第57話 「2.神社の近くの生家」

 優しい探偵〜街の仲間と純愛と〜

  ーーー金沢編❷


 高木大知の生家は、金沢駅から、徒歩15分程。大通りをまっすぐ行って路地に入った住宅街にあった。ある神社を目印に言われ、僕らは来たのである。桃介と男二人旅になる。


 神社の境内けいだいに入る。神社は小さなものだったが高い木々に囲まれている。木々は、赤、オレンジ、黄色の鮮やかな色とりどりに染まる幻想美である。澄んだ空気、神秘的な静寂の中で、僕らはしばしうっとりしていた。

 


 高木勲たかぎいさおさん75歳。大知のお父さんは、元小学校の校長先生で、今は家庭菜園などしながら悠々自適な生活を送っているとか。茶色のアーガイル柄のカーディガンが似合う。お父さんは続けて穏やかに話すのだ。

 

 「大知はね、小さい頃から、元々は大人しい子でね。兄の悠地ゆうじが気難しい子で、余り親しく兄らしくしない。姉はおてんばで自分勝手。一人遊びばかりしていましたよ」


 「なるほど。私も三兄弟末っ子ですが、似てますね」



 「そんな子がね、4年生の時に転校してきた中村君?豊ちゃんって言ってました、彼と仲良くなりました。近くのアパートに住んでいて、通学班が同じでした。彼は一人っ子だったけど、面倒見が良かったと思います」


 「ははあ。大知さんは典型的な弟タイプなんですかね」



 「あとお父さんの重彦さんね、覚えてますよ。子会社のスーパーに転勤してきたみたいに言ってたかなあ。何があったのか、福岡から遠く金沢に、転勤だったみたいで」


 「重彦さんについては、私も金沢で退職してから京都に来た、という事しか知りませんでしたよ。なるほど、重彦さんは元は、福岡。そこから金沢だったんですね。随分、豊彦君も点々としたなあ」


 「大知は、豊彦君を兄みたいに考えて接してたんじゃないですかね。近くに神社があったでしょう。豊ちゃんと虫取りしてくる、といって出かけた記憶が、何か鮮明にあります」


 「ああ。あの神社ですか」

 

 「この間、連絡を貰いまして、一気に思い出しました。なんせ30年前ですからね。すっかり記憶の奥に眠ってましたね、何もかも」


 「お〜い、かおり〜!お茶出しなさいよ!」


 「はいはーい」


 「あ」

 奥から、色白な艶っぽい美人が出てきた、少しだけ美幸に雰囲気似てる。30代にしか見えないが、話に聞く大知の2歳年上、44歳の姉である。えんじ色のカーディガンがおしゃれに似合う気品がある。



 「木村さん、見とれないで下さい」

 黙っていた桃介がはじめて話す。


 「お前な。あ、お綺麗なお姉様で」


 「ありがとう、木村さんでしたっけ?独身?」


 「はあ。まあ」


 「木村さんは彼女居ますよ」


 「へー」


 「僕は、彼女募集中です」

 なぜか桃介がアピールする。


 (あら、桃介だって彼女いるんじゃなかったかな。金沢でお姉さん口説いてどうするんだろ、年上好みなんだっけ。彼特有ジョークか…)


 「あなた何歳いくつ?」


 「28歳看護師です」  


 「ふ〜ん、ナースマンか」


 「香、お前は、大知と連絡した最後はいつだ?」勲さんが、聞く。


 「そだね。夏?」

 

 「そうか。大知は、連絡するんだな、お前には」  


 「私がかけたんだよ!」

 

 「何で?」


 「東京行きたいから?泊めてもらおうかと思って?」

 

 「コロナなのに東京行ったんだったかな?」

 

 「やめた〜。ライブ中止になったし?」

 

 「そうだよな。お父さん、大輔を預かった覚えないからな」

 

 「ママ〜」 

 奥から小さな少年が出てきた。低学年生かな。

 「大ちゃん、静かにしてっ」

 香は、キッと軽く睨んだ。

 「え、なんでよお」

 「大ちゃん、お兄ちゃんと遊ぶか?」

 「この子、大輔だいすけよ」

 桃介が、奥の部屋に大輔君を連れて行ってしまう。(アイツ子供好きだったかな)


 「で、聞きたいのがですね、『思い出の場所にいるのではないか?』彩花さんがそう言ってるんですよね。何か思い出のアルバム写真とかありますか?例えば、大知さんと豊彦さんが一緒に写ってるやつとか?」

 僕は、お姉さん、そして勲さんにやっとこさ、本題を切り出したのである。


 「1回は……1回は、豊彦君の家族と旅行に行った記憶があります。何処かは覚えていませんが。大知は、大人しい割に友達が多い子でしたからね。私も余り普段に話はしない代わりに、よく近場ですが、旅行に連れて出かけていましたよ」懐かしげに勲さんが話す。

 

 「家族ぐるみで旅行ですか。いいなあ。僕は無いなあ」


 「豊ちゃん以外にも、行きましたよ。しかし、アルバムか。う〜ん。写真は取るのはだいたい家内です」

 

 「アルバムあるかなー。もうアルバムなんて何十年も見てないからねー」

 香は、発言がいちいちサバサバしている。


 「お父さん、大知の部屋にアルバムあるんじゃない?」


 「わかんないな。お母さんが居ないから。今、うちのが入院してましてね」


 「あ、そうでしたか。それはご心配ですね」


 「そっか。考えてみたら、私、豊彦ってわかるかも。ひょろっとした背の高い子じゃない?」


 「はいはい。写真あります。これ。」

 僕は、中村旅館から盗み出したアルバムから撮影した写真を見せた。


 「やっぱり。私、見たことあるよ、この子」


 「大知さんのアルバムに、豊彦さんが写ってる写真は、ないですかね?京都で見た豊彦さんのアルバムは、友達と写ってる写真が皆無で、皆家族3人だけのスリーショットでしたから、手がかりがなくて」


 「分かった。ちょっと大知の部屋に行こ」


 僕と、香さん、勲さんは、階段を上がり、大知の部屋に移動したのである。






(長いかなあ。生家の会話は続くのである。カ〜イワは、つづく〜よ〜♫、ど〜こまでも〜♫野を超え山超え〜♫)








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