第13話 光の迷い


「 ん…… ? ここは?? 」


姫が起きた場所は旅館の寝室。

布団の上で目を覚ましました。


( いつ寝ちゃったんだろ??

…… そう言えばバスから降りてから結構歩いて、真っ暗の中歩き疲れて寝ちゃったのかぁ。 )


隣で光も疲れて眠っていました。

姫は光にまた迷惑をかけてしまったと、自分はまだまだ誰かに甘えてしまっていると後悔しました。

外の景色を見ると、山! 山! 山!


「 にしても…… どうやってここまで来たのかなぁ?」


トントントンッ! ガラガラーーッ!


「 おう! 目覚めたか?

おんめえすんげぇ寝てたから、死んじまったかとおもったぞ。 」


なまりのエグいおじさんがノックをして、入って良いと言ってないのに入って来ました。

プロとしては最低だと思いました。


「 おじさん色々ごめんなさい…… 。

どうやってここへ? 」


「 ほんじゃあ、オレが話すだ。

ゴニョゴニョ…… 。 」


なまりは酷く、全ては理解出来ませんでしたが大体の理由は理解出来ました。

このデリカシーの無いおじさんは、一応命の恩人なのだとも。


「 おじさんありがとう。

私の名前は白鳥姫子って言います。

ケイトラと言う乗り物に乗せてくれて、本当にありがとうございます。 」


「 ええ! ええっ! 」


ええとは良いみたいな意味です。


「 おめぇさんも温泉入ってこ!

すんげぇ気持ちええだよ。 」


そう言われて疲れたので温泉へ。

光は疲れて眠って居るので一人で行く事に。

白鳥夫妻はセバスチャンと病院へ。

後程合流する事になっていました。


一人朝の静かな露天風呂へ。

木々や朝の日差しが露天風呂へ差し込み、反射して映る景色は絶景かな。 絶景かな。


「 凄い綺麗…… 気持ちいい。

光とまた後で一緒に入ろう! 」


そう言いながら一人寂しくもありましたが、露天風呂を満喫しました。


部屋へ戻ると朝御飯がテーブルに並べてありました。

採れたての魚に魚のだし汁の取れたお味噌汁。

お浸しに手作りのお豆腐。

完璧な朝御飯。


「 わぁー お! これはまた凄い事。

でもまだお金渡して無いんだけど大丈夫かな?

こんなに豪勢なご飯…… 。 」


姫は自分の所持金と光の所持金で足りるか心配になりました。

何故姫はあんまりお金を持っていないのか?

それはお小遣いせいになり、毎月一万円お小遣いをお父様に頂くようになったのです。

一万円はお小遣いとして多いか? 少ないか?

高校生はバイトをしたりしているので、一万は大人に近い姫には少しばかり少なくも感じるのです。

ですが姫は、バイトをしていないのでこのお小遣いからやりくりする事を決意!

お父様とお母様はその行動に、涙、涙が滝のように流れた事もありました。

本当に親バカの鏡ですね。


「 くんくんくん…… うっ!? 」


むくっ!! 匂いに釣られて凄い勢いで起き上がる光。


「 光ーーっ! 起きたの??

昨日はごめんね。 途中で疲れて眠っちゃって。 」


「 ん? 良いの! 良いの!

ウチの方こそ全然気を使えなくてごめんね。

所でぇ〜〜 。 これは朝御飯なのかな? 」


食いしん坊さんの光は朝御飯にしか目は行きません。

笑いながら姫がうなづくと。


「 じゃあ、食べるわよ!

いただき…… バクバクバクッ!!

美味しい! 美味しいわよこれっ。 」


凄い勢いで男顔負けな食いっぷりで食べまくる。

光はお腹が減っていました。

笑いながら姫もご飯を食べる。


「 ぱくぱく…… 美味しい。

こんな料理初めてですわ! 」


姫も料理を堪能しました。

二人はあっという間に全てを食べ終え、少し一休み。


「 にしてもハラケンともう一人。

何処行っちゃったのかな? 」


姫がさりげなく言うと、光は少し悲しげな表情をしていました。


「 光…… ? どうしたの? 」


光はいつも元気なので、落ち込んでいると直ぐに分かるのです。

光はゆっくり口を開く。


「 ウチさぁ…… ハラケンに冷た過ぎたのかな?

いつもつい、強めに当たっちゃうからハラケンも、嫌気が差して約束破って何処かに行ったのかな?

無神経過ぎだよね…… 。 」


自分のハラケンへの対応が酷かったと反省し、ずっとその事を後悔していました。


「 そうかなぁ…… ?

私は全然そんな事ないと思うよ? 」


姫がそう言うと光は顔を上に上げる。


「 だって二人はいっつも仲良しじゃない。

そんな事でハラケンは嫌になんてならないわ。

あんなに光が大好きなんだもん!

絶対にハラケンの早とちりで、また変な事になってるに違いないんだから。

光は何にも気にしなくて良いんだよ。 」


姫は微笑みながら話しました。

光はずっと悩んでいたので、そう言って貰えるだけで心が少しだけ軽くなる思いでした。


「 姫ぇーーっ! ひっぐ! ひっく…… 。 」


光は姫に抱き付き泣いてしまいました。

いつもは強がっていても、本当はみんなを思いやれる優しい女の子なのです。

そして凄い落ち込みやすい。

姫は光の頭を撫でながら励ましました。


「 大丈夫だよ。 絶対に。

あんな無神経な男他に居ないんだから。 」


少しデリカシーの無いようなセリフでしたが、褒め言葉でもあるので流しましょう。

二人はこの旅でまた深く友情を育むのでした。


「 へっくしゅん!! 」


ハラケンはその頃、裸で山のてっぺんに登ってくしゃみしていました。

軽い日課の一つなのです。

にしても…… 何故裸なのでしょうか?


「 毎日が充実している…… 。

ここの自然の恵みが俺の薄汚れた心を浄化していく。

何とも綺麗な朝日なのだろうか…… 。 」


情けなくて見てられないお腹がふっくらした、ぽてぽてボディで景色を堪能。

都会でこんなバカな行動をしたら、直ぐに補導されてしまうだろう。

イヤ…… 田舎だからって限度がある。

村人達も見つけたら直ぐに通報して欲しいですね。


「 お母さん! お母さん!

ハラケンは何処?? 何処? 」


華ちゃんは起きるなりハラケンが居なくて、家中探し回る。


「 どうだろうねぇ。 山にでも行ったのかな? 」


「 そうだね! ちょっと行ってきまーーす! 」


華ちゃんは小さな歩幅で走って山へ。

お母さんもそんな姿を見て、微笑ましく感じていました。


「 ハラケーーンっ! ハラケン!

何処に居るのぉーー ? 」


走りながら大きな声で呼びました。

ですが結構離れていて聞こえる筈もありません。


「 ハラケ…… うわっ!! 」


不安定な山道で躓いて転んでしまう。


「 痛い…… 。 ハラケン。

何処に居るの…… 。

ハラケーーンっ!! 」


ビクンッ!!

何かの気配を感じるハラケン。

野生の勘により走って下山する。


「 痛いなぁ…… 少し痛み引いたらまた探そう。

少し休もうっと。 」


そう言い座って休んでいると。


ズドッーーンッ!!

目の前に急に上から降って来たハラケン。


「 うわぁ。 ハラケン。

何処行ってたのぉ? 」


「 朝は散歩するのが暇人の日課なんだよ。

あれ? 足ケガしてるじゃない。

大丈夫かい? 」


ハラケンは直ぐにケガに気付きました。


「 大丈夫、大丈夫!

少し休めばもう痛くないんだから。 」


そう言い笑っていると、直ぐにハラケンは自分の持っていた風呂敷を出して、中からTシャツを取り出して着ました。

風呂敷を破き包帯のような形に切りました。


「 無理するんじゃないよ!

こうやってこうっ! はい。

これでもう大丈夫さ。 」


手慣れた手つきでケガを包帯の要領で応急処置しました。


「 ありがとう…… 。 」


「 良いって事よ!

ほいっ! 早く帰るぞぉ。 」


直ぐに華ちゃんをおんぶして下山する。

勢い良く走り降りるハラケン。


「 ポッポーーっ!! 無限列車ハラケン号。

只今下山しておりまーーすっ!

しっかりつかまっていて下さい。

ポッポーーイッ!! 」


「 凄いっ! 凄い!

うわぁーーっ。 わーーっ! 」


沢山笑いながら下山して家まで降りて行きました。

華ちゃんは優しいハラケンが大好き。

最初はゴリラみたいで全くタイプじゃありませんでしたが、今では全てが格好良く見えていました。

華ちゃんはこんな日がずっと続きますように!

と想う今日この頃なのでした。

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