第4話 落ち込みハラケン


朝になり眩しい朝日に起こされる。

窓を開けてたので美味しい空気が外から入ってきていました。


「 美味しい空気だなぁ。

心が洗われるようだ。 」


ハラケンは誰よりも早く起きて一階に降りました。

台所には華ちゃんと愛さんのお母さんが、朝のご飯の支度をしていました。


「 おはよう。 ハラケン君。

良く眠れたかしら? 」


「 ええ。 勿論です。

無一文で迷惑ばかりかけてすみません。 」


申し訳なくて頭を下げると、おばさんは笑って首を横に振りました。


「 全然。 ウチはおじいちゃん以外に男が居ないから、女ばかりでいつも寂しかったのよ。

昨日は健ちゃんとハラケン君来て、凄く面白くて華も凄い喜んでいるのよ。 」


おばさんはそう言いながら二人の事を快く迎えてくれたのです。

ハラケンは少し元気がない。

まだ光の事や自分の不甲斐なさを乗り越えられずにいました。


「 俺、少し散歩してきます。 」


そう言い、外へ…… 。

福島は大きく三つに分かれている。

浜通りは福島市、中通りは郡山、それと会津。

降水確率もこの三ヶ所で大きく変わってくる。

なので雪が積るのもこの三つは全然違う。

そして今居るのは郡山。

近代化されている福島市。

自然に恵まれながら雪の積る会津。

その両方備え持つ郡山。

今居る場所は郡山なのです。


元はと言えば地蔵桜。

ここが恋愛成就なんて話、聞いた事がない。

健の間違った情報だったのでしょうか?

散歩がてら来てみたが、本当に大きく歴史溢れる大きな大木。

咲き誇る所が本当に見たかったと思わずにはいられない。


「 少し時間経ち過ぎたなぁ。 」


ハラケンはゆっくり腰をあげて帰ろうとする。

こんなに落ち込んだのは初めてでした。

頭もあまり良いとは言えません。

ゆっくり、ゆっくり考えて答えを探すのでした。


帰ると美味しそうな匂いが漂って来ました。

みんなは既にテーブルに着いて待っていました。


「 ハラケン。 はやく。 はやく! 」


華ちゃんがハラケンの手を引っ張り席へ。

健以外で食べる事に。

健は不良達からの打撲により、少し熱を出して寝込んでいました。

ハラケンと違い筋肉も少なく、女の子のようにか弱いのです。


朝ご飯を食べて店内の掃除をしました。

出来るだけ綺麗にしようと頑張ります。

華ちゃんも一緒になって雑巾がけ。

ハラケンの心は少しだけ救われていました。

健気に隣に居てくれる華ちゃんを、本当の自分の妹のように愛おしくなるのでした。

ハラケンは一人っ子。

休憩の時は肩車をしてあげたりと、二人は兄妹のように遊びました。


「 ハラケンの肩車すごい、すごいっ!!

こんな高いところはじめてだよ! 」


華ちゃんは興奮しっぱなし。

ハラケンもその期待に応える為に、走ったりして喜んで貰おうと思い頑張りました。


「 凄いだろーー 。 お兄ちゃんは巨人だぞ!

ぐはははっは! 」


華ちゃんは沢山笑いました。

華ちゃんには男の家族はおじいちゃんだけ。

お父さんは華ちゃんが物心つくまえに亡くなっていたので、ハラケンの存在はとても大きかったのです。


二人は健の為にアイスを買いに、下の街へ降りて出店に行きました。

歩いて30分くらいの距離。

華ちゃんは元気いっぱいで、全く弱音を吐かずに歩いていました。


出店に着くとおばあちゃんの店員が一人居て、笑顔で待っていました。


「 華ちゃんや。 良く来たなぁ。

ほれ。 疲れただろ? オレンジジュース飲みな。 」


おばあちゃんと華ちゃんは大の仲良し。

おばあちゃんの隣に座り、お喋りしながら笑っていました。


「 んであんた誰だべ?

でかくてゴリラみたいな男だな。 」


「 俺は原田源一郎です。

高校二年生です…… 今は定食屋武蔵でバイトさせてもらってます。 」


そう言うとおばあちゃんは納得してホッとしました。

このゴリラがもし華ちゃんに何かしでかしたら、絶対に息の根を…… なんて考えていました。

華ちゃんはおばあちゃんの宝物です。

ハラケンは店内で飲み物や駄菓子やアイスを選びました。


「 おいゴリケンだっけか?

華ちゃんにこんな重いの持たせるなよ? 」


怖い形相で睨み付けました。

ビビりながらうなずきました。

そして少し疲れてしまった華ちゃんをおんぶして帰る事に。


「 おばあちゃんまた来るね!

ばいばい。 」


おばあちゃんは怖い表情から優しい表情へ。


「 はいはいっ。 いつでも来てね。

バイバイだべさ! 」


華ちゃんが見えなくなるまで手を振っていました。


( あのババア…… 名前は覚えないし、あんな怖い顔で睨み付けやがって。

本当に俺っ一体…… 。 )


そうボヤキながら坂を上りました。


「 ハラケン…… ?

あたしはハラケン大好き…… ぐぅぐぅ。 」


ハラケンの大きな背中に安心して眠ってしまいました。

疲れていたのでしょう。


「 ありがとう。 ゆっくりおやすみ。

帰ったら起きて一緒にアイス食べようね。 」


そう言いながらゆっくり歩いて行きました。


( こんな可愛いなんて。

光みたいにガミガミ言わなくて、優しくて本当に可愛いなぁ。

後もう少ししたら絶対美人さんだぞ。 )


ハラケンは光への愚痴を溢してしまう。

何となく気持ちは分かるのですが…… 。


「 へっくしゅん!!

誰か噂してるのか?? 」


その頃、光は悪口を言われてくしゃみしてしまう。


「 大丈夫?? 風邪引いてない? 」


光と姫は手当たり次第に健とハラケンの行きそうな場所を当たりました。

手掛かりは全く見つからずにいました。


「 ハラケン…… 何処に行っちゃったのよ。

朝のバイキングのメニュー。

変わっちゃうじゃない…… 。 」


光は悲しそうに言いました。

姫は光がハラケンを心配する気持ちが、痛いほど良く分かりました。

いつもはがみがみ怒っていても、心の中ではハラケンと一緒に居るときが一番落ち着くのです。


「 お嬢様。 少し宜しいでしょうか? 」


セバスが姫に何かを伝えようとしていました。


「 ん? どうしたの? 」


「 勝手ながら私個人的に、私の執事仲間達に連絡を取り、日本中に二人の顔写真を手配しました。 」


さすがは万能のセバス。

気が利く最高の執事。


「 そしたらですね。

福島の郡山で勤務している執事が、それらしき人物の情報を掴んだと言うのです。 」


二人はそれを聞きびっくりしました。

どうして福島に!?


「 本当にハラケンだったの!?

見間違えじゃないの? 」


勢い良く光がセバスへ尋ねました。

セバスは光をなだめつつ。


「 あるバスの運転手がイケメンと、大男のゴリラのような青年二人が二日前に乗車したとの情報が。

写真を見せた所、たしかに二人と良く似ていた。

と申していたようです。 」


「 間違いないわ。 ハラケンよ!

直ぐに行くわよ姫っ!! 」


そう言い直ぐにスーパーに入り必要物資を買い占める。

姫はクスクスと笑いながら後を追おうとする。


「 姫様。 一つ不安な事が…… 。 」


「 どうしたの? 」


姫は不安そうに聞くと。

セバスは重たい口を開きました。


「 光様はハラケンを好意的に見ているので、心配させまいと思い、言い出せなかったのですが。

二人の服装はかなり乱れ、イケメンの方はお金を払う為に通りすぎたときに顔や、手をケガしていたらしいのです…… 。 」


姫はそれを聞き不安になってしまいました。

二人の安否が気になってしまう。


「 じゃあ早く行かないといけませんわ!

さぁ。 セバス。 こんな時は新幹線と言う日本の最高技術で整備された誇り高き乗り物で行きましょ。

こんな時に初挑戦ですわ。 」


心配しつつも姫は遠足気分に。

自家用のジェット機を使えば直ぐなのですが、少し旅を楽しみたくそう思いました。


「 分かりました…… 。

旦那様と奥様には私から連絡をして置きます。 」


その様子を何者かが見ている。


「 福島か…… ほっほっほぉい。 」


怪しい陰が迫っているのをまだ、誰も知らずに居るのでした。

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