第27話 水勾配
「何をしておいでなのですか?」
「水勾配をどうやって実際の堀の勾配に反映させたらいいのか考え中」
奥の部屋で机に頬杖をついて雅太夫の事を考えていた時に、今日もトビキリ可愛い涼香殿が部屋に入ってきて聞いている。
そして、淀みなく、もっともらしい事を答えた瞬間だ。
「水勾配……ですか?」
「そう、水は高きより低きに流れるものであろう、今作っている用水路も同じなわけだ。だが、この勾配は強すぎては流れが強くなって用水路が削れて直す手間が多くなる、かと言って、弱いと水が流れなくなる。そこで、凡そ1度ほど全体につけたいのだが、その実際の手法が考え付かなくてこの通り、兄もお手上げといったところだったのだ。かといって専門の測量衆に頼めば驚くほどに高い金子が必要であろうしなあ」
測量を専門にする職業集団がいるのだが、それを頼むと予算が足りなくなる。
「1度……でございますか、それは、どの様な事なのでございますか?」
「まっすぐ水平に100m歩いた先が1.8m下がるくらいでおおよそ1度になる」
「100mで兄上の背丈に拳骨2つ分くらい足した分という事ですね」
かえって、解り辛いわ!でも、その、う~ん。って考えてるところ可愛い!!それ、いい!もっと頂戴!!
「それって、長い距離の水平を取る事が難しいのですね……」
驚いた、ほんとかよ、妹殿。お前すげえな。
「長い距離をいっぺんに水平を取る方法……」
顎に指をあてて虚空を睨む涼香殿。とってもいい!!え?なに?拝んで良い?神々しい!
「鉄砲は如何ですか!!」
ぱあっと表情が明るくなる。良い!その感じ!!
可愛い!!
「兄上?」
「なんだい」
冷静を装い、涼香殿にスッと視線を合わせる。
涼香殿が俺の目を見て何か言いたそうだ。
「……兄上は、……」
「どうした? 涼香殿」
下を見て動かなくなる涼香殿に俺はいつもの様に優しく問いかける。
「何でもございません。お休みなさいませ」
なんだ?そう言うと部屋から出て行ってしまった。
次回、測量。
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