第58話 「3.懐かしきアルバム」
優しい探偵〜街の仲間と純愛と〜
ーーー金沢編❸
大知の部屋は、6畳程の畳部屋だった。香が窓を開けたから、冷たい空気が入ってきた。
「ほら。あった。」
香が押し入れから、埃が被ったA4カバー冊子のアルバムを探し出し、重ねて私の前に出した。
「ありがとうございます。では拝見します。ふーん。小学生くらいのっと。赤ちゃん、赤ちゃん、赤ちゃん。ふーん。」
僕は3冊目に入る。
「あ、大きくなったなあ。この写真は、桜と池がキレイ。あら、遊具で遊ぶ子供。」
「それ、大知です。」
お父さんが言う。
「何かくせ毛のこの子ですか?髪の毛がはねてる。目がぱっちり。」
「そう。そこは高岡市にある古城公園です。水濠公園って言われてます。ハクチョウも来ますよ。」
「この一緒に映ってる小柄な女の子は?」
「近所のやよいちゃんです。」
「女の子かあ。」
「活発な可愛らしい女の子でしたよ。確か留学したらしい。今もよく見かけますね。挨拶をしっかりする礼儀正しい子ですよ。」
「へー。聞き込みしようかな。で、この写真は遊園地ですか?」
「あ、富山の遊園地。今ないんじゃないかな。」
「ふむー。遊園地が無いのに、移り住むとは、思いにくい。男の子がいるけど、これ誰ですか?豊彦ではない。背は高いね。」
「う〜ん、ダレだったかなあ。覚えてません。香は、知ってる?」
「あ?写真の顔が小さくてわからん。私も忘れた。」
「あら、これ、お姉さんでは?」
「あ〜。私も行ったんだね〜。」
(おーい。あなた自身なんだから…)(心の声)
「この写真は、カニ食べてる。うっまそう!ズワイガニってやつですか?これは家族しかいませんね。」
「あ。それは金沢漁港。今は加能ガニって名前で呼んでいますね。」
一通り見終えて僕らは、とりあえず帰ることにした。やよいちゃんは、訪ねたほうがいいかもしれない。桃介も戻り玄関先になる。
「駅前の私の店に夜、おいでよ。安くするからさ。」香が僕を見つめる。
「あ、お姉さんは、夜のお仕事ですか。」
「指名料まけとくよ。」
「はい。行きますよね、木村さん。」
ニコニコしながら桃介が言った。
「えっ。はあ。まあ。」
『あったまテカテカ〜、むにゃむにゃなんと〜か。それがどうし〜た、ぼくドラ○もん〜♫』
意味は、わからないが、頭にそんなメロディがこだまする木村であった。なかなかに出費ばかりである。
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