第4話

 二時間程ふて寝をして部屋の窓の外に光が見えなくなった頃、冷静になった我は、改めて自分のステータスを見て、即座にこの世界についての情報を集めるだした。

 本当だったら情報収集はもう少し体が成長して、体の自由が利くようになってからするつもりだったが予定を早めたのだ。


 何故って?


 そうしないと死ぬと思ったからだ。


 これは冗談ではない、本気マジである。

 

 そのわけは我のステータスにある。

 我は気付いてしまったのだ。

 今の我のステータスはこうだ。


 ____________________________


 名前 大星空人(シリウス)


 レベル 1


 職業 魔王


 称号 転生者 異世界人 絶対魔王ぶっ殺す世界の異物 不幸の権化


 加護 なし


 呪いカース 女神の私怨


 基礎能力値


 HP530/530(5300000/5300000)


 MP2000/2000(20000000/20000000)


 物攻46(460000)


 物防43(435000)


 魔攻50(500000)


 魔防42(420000)


 敏捷45(450000)


 幸運0


 スキル

 魔王Lv10(七魔眼、魔王魔法、絶対防御障壁、超再生、魔力支配、魔王覇気etc) 基本属性魔法Lv10 全属性魔法耐性Lv10 物理攻撃耐性Lv10 精神攻撃耐性Lv10 身体強化Lv10 地球人Lv1000(対魔王攻撃力1000倍、魔王攻撃無効、魔王防御無視、対魔王超デバフ、対魔王再生超鈍化etc) 限定メール


 _____________________________


 お気づきだろうか?

 あのクソ女神の呪いのせいで0になった幸運を除いたすべてのステータスが1000分の1になっている。

 推測だがこれは転生によって我が赤子になった影響だろう。


 次に、我のHP、生命力について注目してみて欲しい。

 この値が0になると我は死ぬ。

 今、我のHPは530である。


 そして、思い出してほしい。

 あの忌々しいスキル、『地球人Lv1000』の効果の一つを。

 

 『対魔王攻撃力1000倍』


 これは我に対する攻撃力を1000倍にするスキルである。

 

 もう分かっただろうか?

 例えば我が、1のダメージを受ける攻撃を受けたとする。

 しかし我の場合、『対魔王攻撃力1000倍』が働くため1×1000で1000ダメージ。


 そう、たったの1ダメージ受けただけで我は1.9回死ねるのだ。

 我は今デコピン一発で死ねる貧弱魔王なのだ。


 防御力が働くのならまた違っただろうが『地球人Lv1000』には『魔王防御無視』もあるのでそれも望めない。

 

 これに気付いた時、女神への殺意が湧いてきたものである。


 ついでに言えば今の我は幸運0だ。

 今までは圧倒的最強だったので気にしたことが無かったが、能力値が下がり、天敵だらけの世界になってしまった今、どう作用するかわからない。

 ふとした拍子でダメージを受けたら、死ぬ。


 そんなわけで、今世での親を確認するより何より先にこの世界の情報を集める事にしたのだ。

 『遠見の魔眼』、『看破の魔眼』、『多視の魔眼』などの魔眼を駆使し、一時間程で我周辺の情報や常識、危険情報などををまとめる。

 今はこんなだがこれでも前世は一国の王。

 この手の仕事は得意なのだ。


 我が集めた情報によると、どうやらこの世界は地球というらしく、我はその中の日本という国に住んでいるらしい。

 文化は前世よりはるかに進んでいるようだ。

 空飛ぶ鉄の箱、地を高速で滑る鉄の箱、離れていても通話ができる鉄の箱。

 この世界では鉄の箱が何かと優秀らしい。

 王政が何百年も前に廃止され、民が政治を動かしていると知った時には驚いたものだ。

 通貨は鉱物を使ったものより紙の方が価値が高く、世界には七十二億もの人間が居て、前世では高価だった書物も安価らしい。

 書物の中には様々な世界の魔王についての情報も載っていたので重点的に調べたが、勇者に倒される魔王、というものばかりが出てきて途中で調べるのをやめた。


 そして、この世界の事を調べるにつれて分かったのは、我の生まれた家はごく普通の家だという事だ。

 目覚めた時、部屋が清潔でそこそこ広い部屋に居たのでてっきり裕福な家なのかと思ったのだがこの世界ではこれが平均らしい。

 我の家は三人家族で、我は長男だった。

 

 そして、我が調べた中で一番違和感が際立ったのはダンジョンの存在だ。

 ダンジョン、というのは今から約15年前に突如世界に出現したらしく、ダンジョンの中には様々な魔物と呼ばれる凶暴な生物が居るらしい。それだけなら迷惑なものでしかないが、ダンジョン内からは様々なアイテムが採掘できるという事で、今では一大産業の一つになっているらしい。ちなみに、出現の原因はいまだ分かっていないそうだ。

 おそらくこれがクソ女神の言っていた”調整”という奴だろう。

 

 また、我の両親は共にダンジョンを探索する職業、通称”探索者”らしいのでこれからもかかわることになるかもしれない。

 我に対する女神の嫌がらせが眠っている可能性が高い場所など関わりたくはないが……。


 まぁ、そんなこんなで集めた様々な情報を駆使して何とか生き続ける事6年……。


 我は小学生になった!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る