第3話 ボロボロな定食屋


二人は女の子に連れられてお店へ。

「 定食屋武蔵 」 ここが女の子の両親の経営するお店。


「 ん…… ここは。 」


健は目を覚ます。


「 健。 気が付いたか?

やっとご飯食べれるぞ。 助かったな。 」


健は外見を見るなり嫌な顔をしました。

ボロボロで看板も汚れて、ドアも昔ながらの引き戸。

外に看板が出ているが手書きで入りたいとはあまり思えないお店。

逆に今なら入りたい人が居るのかも?


「 こんな汚いとこヤダよ。

俺様の舌はそこまで堕ちてねぇよ。 」


「 何、今更ワガママ言ってんだよ。

折角の好意を無駄にすんなよ! 」


二人は言い争っているとその声で店内から出て来ました。


「 あら? お客さんかしら? 」


それはあまりにも綺麗なロングヘアー。

黒髪で目が大きく、背は高くて凄くスタイル抜群!

ハラケンは言葉を失いました。

ハラケンは直ぐに恥ずかしい健を叱りつけようとすると、既に健の姿はありませんでした。


「 あれ? 健?? 何処に。 」


既に健はその女性の前に居ました。


「 いやぁ…… お恥ずかしい。

地蔵桜を見ようと友が言いまして、仕方なく付いて来たのですが、桜が咲いていなくて。

お腹を空かせて彷徨さまよっていたのです。 」


健はあんなにボロボロだったのに、美人の前で体が回復して動いていました。


「 ウフフフ。 桜はとっくに散ってますよ。

凄いボロボロですが大丈夫ですか? 」


その女性が健に聞くと健はへっちゃらな素振りを見せました。


「 これですか? やんちゃな若造に絡まれましてね。

全然大丈夫なのですよ。 あははは。 」


美人の前でいきなり態度を変える。

さっきまで店をボロクソに叩いていたのに。


「 良かったら中へ。

美味しいご飯出しますので。 」


優しい女性は中へ入れてくれました。


「 本当に良いお店ですね。

詫び錆び? これこそ日本の「 和 」を感じさせられます。 」


酷評していたのに手のひらを返し、絶賛しながら笑いながら二人で中へ。

健の変貌ぶりにイライラしながらハラケンも店内へ。


中に着くと壁やテーブルや椅子はぼろぼろ。

壁は長年の油汚れにより黄ばんでしまうくらい。


「 実は…… 俺達財布を盗まれてしまって今は。」


ロングの女性はくすくすと笑いながら気にしないでと言いながらご飯を作ってくれました。

うどんを二つ温かいのを作ってくれて運ばれて来ました。


「 あの…… この美味しそうなうどんは一体? 」


「 けんちん汁にうどんを入れた、けんちんうどんですよ。

さぁさぁ。 沢山食べてくださいね。 」


女性の名前は、黒木愛くろきめぐみさん。

大学に通いながらここのお店を手伝っているのだとか。

小さな女の子は、黒木華くろきはな

おてんばな元気いっぱいの女の子。

学校から帰ると家のお手伝いをしているしっかり者。


二人はうどんを一口食べる。

ずるずるーーっ!


「 うまい…… なんだこりゃあ? 」


健は感激していました。

けんちん汁とはゴボウやじゃがいもやにんじんにこんにゃくや豚肉を入れたお味噌汁。

それにうどんが入っているのです。

福島では家庭の味のような存在です。


「 本当に美味しいなぁ。

さっき急いで食べたけど、味わって食べるとうどんの奥深さを感じる。 」


ハラケンも夢中で食べ進めて行く。

健は珍しい食べ物に夢中で食べて、おかわりを頼みました。

愛さんは優しく大盛にして注いでくれました。

無一文の二人にとても優しい。


ここの麺は自家製麺。

歯ごたえ抜群で食感が病みつき!

麺とスープが凄く相性抜群。


それにしても…… お客さんが居ない。

田舎のお店はこんなもんなのでしょうか?


「 愛さん。 ここってお客さんはどれくらい来るんですか? 」


愛さんは少し悲しそうになりながら。


「 三人くらいかな。 」


三人!? 田舎では普通なのか?


「 うぇっ!? 愛さん!

それって大丈夫なんですか!! 」


二人は驚いて聞くと当然大丈夫ではありません。

昔は結構繁盛していたのですが、お父さんが失くなってからは母と娘二人で切り盛りしている。

味はほとんど変わっていません。

ならどうしてでしょうか?


「 実はね…… あれ。 」


愛さんが指差すとそこには山奥には不釣り合いなバーガーショップがあるではないですか。

二人は驚いてしまう。


「 あんなとこにあっても売れるわけは。 」


健がそう言い望遠鏡を使い見てみると、沢山の長蛇の列が見える。

しかもおじいちゃんおばあちゃんまで並んでいる。

どうしたもんなのか?


「 最初は売れるわけないって誰もが思ったの。

でもハンバーガー屋は下の街中に行かなければ食べれなかった物が、いつでも食べれるようになって誰もが喜んで夢中になったの。

そしたらここのお店には誰も来なくなっちゃったの。 」


愛さんから話された事は悲しくも現実では良くある話。

世の中弱肉強食…… 強い者が生き。

弱い者を蹴落として生きている…… 。

ハラケンは気まずくなってしまう。


( 変な事聞いちゃったな…… 。

これはゆっくり帰った方が良いのかも。 )


ハラケンはそう思っているとき。

ガターーンっ!!

椅子から立ち上がる健。


「 んな訳ないんですよ。

ここのお店があんなアメリカ被れのバーガー屋に負けるなんて信じられない…… 。

ご飯タダで食べる訳にはいかないと思ってたんで、丁度良かったです。 」


健以外はその発言の意図が全く分からない。


「 健君…… 何言ってるの? 」


健はバーガーショップを指差し。


「 あのバーガーショップに勝つんだよ。

そしてここの武蔵を活気のある店にする! 」


三人はいきなりの提案に驚いてしまう。

ハラケンは直ぐに健に意見する。


「 また勝手な事言って…… 出来るわけないだろ?

俺達は経営とかは全く知らないんだから。 」


健はそんな言葉耳に入らない。


「 知らないからってやらない言い訳にはならないんだよ。

俺にはこの店が流行らないのがわかんないんだ。 」


妹の華は大喜び。

跳びはねながら健の周りで喜んでいる。


「 本当に良いですから…… 。

ここはそろそろ閉める方が良いのかも。

全然上手くいかないし。 」


愛が悲しそうに言うと。


「 愛さん。 そんな事ありません。

お父さんが作り上げた味を、簡単に閉めるなんて言わないで下さい。

俺さ…… 俺が付いています! 」


そうして手を握りました。

愛さんは健のそんな優しさがとても嬉しく、照れくさそうに微笑みました。

ハラケンは悲しそうな顔で見ていました。


その日から二人は家に帰るお金を稼ぐ為に、ここでバイトとして働く事に。

全然お金は出せないと言われましたが、助ける為だったらそれでも良いと思ったのです。

一日三食出て家にも泊めてもらえる事に。

健は凄い楽しそうに笑っていて幸せそう。

体はぼろぼろで包帯や湿布で応急処置してもらい、少しずつ回復するのを待つ事になりました。


二人は夜ご飯を食べて健は疲れていてぐっすり。

ハラケンは何故か悲しそうにため息をしながら外へ。

夜の空はとても綺麗で都会では味わえない、空がまるでプラネタリウムのように光輝く。

近くの坂を上り、草の上に腰を下ろして眺めている。


( はぁ〜 …… 何してるんだろうな。

結局何しに来たんだか。

俺なんか…… なんにも取り柄ないし。 )


すると坂を登って来る陰が?


「 ハラケン。 どうしたの?

こんな所に一人で。 」


華がハラケンが外へ出てく所が見えて付いて来たのです。


「 華ちゃん。 どうしたんだろうね…… 。

お兄ちゃんは少し疲れてるのかな。 」


ハラケンは少しケガをしましたが、健ほどの痛みはなくてぴんぴんしていました。

それでも心はとても痛く感じる…… 。


「 お兄ちゃんはね。

不細工で食事のマナーも最低で、マザコンだったり人の気持ち考えるの下手なんだ。

そしたら好きな人に愛想つかされて、他の人の所に行っちゃったんだ。

何言ってるんだかね。 あはは。 」


光がイケメンの男と歩いていてショックで立ち直れない。

ハラケンは自信が失くなっていました。


「 ハラケン。 私はハラケン好きだよ?

すご〜いでっかくてやさしくて良いと思うよ。

全然気にしちゃダメだよ。

自信持って?? 」


ハラケンは弱っていたので夜で良く見えなくなっている中、静かに涙を流しました。

華はハラケンが何故泣いているのか分からない。

それでも悪い奴ではないと思い、少しずつ好きになっていくのでした。


二人は星空を眺めていました。

いつの間にか寝てしまった華ちゃんをおんぶして、ゆっくり起こさないように帰りました。


ハラケンは健を見て自信がさらに失くなっていたのです。

健は考えずに行動を先にしてしまう。

自分には到底出来ない…… 。

しかもイケメン…… 嫉妬しかありませんでした。

健のようになりたい…… そう願うのでした。

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