第52話 「7・ガチャガチャ大好き」

 桃介の猫探し(家出猫を探せ)ーーー❼ 


 その日は快晴だった。空気が気持ち良かった。街路樹は紅葉している。植物が発するマイナスオーラなのか空気が澄んで気持ち良かった。

 僕らは、南口から歩いて10分のペットショップに来ていた。「ニコニコ大塚わんにゃん本舗」という文字の白い看板、黄色のラインで縁取られていて、周りに着いた電球が昼間からキラキラしていた。自動ドアの左側にガチャガチャが2段で6台置いてある。

 「ちょっと待てよ。」 


 「はい?どうしました?トイレ?」


 「いや、ガチャガチャしてから。」


 「はあ、木村さん好きですよね。大人なのにガチャガチャばっかりしてますね。」


 「美幸にあげるんだよ。」

 1枚、2枚、100円玉を入れる。今のガチャガチャは200円は安い。

 ガタガタガタ……コロン。

 可愛らしい猫のふわふわソフビである。


 「おっ、三毛猫か。ホームズだな。」


 「可愛いっすね。」

 

 「桃介もやる?おごろか?」


 「いえ、いいです、いや、彼女にあげよっかな……。」


 「はっ?お前彼女いたの?初耳だが。」


 「いや、大ぴらに言うものでもないっすからね。」


 「おい、このガチャガチャ前のプライベート空間の何処が大っぴらなんだよ、まあ、いいや。」そんな会話をしてから中に入った。


 


 ウィーーーーン(自動ドア)


 「いらっしゃいまっせえ!!」

 大福みたいにまん丸で、お雛様みたいな可愛らしい少女に声をかけられた。

 

 「あ、お蕎麦好きのみかんちゃんだよね、久しぶり。あのさ、聞き込みなんだ。最近さ、アメリカンショートヘアを飼い始めたなんて人を聞かなかったかな。まあたくさん居るかな。餌を買いに来た人とかさ。怪しい人、居なかったかなあ?」


 「え〜〜〜。わかんないですぅ。他の人に聞いてみます。みちよさ〜ん。」

 奥で話しこんでいる。


 「あ〜。おまたせしました、居ましたよ。怪しいアメリカンショートヘアを飼い始めた人。」

 奥から俺と同年代と思われるしっかりとした分別のある何か大人の雰囲気のある女性が出てきた。


 「えっ?どんなふうに怪しい?」


 「服装?」


 「どんな?」


 「黒の革ジャンで。オレンジトレーナー……黒の革ジャンに……小太りで。中年の男性ですかね。」


 「黄色で小太りかあ。ジャイアンですね。先生。」桃介が口を出した。


 「確かに怪しい服装?ですかね!?」


 「あ、なんか餌が何が1番いいのかって。あと安くてって。グイグイ聞いてきて。かなり圧迫感あったんで、覚えてます。10日くらい前かなあ。とりあえず、コレをって保存効くタイプのを紹介しました。」


 「あ〜。ビンゴだなあ。」


 「木村さん、やりましたね!解決間近。」


 こうして、僕らのペットショップでの、張り込み生活が始まる。東雲さんには直ぐに報告した。東雲さんは大変に喜んだのは言うまでもない。

 僕は実は、1台白いワゴン型の軽自動車を所有していた。事務所から離れた辺鄙へんぴな駐車場に車はある。しかし所有は私だが、運転は桃介しかしない。何故かと言うと俺が運転適性が無いからである。



 僕らは駐車場に行き、久々に埃の被った車に乗り込み、店長に許可を取り、ペットショップの前に路駐して、しばらく生活したのである。






 

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