第15話 すれ違う二人
「 ハラケーーンっ! 」
健は叫びながらハラケンの元へ。
その姿は地面に植えられた人参のように、天高く垂直に刺さっていました。
「 ハラケン…… こんな光景見ちまったら、寝るとき嫌な夢見ちまいそうだよ。 」
ハラケンの安否より自分の事を心配していました。
ズッドッーーン!!
凄い勢いで地面から頭を引き抜きました。
「 はぁーー っ。 死ぬかと思った。
にしてももっと俺を気にしろよ!! 」
ハラケンは泥だらけで生還。
健は大笑いして倒れてしまう。
「 おいおいっ…… あはははは!
やっぱりバカは頑丈に出来てんだな。
あははっははは! 」
ハラケンは軽く首を痛めていましたが、全く問題ありませんでした。
鋼の肉体ですね。
二人は自転車を壊してしまったので、下の町までゆっくりあるいて行きました。
その頃…… 武蔵には姫子と光の姿が。
互いに何者なのか全く分かりません。
「 ねぇねぇお姉ちゃん。
どんな男のひと探してるの? 」
華ちゃんが尋ねると光は笑顔で答えました。
「 そうだなぁ…… 大男で食いしん坊でマザコンで良いとこなしの男。
それで食べ方とか汚くて、本当にどうしようもない男なんだから。 」
「 ふーー ん。 そうなんだ。」
華ちゃんは光達と一緒に座ってお喋りしていました。
あまり若い人はお店に来ないので、来ると直ぐに絡みに行ってしまうのです。
「 ほら! お姉ちゃん達に迷惑でしょ。
すみません…… ウチの妹が図々しくて。 」
愛さんがそう言い頭を下げると。
「 全然気にしないで下さい。
ウチは華ちゃんと話すの楽しいので。
ねぇー 華ちゃん! 」
華ちゃんも光の手をとりながら喜びました。
「 うん! お姉ちゃん食べ終わったら一緒に遊ぼうよ。 」
「 良いわよ。 スポーツから鬼ごっこに何でもするわよ。
ねぇ。 姫っ。 」
姫も光の元気な姿になってくれて嬉しく思いました。
「 うん。 そうしよ。
どうせここら辺には居ないだろうしね! 」
まさかここで居候しているとは全く思いませんでした。
ここに来たのだって偶然…… 。
道に迷ってご飯を食べれる所を探して、ここに入っただけなのですから。
「 はいっ。 お待たせしました。
かにクリームコロッケ定食と、ジャンボなトンカツ定食お待ち。 」
大きなおぼんに乗せて愛さんが運んで来ました。
「 イッヤッホーーイッ!
ジャンボトンカツだぁ。
凄い大きい。 」
光は食いしん坊なのでご飯も大盛りに。
「 私のは…… 蟹??
この衣の中身には蟹がクリームに包まれて揚げられた姿。
未だに食べた事ないので未知の世界ですわ。 」
姫子は蟹クリームコロッケを食べた事がありませんでした。
どうしても食べたくて料理長に頼んで、国産牛の霜降りをミンチにして作ったコロッケを一度食べた事があったのです。
最近は学校帰りにやっと光の影響で、買い食いでちょこちょこ食べるようになっていました。
「 姫は本当に何も知らないんだから!
つべこべ言わずに食べなさい。 」
光に言われて大きく一口食べる。
「 ぱくぱく…… 。
…… 美味しいっ!! 」
姫は大きい声を出してしまいました。
光はうんうん! と当然だろう。
と言わんばかりにうなづいていました。
「 お客さんは食べた事ないんですか!? 」
愛さんはびっくりしてしまいながら、問いただしました。
「 この子は色々特別なんですよ。
常識知らずで。 」
光が直ぐにフォローを入れると笑って納得してくれました。
「 そうなのね。
だったら今日は沢山食べてってね。
庶民的な料理で良ければね。 」
そう言いながらキッチンへ戻って行きました。
「 優しいね。 サクッ!
もぐもぐ…… 熱々で本当に美味しいわ。
今度我が家でも作ってもらおうかしら? 」
姫は大変気に入り、大きな蟹クリームコロッケを一口…… また一口と食べました。
「 蟹クリームコロッケは普通家で作れるのは、選ばれた頑張り屋のお母さんだけなんだからね?
凄い手間隙かけて作るから、すんごい大変なの。
こんなに中がとろとろになるのも、さすがはお店って感じよ! 」
光もここの料理の腕を褒めながら一口…… 。
「 何てジューシーなの!
肉汁がこの衣の中に凝縮されて、旨味までも包み込んでいる。
これをあいつも食べたら…… あっ。
何でもない。 本当に美味しい。 」
光はハラケンの事を言いかけて止めました。
楽しい事や美味しい物を食べる時、最近はいつもハラケンが隣に居たので、ぽっかりと心に穴が空いた気持ちでした。
「 直ぐに見つかるよ。
多分今頃はまたおバカな事して周りに迷惑かけてるかもね。
うふふ。 さぁ。 食べよう! 」
姫も光を励ましながら食べました。
光もニッコリうなづいて食べるのでした。
「 お姉ちゃん達はこれから何処行くの? 」
華ちゃんは二人に尋ねました。
「 ん〜 どうだろうなぁ。
今はあのボンクラを探してるから、近くの温泉のある旅館に泊まろうかなって。
あそこの人達も凄い優しくて。 」
光がそう言うと華ちゃんは。
「 珠子おばちゃんの所だ!
だったらまたいつでも来てね。
あたしはいつも仕事お手伝いしてるから。 」
二人は健気に話しかけて来る華ちゃんを、可愛いと思いました。
「 来るよぉーー 。
だから待っててね。 」
そう言い華ちゃんを撫でる光。
「 そうね。
早く見つかったら四人で来れると良いね。
ちょこちょこまた来るね。
ご飯も美味しいし、牡蠣のフライ?
まだまだ楽しみなの沢山あるからね。 」
姫も満足そうにしながら立ち上がり、お会計に行きました。
「 全部で1200円になります。 」
「 1200円!? 安過ぎません!? 」
光はビックリしてしまう。
都会ならこのトンカツだけの値段に感じるくらい。
蟹クリームと合わせて1200円…… 。
「 みんなに楽しく美味しく食べて欲しいんです。
ウチのお父さんがそうしていたように。 」
レジの上の壁には優しそうなお父さんの写真が。
「 良いお店ですね。
それじゃあ1200円。 」
二人はお会計をして外へ。
財布から姫はクレジットカードを落としました。
「 お客さん。 落としましたよ。 」
そのブラッククレジットカードに書かれた名前を見ると、白鳥姫子と書かれていました。
( 白鳥…… ってあの…… 白鳥家?
大金持ちとテレビとかに良く出るあの!? )
愛さんは姫子の存在に気付きました。
あの大富豪の一人娘なんだと…… 。
「 ありがとうございます!
失くしたら大変でした。 」
そう言いカードを受け取り外へ出ました。
( あんなご令嬢がどうしてここに?
探してる大男ってもしかして…… ? )
愛さんは姫子の存在は今後の生活が変わってしまう、前触れに感じるのでした。
その頃。 下山して買い物に来ているハラケン達は?
「 すいませぇーー ん! 誰か居ませんか? 」
軽く首や足を痛めたハラケンを担いで、ちょっとした雑貨屋に来ていました。
「 ハラケン大丈夫か?
今座らせてやるからな。 」
店内に備え付けられているベンチに、ハラケンを寝かせて健は店長さんを呼びました。
テクテクテク…… 何やら奥から足音が。
「 何じゃね。 騒々しい。 」
出てきたのはご年配のご老人。
白髪で腰を悪くしていて、猫背で歩くのが特徴的。
「 俺のポンコツの友達が軽く怪我したんだ。
ちょっと休ませてもらえますか? 」
おじいさんは何も言わずに奥へ歩いて行きました。
「 そこにそんなデカい置物居たら誰も来んだろ。
さぁ。 そいつをこっちへ持って来い。 」
とんでもなく口が悪いですが、そんなに悪い人には見えませんでした。
「 ありがとうございます!
お言葉に甘えて。 」
そこのお店は大きくはありませんでしたが、日用品の家具や食器。
ガステーブルなど様々な物が揃っていました。
( ほうほう。 まるで博物館だな。
本当に売れてんのか? ここの商品は。 )
凄い量の商品に上手く経営出来ているか心配になりました。
「 鳥頭。 お前、今売れてるのか考えてたろ? 」
図星でした。
おじいさんの店の奥の部屋で、二人は休ませてもらう事に。
( めんどくさいじいさんだな…… 。
早く起きろよ。 ハラケン。 )
健とおじいさん。
気まずい二人がどうなるんでしょうか?
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