第14話 安定した売り上げ


それから数日…… 。

ハラケン達による店の売り方により、店へ毎日お客さんが来るようになりました。

元々美味しいので一度食べたら病み付きに。

バーガーショップには売り上げは当然勝てませんが、固定客を呼び戻せたのはかなりの功績に。


( 思ったより上手くいってる…… 。

味も飽きられないくらいに沢山あるし。

昼にも夜にもちゃんとお客さんが来るし。

何の問題もない…… はず。 )


健は少し気になる事が。

バーガー兄弟ならもっと激しいプッシュをかけて、こちらを追い詰めて来ると思っていました。

それがどうでしょう?

負けず嫌い丸出しの二人はおとなしい。

健は毎日観察していました。


「 健君。 お茶入れたよ! 」


愛さんが休憩にお茶を入れてくる。

健も一段落して少し休む事に。


「 ありがとうございます!

いただきまぁーー す。

ズルズルーーっ。 落ち着きますね。

ここのお茶は。 」


自然豊かでにぎやかな都会とは違い、落ち着いていて癒される。


「 本当にここに居ると落ち着きますよ! 」


健はへらへらしながら言うと、愛さんは苦笑いを浮かべていた。


「 そんな事ないよ…… 。

ここは何の変化もほとんど無いし、基本みんな大人になったらここから出ていくんだ。

仕事はほとんど農家とかだし、夢があるなら都会に行かないとね。 」


いつもとは違い、少し現実的に悲しい事を言いました。


「 そうなんですかね。

ずっとこんな所に居れたら、俺は満足なんだけどなぁ。 」


健は外を眺めながら言いました。


「 健君ってさぁ…… どんな家に住んでるの?

こんな田舎の一軒家じゃなくて、大きな家とかに住んでるの? 」


いきなりの質問!

健は少しドキッとしてしまう。


「 嫌々全然。 …… 小さな家ですよ。

一人っ子のごく普通の家です。 」


咄嗟に嘘をついてしまいました。

お金持ちだと言ってしまえば、関係が崩れてしまう…… そんな気がしてしまったのです。

健の弱さでもありました。

特別扱いされるのが当たり前、今ではそんな扱いではなく普通にみんなと一緒に扱われたかったのでした。


「 … そう。

でももしもだよ? お金持ちだったら、健君は私達みたいた貧乏を笑うかな? 」


愛さんは何故かそんな事を聞いてきました。

健は即答する。


「 笑うなんてある訳ないじゃないですか!

もしお金持ちだったとしても、それは偶然生まれが違っただけですから。

俺は誰もが平等だとは思いません…… 。

でもいつかそんな世の中になる事を信じてます。 」


健は本心で答えました。

少し前まではこんな事を一切考える事はありませんでした。

姫や翼、ハラケンに光…… 。

沢山の人に支えられ、少しずつ変わる事が出来ました。


「 そうだね…… 。

変な事言ってごめんね。 」


そう言い部屋へ戻って行きました。

健はどうしてここで働いているのか?

愛さんが可愛い! それもあります。

それともう一つ…… 地位や権力やお金、そんな物だけでこの家族を計りきれない事を証明したかったのです。

人助けだとは微塵も考えていません。

自分自身がそうする事により、何かやりたい事や進むべき道を見つけられる。

そんな気がしたからなのでした。


( 特権階級様のお通りだぁーーいっ! )


頭の中でかつての自分の恥ずべき言葉が、何度もこだまするのでした…… 。


バーガーショップは通常に営業中。

何一つ変わらずに。

ハラケンと健は昼頃はお客さんの対応で大忙し!

オーダー取ったり、料理を運んだり。

不器用な二人にはとても大変でした。

汗を流しながら遣り甲斐を感じる二人。


昼の休憩は昼が少し過ぎてからやっと休める。

飲食店では当然の光景です。


「 ハラケン! 二人で街に少し買い物しに行こうぜ?

少しだけどもう給料貰えたし、オヤツとか色々買いに行こうぜい! 」


「 おうんっ!! 行こうか。 」


二人は店のママチャリを借りて、二人乗りして下の街に降りて買い物へ。

坂道を凄いスピードでかけていく!


「 ひゃっほーーいっ!! 」


健は運転しながら叫び続ける。


「 うわあぁぁぁっ!! 助けてぇ!

おかぁーーさん!! 」


ハラケンは怖がりなので健に抱き付きながら、下へ降りて行く。


「 びびってんじゃねぇーーよ!

ママチャリの安全性は日本人のお墨付きだってばよ。

この耐久性は。 …… あっ。 」


ブチンッ!

何やら変な音が聞こえて健の会話が止まる。


「 健…… ? どうしたの?

いきなり話すの止めるなよ。

怖がらせるのは禁止だぞ? 」


自転車はどんどんスピードを上げて行く。


「 おいおいおい!

スリルは充分味わっただろ?

そろそろ…… うっ! うわぁ!

止めてくれーーっ。 」


自転車はさらにスピードを上げて、遅い原付のおばあちゃんを追い越して行く。


「 ハラケン…… やっぱり外車も良いよな。 」


「 んな事今は関係ないだろ!

早く止め…… って。 まかさ!? 」


ハラケンは珍しく気付いてしまいました。

健の異変に…… 。

自転車のブレーキが老朽化が進み、切れてしまったのです。


「 たっ…… 健くぅーー ん!! 」


止まろうにも止まれないスピードに!

にしてもこのスピードで直線ばかりなのが救い。

下り坂が終わり平坦になれば、少しずつスピードが落ちていく。

二人は願わずにはいられない。


( 神様…… 俺達は良い子になります…… 。

だから…… 平坦の道を下さい…… 。 )


遠くを見ると見えて来ました。

…… 急カーブ注意の看板が。


「 神様ぁあーーっ! 」


ハラケンは気絶しそうになる。


「 諦めんな! 曲がるときに体重を曲がる方に傾けろ!

そうすればまだ曲がれるって、アニメの映画でやってたわ。 」


健がそう言うとハラケンはニヤリと笑う。


「 俺もその映画…… 知ってるぜ。

健。 お前は天才だぜ…… 本当に。 」


ハラケンは感心してしまう。


「 褒めるのは止まってからだ!

行くぞぉーーっ! 急カーーブ!! 」


重心を曲がる方に傾ける。

キュイーーンっ!!

凄い音がなりながら曲がって行く。


ズドォーーーーッ!!

全く曲がれずにガードレールを突き破る。


「 健ーーっ!! 」


二人は自転車から放り出されて下へ落ちていく。

凄い勢いで落ちていく…… 。

その風圧によりハラケンは気絶してしまう。


「 アニメのようには行かねぇーよな。

終わったぁーーっ! 」


ドーーンッ!!

凄い高さから二人は落ちてしまう。

自転車は大破してべこべこに。

二人は…… ?


「 おめぇーーら!

大丈夫だか? ケガしてねぇか? 」


( ん…… ん? 何だこの昔はお姉さんだった声は? )


健は目覚めると畑の上でした。

運が良くガードレールから落ちた場所は、農家の畑でした。


「 神様は居るのか居ないのか…… 。

ケガはない。 ハラケンは!? 」


親友のゴリラを探す…… 。

畑の土に頭から突き刺さっているハラケンを見つけました。


「 ハラケーーンっ!! 」


安否を気にして走る健!


そんな頃。

定食屋には少しだけゆったりの時間が流れていました。

夜に向け下準備の為に、少しのお休みに。


ガラガラーーッ!


「 あの…… すみません。

閉まってると思うですけど、食べたり出来ませんよね? 」


愛さんが直ぐに接客をする。


「 全然構いませんよ!

どうぞ中へ。 いらっしゃい。 」


お客さんが二人中へ。


「 ありがとうございます。

色々道に迷って腹ペコで…… 。 」


二人の女の子は何故かボロボロで、服やスカートは泥だらけ。


「 あらあら…… どうしたのかしら? 」


愛さんは直ぐに綺麗なタオルを渡しました。


「 ありがとうございます。

友達を探して遠くまで来てて。 」


「 あらそうなの…… 。

それは大変だったわね。

ゆっくり休んでってね。 」


愛さんはにっこりして料理を作る。

華ちゃんは物珍しそうに二人に駆け寄る。


「 お姉ちゃん達何処から来たの??

お名前は? 」


「 千葉県から来たんだよ。

私は白鳥姫子ですわ。

宜しくね。 」


「 ウチは光ーーっ! 宜しくね可愛い子ちゃん。 」


ついに二人が店へ…… 。

この偶然はどうなるのか?

ハラケンの安否はどうなる!?

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