第6話 健だって
体がぼろぼろなのに無理して来た健は、ハラケンにおんぶしてもらいました。
「 健…… ごめんな。
こんなぼろぼろにしたのも俺なのに、さらに追い討ちで助けに来てもらって。
体…… 痛いだろうに…… 。 」
健は笑いながら答えました。
「 いや。 興味本位でハラケンが出てったって聞いたから、無理して来ただけだ。
来たとき俺は嬉しかったんだ…… 。
弱虫でビビりがあんな大勢に一人で立ち向かっていいたのを。
俺はお前が叫んだから動いたんだ。
もっと自信持て…… 。 」
ハラケンは嬉しかった。
健とは一対一での絡みはあまりありませんでした。
それなのにこんなにも思ってくれていたとは、思いもよらずにただただ、嬉しく思うのでした。
健は口には出しませんが、ハラケンのようになりたいと何度も思っていました。
イケメンで家は金持ち。
マナーも最低限出来ていて、女性の扱いにもなれています。
何故健はハラケンに憧れているのか?
少し時間はさかのぼる…… 。
健は一人席に着きスマホをいじっていると。
「 ハラケン遅くない? 」
「 いつもなら来てるよね? 」
「 ずる休みかな? 」
「 風邪引いたかな? 」
女子達が会話してる声が聞こえて来ました。
健は自分の耳を疑いました。
それはそのはず…… ハラケンは女子からの人気は最低。
彼氏にしたくない男、第二位なのでした。
それなのに女子達は何故ハラケンを心配するのか?
「 遅くなったぁ。 みんなおはよう! 」
ハラケンは汗をかきながら入って来ました。
「 ハラケンおはよう。 」
「 ハラケン遅刻寸前だったぞ? 」
「 ハラケン汗臭いぞ! 」
ハラケンが来るとみんなはハラケンに挨拶をして、一言ヤジを飛ばしました。
健はそのとき悟ったのです。
イケメンは外見の容姿だけで薄っぺらい。
ハラケンがみんなに愛されているのは、ボンクラではありましたが心の優しさでした。
誰にでも優しく、女子と男子の隔たりも関係なく話をかける。
恋愛対象にはならないかもしれませんが、みんなハラケンが大好きだったのです。
健は嫉妬しました。
ハラケンが来た瞬間からは教室には笑いが溢れていました。
健はそのときスマホを見てみると、沢山の女子達とのトーク履歴がありました。
どれもこれも健の中身ではなくて、外見やお金持ちに釣られて絡んでいた女の子達。
健は返信をせずに静かにスマホは、通知のバイブレーションで振動する。
自分もハラケンのように中身を見てもらいたい。
外見なんて関係ないと。
おんぶされながら少し前の事を思い出していました。
「 ハラケン…… お前は自信を持て。
お前は俺にはないもん沢山持ってる。
光がどうした? グラビア女優がどうした?
何度フラれても良い。 何度傷ついても良い。
お前には俺が付いてる…… 。
なぁ。 相棒。 」
ハラケンは嬉しくて仕方ありませんでした。
勝手な提案で不良にはボコられ、財布やスマホを盗まれて挙げ句の果てに桜は咲いていない。
内心は勝手な思いつきに付き合わされて、良い迷惑だとも少し思っていました。
今回の旅でその気持ちは変わりました。
健の気持ちが良く分かったのです。
ハラケンには友達は沢山いました。
男友達や女友達。
健には本当の友達はほとんど居ません。
モテて話せる女の子とかは沢山居ます。
本当に健を想ってくれている人は居るのだろうか?
健は一人孤独にアパートの部屋で考えたりする日もありました。
そのとき…… 。
ガチャっ!
「 健! ウチのママが沢山シチュー作ったんだ。
いっぱい食べてくれよ。 」
その冷たい扉を簡単に開けて入って来ました。
健はそんなハラケンの事を、自分だけかも知れないが本当の友達だと思うようになっていました。
( コイツはボンクラだけど、俺の中身を見ていつも笑ってやがる。
今は金ないのにたまに心配なのを隠して会いに来る。
こんなバカ他に探しても何処にも見つからねぇぞ?
俺は…… コイツみたいになりたい…… 。 )
健はハラケンの為に、どうにか力になりたくていつも考えていました。
お礼をしたくてもお金はない…… 。
恥ずかしい…… 。
でも今回のハラケンのピンチに健は絶好の機会だと思いました。
( ハラケン…… 次は俺がお前を助ける番だ。 )
そう思いながら今回の計画を立てたのです。
健は根は熱い男だったのでした。
二人の性格は全くの正反対…… 。
薄っぺらいイケメンとゴリラ。
似てる人よりも全く違う人も友達になれる。
人はそれぞれ違うのが個性。
それが人間なのです。
二人は綺麗な夜空を見ながら帰りました。
その頃、駅の改札口の前に居る姫と光。
「 凄いなぁ。 これが駅の前ってやつね。
凄い人混み…… 凄い勉強になりますわ。 」
姫は興奮しっぱなし。
光は笑いながら姫の手を取り改札を越えて行きました。
「 行くわよ姫。
ウチらがあのボンクラ捕まえに行くのよ。 」
「 おぉーーっ! 」
二人はやる気満々!
セバスもスーツで決めつつ近くにずっと居ました。
二人は長距離を新幹線で行く事に。
「 凄いわ…… みんなに一つ一つ席があるのね。
楽しみだなぁ。 」
興奮しながら新幹線は福島へ凄いスピードで走って行く。
ビューーーーッ!! ズゴォーーッ!
凄い音を立てて走る。
外を見る姫はそのスピードに興奮しました。
「 凄い、凄い!
こんなスピードなら北海道までも行けそうね。
行け! 行けっ! 」
すると機内の売店がカートを押して駅弁を売りに来ました。
「 光っ! 光っ! 見て見て!?
何かもってお姉さんが来るわよ?
あれって何!? 」
興奮して光を強く揺すりました。
「 鬱陶しいわ! あんなの普通よ。
ちょっとは静かにしなさいよ。
本当に世間知らずなんだから。
ウチみたいにクールになりなさいよ? 」
少し大人ぶる光。
姫を見ると売店のお姉さんと既に会話していました。
「 これと、これ!
後はお弁当二個とデザート二個。
凄い楽しみですわ。 」
「 はぁーー い。 どうぞ! 」
沢山の食べ物を買って楽しんでいました。
「 光食べよう。 沢山買ったのよ。 」
「 本当に…… でも美味しそうね?
いただきます! 」
二人は遠足気分。
それを離れた席で見ているセバス。
「 おっほっほ。 青春ですな。 」
そう言いながらお茶すする。
新幹線が凄いスピードで走る上空を、一機のジェットヘリが追いかけて来ていました。
通常のヘリでは全く追い付けないのに、なんとも速いジェットヘリ。
軍人が使用する専用機。
何故か新幹線を追いかけて来ていました。
「 おっほっほい! 楽しみだな。 」
「 そうね…… 早く会いたいわ。 」
謎の二人を乗せたジェットヘリは静かに追いかけてきました。
この事はまだ誰も知らない…… 。
一体…… 何者なのか!?
そうとも知らずに二人はお弁当を食べまくる。
「 美味しいですわ!
お弁当ってこんなに電車で食べると美味しいの。
また電車乗ろうね。 」
「 ばくっ! ばくっ! …… もぐもぐ。
早く食べなさいよ。 おかわりしようかしら? 」
二人の旅もまだ始まったばかりでした。
その頃、バーガー兄弟は二人で暗い夜のキッチンで、小さな光をつけて何やら小さな声で話していました。
「 アニキ。 あの定食屋…… 時間の問題かも知れないが、もう我慢の限界ですぜ。
ちょっと嘗めてるから、お灸をすえてやりましょう。 」
パワフルな行動派の弟。
興奮しながら鼻から息をしまくりました。
「 まぁ、待てよ。
ガキが騒いでるだけだろ?
次の祭りまでには静かになるだろうよ。
そして夏祭りは、我がバーガー兄弟の屋台が出る。
存分に己れらの無力差を知るが良い。 」
二人は何やら嫌な事を話していました。
ハラケン達は敵うのでしょうか?
そして二人は夏休みの宿題の事は、全く覚えていませんでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます