第63話 「1.大塚医院と魚津市」


 優しい探偵〜街の仲間と純愛と〜


  ーーー富山県魚津編❶



 カランコローン


 「あれっ、きむらくん?どうしたのよっ。赤い顔してまた。かぜぇ???」

 ここは大塚内科外科クリニック。受付事務の鳥谷さんである。


 「見てのとおりですよ。昨日から熱が下がらないんだから。死ぬかと思った。日曜だから長井先生かな?」


 「あ、長井先生ね。長井先生もたまに用事で休むから。あの方も忙しいのよ。奥様もねえ。今日は関原先生よ。」


 「あ、ヨシか。ちょっと寝かしてもらえる?」


 「2診はね、点滴してる御婦人がいるからだめよ。ベッドないの。風邪くらいね、シャキッとしなさい。」


 「いや、俺は腎臓悪いからね、風邪はご法度なんだから。じゃあレントゲン室のレントゲン台で寝るわ。」


 「あー、レントゲンね。日曜は、検査やらないからいいわよ。」


 「まあ、とりあえず席に座ってと。よっこらしょ。」


 「あれ?れいくんじゃない?」


 「おおマラソン選手の、ひろくんではないか。」

 大家の息子、大学親友の荒井博文あらいひろふみ君である。


 「久しぶりだね〜。(同時に)」


 「どうしてる?(同時に)」


 「僕は変わらず探偵だよ。」


 「僕は変わらず会社員だよ。」


 「どうしたの?(同時に)」


 「いや、風邪ひいたから。(俺)」


 「おふくろが具合悪いって言うからさ。連れてきたんだよ。今診察室で点滴してる。」


 「そうかあ。奥さんと仲良くラブラブらしいね。この愛妻家!今度は愛妻家みた?映画よ。トヨエツの。泣くからね。」


 「知らない。恋妻家宮本は見た。」


 「あ!あれも名作。ひろくんは良くドラマ見てるからね。『姉さん事件です』とか、なかなか知らないフレーズ知ってるよね。じゃあ、俺、寝るから。ラインまたしてよ。宜しく。」

 僕はレントゲン室の検査台の上に横になる。ヒンヤリと冷たい。熱感あるから気持ちよかった。

 プルルプルルプルルプルルプルル。


 「あっ。桃介?昨日電話無かったけど、会えた?どうだった?」


 「あ、すいません。うまくいきました!大知さんの思い出の場所は『富山県魚津とやまけんうおづ水族館』です。間違いありません。富山県には30数年前にあった水族館は1つだけですから。蜃気楼しんきろうが見える街も魚津市です!」


 「は?魚津市?蜃気楼って何だっけ??あ、富山県の魚津ね……ん?!桃介!!そうか!よくやった!遂に見つけたんだな!ありがとう!」

 私はことの理解に時間がかかったのである。


 「彩花さんにも電話しとけよ。魚津市はな、上越市に近いよ。あと、昔、教員やってた時に国語の鳥取夏実とっとりなつみ先生が確か魚津市出身だったよ。」



 「先生、すごくないですか?僕。」


 「うむ。今回は褒めようではないか。僕の教育方針は、『褒めて伸ばす』だからな。」



 「あざーす。哲さんは、めっちゃいい人でしたよう!YO、YO、YO!ワタシガ、ミツケタ、トヤマケーン、!ホントはハナチャンカモン。」


 「あ。ラップか。波奈ちゃんが大活躍だったんだね。了解。まあ、ゆっくり日曜過ごして帰っておいでよなもし。俺はヨシに受診して、抗生剤もらうよ。じゃあな。」


 ガチャ。

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