第61話 「12.彼方の京都へ」

 優しい探偵〜街の仲間と純愛と〜

  ーーー京都編・再開⑫


 朝起きるとそこは探偵事務所である。しかし、話は急展開しているので、説明文になる。


 京都で、勇吾郎さんから「大知には、豊彦との楽しい思い出の場所がある」という情報を得た僕らは、「大知は果たして何処に今いるのか?」それを突き止めるのに躍起になっていた。大塚に帰郷するや否や、あちこちに連絡をした。

 まずは、彩花さんに報告。そして、金沢の大知の近隣のやよいさん、京都の原木さん、京都の奈良接骨院である。

 やよいさん、原木さんからは、特には新たな得られる情報はなかったが、奈良接骨院の奈良先生から、重要な情報源を得た。

 



 「探偵さん、久しぶりです。実はあのあとね、中村旅館に居た料理人の男がね、ひょっこり顔を出したんですよ。腰が痛いからって。」


 「えっ?連絡先わかりますか?」


 「はいはい、カルテはもともとありましたからね。かなり昔にぎっくり腰でかかりましたね。私も忘れていました。いま、携帯番号と住所わかりますよ。」


 その男は、本条哲ほんじょうてつと言って、40代の調理師で、中村旅館の料理番だった。僕は、電話をかけ、事情を話すと、なかなか用心深い人間で「会ってみて信用できたら、話す。」そう言った。


 僕は、週末の土曜日に(本条さんの休日の夜)京都まで訪ねて、会うためのアポイントをとったのである。


 そして、土曜日の早朝6時になる。

 朝、起きるとそこは、いつもの探偵事務所である。


 「あれっ?頭いて〜。熱っぽいなあ。」

 僕が体温を測ると38.5分をさしていた。


 「風邪ひいた。今日の夜に本条哲さんと、俺はアポイントをとっているのに、まずいではないか。やばいよお。」僕は考えこんでしまった。





 「そうだ!おい!桃介起きろ!」

 奥の部屋に行きホストの仕事帰りで寝ている桃介を叩き起こした。


 「は、はい?ど、どうしましたあ〜。むにゃむにゃ。」


 「熱!熱だ!お前、今日、京都に一人で行け。」


 「誰が熱?えっ?はっ!?僕?……。」


 「ごめん、用事あった?ホストは、休めばいいだろう?」


 「いや、僕ね、波奈はなちゃんと映画見る約束してるんですよ。勘弁してくださいよ。今回はちょっとお。」



 「そうなあ。『人の恋路を邪魔するやつは馬に蹴られて死んでしまえ。』っていう言葉があるからなあ、そう言われたら困るな。」

 僕は、少し諦めかけ、哲さんに電話をかけて丁重に謝るしかないとおもった。しかしだ。


 「そうだ!今日土曜日だろ?その波奈ちゃんは土日休みかな。そしたら、桃介は、波奈ちゃんと二人で京都に行ってこいよ。な?それなら、いいだろう。旅費は持つからさ。ね?ね?」


 「う〜ん。確かにそれはいい理由です。波奈ちゃんと旅行に行くチャンスもなかなか来ないような気はするし。波奈ちゃん、土日休みです。」


 「だろ?じゃあ、波奈ちゃんに電話、電話。善は急げ。」


 「じゃあ、前に美幸と行った京都駅のオシャレなホステルをツイン個室で予約しとくからさ。吉田桃介で取るからな。」


 「う〜ん。木村さんは、いつもながら、恐ろしいまでの行動力ですよね。せっかちだから、行動早い。みたいな?」


「電話!」


プルルルルプルルルルプルルルルプルルルル

プルルルルプルルルル、ガチャ。


 「えっ?どうしたの?」


 「波奈ちゃん、事件です。」


 「えー何?桃介さんの分かりにくいジョーク?」


 「ははは。ドラマのHOTELは、冒頭に『ねえさん事件です。』って言うんですよ。知らないよねえ。」

 

 「いつのドラマですか?私生まれてます?(笑)。」


 「桃介、じゃ、日本の彼方、京都にいってらっしゃい!お願いね。」




 


 パンパカパン、パンパカパンパン、ジャカジャジャカジャ~ン!!


 「日本の彼方〜、きょうとおふう〜へ、運命背負い、いま〜飛びぃた〜つ〜、必ずここへ〜帰ってくるとお〜♫」(宇宙戦艦ヤ○トのテーマで)












 

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