第5話
「ソラー!ソラ―!そろそろ出るわよー!」
「分かってるよ母さーん!」
我は今日、地球の義務教育機関である初等学校、通称”小学校”へ入学する。
入学式に向けた準備をしながら今日までの日々を思い返す。
我がこの地球に転生してから六年の月日が経った。
クソ女神の介入こそなかったものの、あの絶望的にヤバい状況から生き残り続けた我、すごくない?
ちなみに、転生してからこれまでの六年間で今までで一番ヤバかったのは赤子の時、注射器という医療器具に刺された時だ。
何がヤバいって注射を打つたびにHPの七割から多い時には九割が消し飛んでいく上、『地球人Lv1000』の能力の一つ、『対魔王痛覚1000倍』によって、リアルに針千本同時に刺されるクラスの痛みが走るのだ。
それこそ、痛みに慣れていない人間が受ければショックで精神に異常をきたしかねないほどの痛みだ。
一度だけ注射が失敗した時、間髪入れずもう一度注射を打たれそうになった時は冷や冷やしたが、恥を捨て、ギャン泣きしながら暴れまわることで何とか生還できた。
死の危機から生還した時には、もう何度目かわからない女神への殺意を覚えた。
今では我の頭の中で、女神は既に千回ほど殺している。
まぁ、成長するにつれて多少ステータスが元に戻ってきた影響で、今では強烈な痛みこそ感じるものの、命の危険までは感じなくなったのは幸いである。
ちなみに六歳まで成長した我のステータスはこんな感じである。
_____________________________
名前 大星空人(シリウス)
レベル 1
職業 魔王
称号 転生者 異世界人 絶対魔王ぶっ殺す世界の異物 不幸の権化
加護 なし
基礎能力値
HP215000/215000(5300000/5300000)
MP1000000/1000000(20000000/20000000)
物攻23000(460000)
物防21750(435000)
魔攻25000(500000)
魔防21000(420000)
敏捷22500(450000)
幸運0
スキル
魔王Lv10(七魔眼、魔王魔法、絶対防御障壁、超再生、魔力支配、魔王覇気etc) 基本属性魔法Lv10 全属性魔法耐性Lv10 物理攻撃耐性Lv10 精神攻撃耐性Lv10 身体強化Lv10 地球人Lv1000(対魔王攻撃力1000倍、魔王攻撃無効、魔王防御無視、対魔王超デバフ、対魔王再生超鈍化etc)
_____________________________
六歳時点で、元のステータスの五パーセントが戻ってきた。
このくらいのステータスがあれば例えダメージが千倍になったとしてもそうそう死ぬ事は無いだろう。
「ソラ―!早くしなさーい!もうお母さん玄関に居るわよー!」
おっと、母さんが呼んでいる。
早く玄関に向かわなければ。
我は急いで自分の部屋から出、階段を降り、玄関へ向かう。
我今世のの母、大星紗良は普段は温厚だが怒らせると怖いのだ。
余談だが、両親は、我が普通の子供ではないと何となく察していると思う。
死なないために必死で、異常性を隠す余裕などなかったのだ。
「ソラ、ちゃんと傘持った?」
入学式への準備を済ませ、玄関に来た我に母さんが聞いてきた。
「もったよ」
我は手に持った子供用のビニール傘を母さんに見せる。
「じゃ、行こうか」
玄関から出てを、二人で通学路を歩き始める。
周りにはちらほらと同じ小学校の入学式に向かう親子が見える。
その中の一人の男の子が、我に向かって指をさしてきた。
「あの子、こんな天気良いのに傘持ってる、変なのー」
「こら!人様に指をさすのはいけません!」
「えーでもー」
「でもじゃありません!」
「だって、だって……うぇえぇぇぇ!!」
我が今世の同級が泣いてしまったが、彼の指摘はもっともである。
今日は雲一つない晴れなのだ。
もちろん、これから雨が降る予定があるわけでもない。
しかし、母さんは我に傘を持たせた。
別にこれは母さんが今日の天気予報を見ていなかったわけでも、見ていてなお傘を持って行かせる想像を絶する阿呆なわけでもない。
母さんは知っているのだ。
降ってくるのは雨ではないのだという事を。
瞬間、我の探知にあるものが引っ掛かったので立ち止まる。
それとほぼ同時に、母さんも立ち止まった。
今日は早かったな。
「ソラ、来るわよ」
「わかってるよ、母さん」
母さんが我から距離を取り、我は手に持った傘を開く。
周りが大人も含めて不思議そうな顔をするが気にしない。
バサバサバサバサ!
近くで鳥の群れが飛び立つ音がした。
そしてその鳥の群れが我の真上を通過するその時……
ボトボトボトボト!
鳥達が一斉に糞を投下した。
傘の透明なビニール部分がものすごい勢いで白と茶色が混ざったような色の糞に浸食されていく。
その間約一秒。
その一秒で周囲は一瞬で静まり返った。
我は糞まみれの傘を常備してい洗浄用の水魔道具で洗浄すると傘を閉じ、我と母さんは再び何事もなかったかのように歩き出す。
我らが再び歩き始めて数秒立ったあと、ようやく周囲の時間が動き出した。
そう、降ってくるのは雨ではない。
う〇こである。
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