第26話 工事開始
「どうだ、名主殿。この通り線状に亀裂が入るだろう、そうしたら、このでっけえ大槌とタガネで割っていくんだよ。後は繰り返しさ」
水源の岩盤の、川面から3mの、木やら土やら取り去って岩肌を露出させたそのうえで、3日3晩絶えず火を焚いていた岩盤の上で、金堀衆の親方、安兵衛さんはこれからの手順について説明した。
岩を露出させた上で3日間、火を焚いて、水を、大量の水を一気にかけて急冷するとサシモノ固い岩盤の花崗岩も甲高い音を秋の気配が深まってきた広葉樹林の森に響かせて一気に亀裂を生じさせる。
「なるほど、こうやって、割るんですね」
「ああ、ここは穴の中じゃねえからな、崩れてくる心配もねえしな楽なもんだよ」
相変わらずの不愛想な感じだが、不快な感じは全くない安兵衛さんの話に俺は聞き入っていた。
「あんたの方はどうだ?」
ここから、取水口から5km下った、岩盤が無くなる辺りから、俺達は村まで水路を掘ることになっている。
「堀を通す場所の測量をしています。凡そ、3分の1くらい済みました。後は堀の形状を木で型を、堀の断面の方をたくさん作って、その形に掘っていく事にしました」
開口部2m、堀の底部1m、高さ1mの台形形状を取ることにした。
「勾配は1度くらいにしなよ、急だと水流が早くなって堀が削れちまうからな」
1度……どうやんの?
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