第12話 小役人
それから、一週間後、
「どこから通すのか見せて見ろ」
随分と大柄な、この間、松岡で対応した小役人がやってきて、なんて言ったけな……や、やまがたそんな名前だった。
小役人は、その場所に案内しろと言っている。
子分を二人ほど連れて。
俺と佐平次は、早速その水源に案内してやった。
小役人は、
「こりゃあ、随分、遠いな。峰から2つも外れているではないか、どうやって水を通せというんだ」
うすら笑いながら子分と談笑している。というか半分馬鹿にしている。
「はい、それはこの水源から横に堀切を通して水を引き込めば---」
「これだから、素人は……この岩が何かお前答えて見ろ」
水源のすぐそば、沢の両岸を囲む岩を指してそいつは俺達に言って来ている。
「私共はそう言った知識は持ちあわせておりませぬので、分かりかねます」
「知っておるわ。これは花崗岩だ。とても固くて人の手で掘割などは通せぬものだ。見積れと上から言われて来てみれば、もう、はなっから出来ない夢物語だ。お主ら、一体、何の了見でこの我らに無理難題を吹っ掛けて来た。返答次第では、おまえら只ではすまぬぞ」
凄む小役人に俺は、
「それをするのがお役人様のお仕事と心得ておりましたが、出来ぬと申されるのであれば、私の親戚筋の水戸の土木責任者に直接申し開きするだけですが……よろしいでしょうか」
俺は頭を下げたもの、下げた下ではうっすら笑っていた。小役人が……大方、お前をすっ飛ばして水戸の方に話を持て行ったのが気に入ら無いとかの狭い了見であろう、ならば、こちらも同じだ。俺はいとこの友人の父上を親戚筋に仕立て上げた。
「や……やらないとは申してはおらんぞ、我らもいくらでも優秀な者がおるでな、まあ、大方の事は分かった見積もりを水戸の方に回すといたそう」
「ありがたき幸せー」
悔しそうに目線を外してそう言いながら、今までの威勢のいい感じは無くなっていたそいつに俺は大仰にお辞儀をして見せた。
黙ってやれよ小役人。
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