第12話 バーガー兄弟の怒り


二人の言い放った言葉が弟に突き刺さる。


「 まぁ良いだろう…… こんなのは一時的。

直ぐに飽きてしまう。

そしたらまたアメリカを追い求めて来る。

アディオス! 」


ハラケンと健は無事に弟を撃退!

安心して二人はハイタッチをしました。


パチンっ!!

まだこれでは終わりではありません。

一日だけ売れても何の意味もないのです。

ここの料理の魅力を最大限まで広めれば、少しずつですが客足が戻って来るはず。


店の中は忙しくててんやわんや。

愛さんと奥さんが料理を作り、ハラケンが注文を聞きつつ料理を運ぶ。

華ちゃんはみんなにお水を入れたりする係。

外では健が入場までの案内、メニュー配りなどの抜かりなく徹底されていました。


それにしても…… 美味しい匂い。

七輪で焼いている焼き鳥は、煙だけでご飯3杯はいける程?

それは大袈裟でしたが本当にいい匂い。


「 愛ちゃん綺麗になったね!

お父さんも天国で鼻が高いだろうな。 」


常連だったおじさんが美味しい焼き鳥をつまみに、綺麗な愛さんに絡んでいました。


「 高橋さんは口が上手いんだから。

そんな事言ってもまけないんですからね! 」


店内は笑いが溢れていました。

華ちゃんも一緒になって笑っている。


( 久しぶりだなぁ…… 父さんが亡くなってからは、こんな風にお客さんに囲まれて料理を作る事なんかなかったわ。

本当に…… 良かった。 )


奥さんは涙目になりながら、次々と料理を作りました。

さんまの塩焼きやもつ鍋。

みんなはほとんどが常連さんだった人ばかり。


「 うまい! やっぱここは最高だ。 」

「 本当に本当! ぶっはっはっは! 」


みんなは美味しそうにご飯やおかずを頬ばりました。

ハラケンは皿を洗ったりしながら見ている。


( 本当にここは凄いお店なんだな…… 。

俺達なんか居なくても自然と戻って来たのかも。

ここに偶然来て良かったなぁ。 )


しみじみとそう感じました。

健も女性と会話しながらこの売れ行きに少し喜びました。


「 健くぅーーん! 」

「 健くんのオススメ頂戴! 」


若い女の子に大人気の健。

髪をかき上げながら笑い。


「 全部オススメだ。

俺のオススメがあるとすれば…… けんちんうどんかな? 」


すると女の子達はけんちんうどんを注文しまくる。

健効果も絶大でした。

店は大繁盛!

最近の売り上げの20倍以上にもなっていました。

ほとんどが一桁だったのもありますが、この売り上げはかなり凄い結果に。


「 アニキ…… バーガーの在庫が。 」


その頃店内では大量に注文されるはずのバーガーの在庫の山。

沢山来るはずだった為に、沢山従業員を投入してしまったので人件費も赤字。

倒す為なら仕方なくやった半額クーポンのせいで、一日の売り上げも赤字、赤字…… 。

策に溺れてしまった末路なのでしょうか。


「 うるぁああーーっ! 」


デカい声と共にバーガーアニキは、厨房で賞味期限切れのバンズを思いっきり地面に叩きつける。

弟もアニキの怒りにびびってしまう。


「 許さん…… 許さない。

ここはまず俺達の第一歩。

ここから店を大量展開する野望の邪魔はさせない。

頭空っぽ野郎にゴリラ野郎…… 。

このままで済むと思うなよ?

ここは福島県郡山市のオハヨウ州にしてやる。

あっはっはは! 」


アメリカかぶれ丸出しトークは弟も少し恥ずかしい。

ですが弟も一緒になって笑いました。

まだまだバーガー兄弟は諦めそうにはありませんでした。


その日の夜…… 。

みんなは今日の成果でパーティー状態に。

刺身やすき焼きに豪勢に夕食を楽しんでいました。


「 ハラケンのとなりは私だからね! 」


華ちゃんはずっとハラケンにくっついています。

少し嫉妬した健は。


「 おかしいなぁ…… 俺の隣空いてるぞ?

膝でも良いんだよ?? 」


華ちゃんは舌を出しながら。


「 べぇーーっ! 一人で食べて良いよ。 」


健はフラれて崩れ落ちる。

みんなは笑っていました。


「 健君にハラハラケン君。

本当に本当にありがとう。 」


おじいちゃんはニコニコしながら何度も頭を下げました。


「 いえいえ。 俺達は何も…… 。 」


「 それほどでも。 」


ハラケンは謙虚に、健は悪い癖で少しだけ褒められて酔ってしまう。


「 みんなぁーー 。 沢山食べてね。 」


奥さんが沢山料理を運んできました。

健は立ち上がりながら踊って嬉しさをアピール。

愛さんもお茶目な健を笑っていました。


ハラケンはその光景を見ながら考えていました。


( 俺の居場所はもうここなのかも知れないな。

あっちには悲しい過去しかない…… 。

愛する光を忘れて、武蔵の従業員として働く。

そして…… 。 )


ハラケンは妄想の世界に入りました。

ハラケンは成長して渋くなりながら、割烹着を着こなして料理をしている。


「 あなた。 新しい料理を作っているんですか? 」


隣には大人の色気を出す愛さんが居ました。

ハラケンの妄想では奥さんになっていました。


「 愛。 今日はまた新メニューが出来そうだ。

もう少し待ってなさい。 」


顔は美化されて藤原竜也みたいになっている。

どれだけ補正が上乗せされているのか??


「 パパぁーー ! 」

「 パパ遊んで遊んで! 」


男の子と女の子が走って来ました。

息子と娘の姿がそこにはありました。


「 ダメじゃないの! パパは仕事中ですよ。 」


愛さんが二人を叱るとハラケンが手を止めて。


「 愛あまり叱ったら可愛いそうじゃないか。

さぁ。 こっちへおいで! 」


二人は勢い良く飛び付きました。


「 パパ大好き!! 」

「 パパのお嫁さんになるぅー 。 」


「 がっはっはっは!

幸せいっぱい! 幸せいっぱい! 」


ハラケンは顔が元に戻りながら、バカ面しながら大笑いをしている。


ゆっくりと現実へ戻って来る。


「 幸せ…… いっぱい。 」


「 ハラケン? 何か言った? 」


愛さんに心の声が駄々漏れに。


「 あっ! 何でもありませんよ。

わはははっは。 」


「 うっふふふ。 」


愛さんも笑い。


( 本当に良い子何だけど、たまに変なのよね。

まぁ良いか。 )


内心は少し引いているのでした。


健も愛さんの笑う姿を見ながら。


( 俺もそろそろここが潮時かな…… 。

ここで俺が大将になって。 )


健も妄想を膨らませる…… 。


割烹着を着て料理の片付けをしている健。

そこへ愛さんが。


「 あなた。 ご飯が出来ましたよ。 」


「 愛。 今行きますよ。 」


またもや愛さんが奥さんに。

美女は人気者ですね。


「 あなた。 今日は二人でご飯食べに行かない? 」


「 ん? 子供達はどうするんだい? 」


子供がもう居るようでした。


「 ハラケンに預けました。

少し離れた場所に美味しいイタリアンのお店があるの。

一緒に行きましょ! 」


「 本当に愛はまだまだ私の事を一人占めにして。

まぁ…… 今日ぐらいは仕方ないか。

じゃあ行こうか。 」


二人は腕を組みながらバスに乗る。

家ではハラケンが沢山の子供に囲まれて遊んでいました。


「 健ーーっ! 早く帰って来てくれぇ!! 」


「 ハラケンお馬さんして? 」

「 ハラケンおままごとしよ。 」

「 ハラケンお腹減った。 」


ハラケンは沢山の子供の面倒でてんてこ舞いに。

そして健は愛さんとイチャイチャしながらお店へ。


( 幸せいっぱい! 幸せいっぱい! )


そして現実へ…… 。


「 幸せ…… いっぱい…… 。 」


「 んん? 何がいっぱいだって? 」


またもや愛さんに心の声がつい、口から漏れて聞こえてしまう。


「 何でもないですよ。 あっはっは! 」


にしても…… ほとんど健とハラケンの妄想は同じでしたね。

似た者同士なのですね。

二人共夢を見すぎなのでした。


「 ハラケン。 お肉入れてあげるね。 」


ハラケンのお皿にお肉を華ちゃんがいれてくれました。


「 ありがとう。 むしゃっ! むしゃっ!

うまい! うまい! 」


子供のようにガツガツと食べる姿は、本当に下品かつ大人の魅力なんて全くありませんでした。

食べてる姿をじっと華ちゃんは見ている。

そしてニコニコしながら自分も嬉しくなっていました。

華ちゃんは本当にハラケンが大好きなのですね。

ハラケンがモテたのは、これが初めてなのではないでしょうか?

子供の事なので直ぐに熱は冷めてしまうでしょうが。


みんなは楽しく夕飯を楽しんだのでした。

その頃…… 夜の山道を二人の女の子姿が。


「 姫…… ここ何処かしら?

真っ暗で街灯も全然なくて見えない。

旅館とかないかなぁ…… 。 ん?

姫!? 」


姫は静かに疲れて草むらで倒れていました。

ただ眠ってしまっただけです。


「 姫ぇーーっ! 起きなさい!

疲れてるのはみんな一緒だからね?

でも…… 本当に疲れたぁ。 」


そこへ軽トラが二人の前を通り過ぎようとする。


「 止まってぇーーっ! お願いっ!

って…… 止まるわけ…… 。 」


光はこんな暗い夜に車を引き止めようとしても、止まらない事は知っていました。


キキィーーッ!!

急なブレーキ音が聞こえて来る。


「 んだぁ? こんな夜遅くにあぶねぇなぁ。

わげ《家》に来るか?

旅館やってんだべ。 」


なまりのエグいおじさんが止まってくれました。

事情を説明して二人は旅館へ。

荷台に乗りながら二人は静かに眠ってしまう。

ハラケン達に会うのはもう少し先でしょう??

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