いていました。

急に来たのに色々と良くしてくれて、蓋も開けてないジュースを出してくれて、ゆっくり休ませてくれました。

本当は優しいのに口に出せない、不器用なおじいさんんなんだと分かったのです。


二人はジュースを飲みながらせんべいを食べて、お礼に店内を掃除をしました。

余計な事するな! と言いつつもおじいさんには、少し広い店内を三人で掃除したらあっという間でした。


そして夕方…… 。

田舎は夜は街灯があっても暗く、野良犬や道も危ないので帰る事に。


「 じいさん。 また来るぞ。

そんときは美味いもん持ってくっから。 」


「 おじいさんありがとうございます!

ジュースもこんなにもらっちゃって。 」


二人は風呂敷何本もジュースを包んでもらい、おみやげまで貰いました。

椅子に座りながら背中を向けてこっちを向いてはくれません。


「 ただのバイト代だ。

さっさと帰れ! 不良少年が。 」


二人はもう察していました。

本心では寂しい事を。


「 はいよ。 また来る。 」


そう言い二人は壊れた自転車を押しながら、来た坂道を登って行きました。


「 はぁーー 。 帰ったか。

ばあさん。 バカっぽかったけど…… 良い子だったな。

また来ると良いな。 」


少し寂しそうに仏壇に話をかけるおじいさんでした。


二人は少し暗くなりながら坂道を歩いている。


「 なあ健? 俺達…… 夏休みエンジョイしてるな。

毎日、色々あるけど凄い満喫してる。 」


ハラケンは染々と感じていました。


「 そうだなぁ…… こうも暗い道歩いてっと、色々考えちまうよな。

こんな生活も悪くないしな。 」


二人は残り少ない夏休み。

有意義に過ごせるようにしようと思いました。


「 ただいまぁ! 」


二人は帰ると温かいご飯を準備して待っていてくれました。


「 ハラケン遅かったね。

大丈夫だったの?? 」


直ぐに華ちゃんが駆け寄って来ました。


「 大丈夫だったよ。

ほら、おみやげだよ。

後で冷やしてみんなで飲もう。 」


家に入りみんなでご飯を食べました。

健は食べながら思いました。

自分に足りなかった物…… 。

何故勘当されたままなのか?

甘えているばかりで何も出来ていませんでした。

ここに来てようやく分かったのです。


「 …… 下民かぁ。 」


「 えっ? 何か言った?? 」


ふと昔の自分の愚かな言葉を思い出しました。

愛さんが口から漏れた言葉を聞くと。


「 この豚汁美味いなぁって!

華ちゃん。 俺にもサバの味噌煮。

俺にももう少しくれよ。 」


「 ダーメっ! 私のだもん。 」


健は口が裂けてもかつての最低の振る舞いを、ここの家族には知られたくないと思いました。


その頃ハンバーガー兄弟は?


「 アニキ! 出来やしたぜ。

俺達の新たなバーガーが。 」


そこにあったのは三種類のハンバーガー。


「 ん? これは一体なんだ? 」


「 はい。 まずは緑色のバーガー。

これは女性をターゲットにした、ほうれん草生地のカロリー半分のバーガー。

子供向けに作った、ありそうで無かったカレーバーガー。

生地にもカレーパウダーを混ぜてあるから、何処から食べてもカレーバーガー。

そして最後に作ったのは…… 。 」


その男性に向けたバーガーを見せると、バーガーアニキも笑ってしまう。


「 お前も成長したな…… 。

この郡山がアメリカになるのは時間の問題だ。

あの終わってる店にとどめをさすんだ。 」


「 イッヒッヒ。 ういっす。 」


何処からどう見ても悪者の会話。

どうあがいてもアメリカはなりません!

ですが…… とんでもない秘策を秘めている模様。

どうなるのでしょうか?


姫と光は旅館で一休み。


「 はぁ〜 。 全然見つからないわ。

あんなデカいの何処に行ったんだか…… 。」


光はそう言いため息を吐く。


「 全然手掛かり掴めないけど、あと少しだよ。

頑張ろうよ! 」


励ましていると。


ザーーッ!

ふすまが急に開きました。


「 お客さん達、くつろいでる所悪いけどそろそろ一度お勘定を。 」


女将さんの言葉で忘れていた事に気付きました。

慌てて合計金額を聞くと。


「 四日間で五万円になります。 」


「 ごっ! 5万円!? 一人2万5千円!! 」


二人は顔をくっつけて声が出る。


「 いえいえ…… 一人五万円で御座います。 」


旅館の相場は分かりませんが、二人は旅館に泊まる事がどれくらい高いか?

全然知らずに三食食べていました。

しかもここの部屋は継続で使っていました。

当然なのかもしれませんが、金額は羽上がってしまいました。


「 じゃ…… じゃあクレジットでも良いですか? 」


姫子はブラッククレジットカードを出そうとする。


「 お客さん…… ここは田舎だよ?

クレジットなんて出来るわけないでしょ。

もしかして払えないとか?? 」


優しかった女将さんの顔は鬼のように変貌する。

二人は怖がって震えてしまう。


ガラガラーーッ!!

玄関の扉が開き誰かが入って来る。


「 ん? 誰だい? こんな夜に。 」


階段を上がって来る足尾とが。

そして部屋の扉が開く。


「 お嬢様ぁーーっ! ご無事で。 」


「 セバス! もう大丈夫なの?? 」


そこに現れたのは、みんな大好き執事のセバスチャンでした。

頭には包帯が巻かれている。


「 セバス…… ちゃん?? 」


女将さんも急な事に驚いてしまう。

セバスの合流で、また賑やかになりそうですね。

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