第49話 「美幸は3姉妹」

 猫探しの途中だが、この間の美幸の妹の美結みゆの話に脱線する。


 電話である。

 「れいさん、週末、泊まりに来るよね?」


 「はあ。」   


 「土曜日、妹が朝から来て、まだ居るかもだけどいい?」


 「あ、妹?学生の美結みゆちゃん?」


 「美結。」


 「えっ。良いけど。美結ちゃんは夕方には帰る?泊まりか?そしたら俺は泊まらない方がいいのだろ?」


 「いや、美結は気にしないから、だいじょうぶだよ。多分、夕ご飯食べて帰るかも。」


 「桃介も、じゃ連れて行くよ。考えて見たら同じ看護師じゃないか。」


 「木村さん、すいません。その日はデートだから、行けません。」

 電話する横から桃介が口をだした。


 「そうか。じゃあ、俺一人で行く。あ。美幸?聞こえた?桃介は行かないって。」


 「そうなんだあ。」


 しかし、姉妹の家に独りで行くのは気が引けるのである。妹は話には、聞いていたが、初対面である。


 美幸の聞くところよれば・・・朝比奈美結あさひなみゆは看護専門学校の2年生で、美幸とは6歳年の離れた妹、現在22歳である。高校卒業後、最初は大阪でフリーター生活していたらしい。今は熊本の御両親の仕送りをもらいながら、埼玉県の朝霞で一人暮らし。持病の喘息があり、度々発作を起こすため、美幸は心配で仕方ないのだ。今の電話の通り、土曜日朝から美幸宅に遊びにくるとか。


 しかし、考えてみたら、俺は美幸の細かな話を余りしていなかったのである。

 

 恋人の美幸の話しである。短大福祉学部卒、100床程度の民間病院で、医療事務をしていている。3人姉妹の長女で、父親は、一流大卒の予備校講師で持病ある58歳、母はパート看護職員53歳なのである。姉妹が2人進学だし、ご両親もかなりご苦労なのだなあ。末っ子の「美咲」も現在は高3だし、そうなると3人進学である。


 

 美幸の家ーーーーーーーー

 「いらっしゃい。」

 いつもの1DKワンルームである。玄関を入るとキッチンある小さい部屋、奥の部屋は、やや広めの美幸の生活スペースだ。全面、少し寒々しいがフローリングである。

 

 キッチンでは、美幸が料理の身支度をしていた。美幸は袖の長い水色のセーターに茶色いスカート。袖を少しまくって、包丁を握っていた。


 「刺さないでね。」

 

 「刺そっか?(笑)」


 「おいおい、なんでよ。」


 「待ってて。(ニッコリ)」


 部屋を見ると、以前あった小さいちゃぶ台が、3人が食事するのに丁度良い大きなテーブルに変わっていた。

 美幸は、最近、低めの四角の木目デザインのオシャレなテーブルを買っていた。美結がちょこんと座っていた。

 

 小顔で体格も華奢だ。茶髪は、美幸より明るい。服装は身体の曲線美をやたら強調するような、ぴったりした長めの淡いピンクのセーターに、スキニージーンズだった。


 美幸と比べるからなのか、つい見つめてしまう。同じく色白、目が美幸以上に黒目がち。美結の唇の方が小さいが、流石に姉妹は似てる。しかし美幸の妹にしては、少し大胆かなあ。若い女の子は、よくわからない。どちらにしても美人姉妹に驚いていた。


 「はじめまして、こ、こんちは。」

 「はじめまして、妹の美結です。」

 お互いに初対面で、ぎこち無く挨拶した。


 「出来たよ〜〜!!」美幸が、沸騰してグツグツした「もつ鍋」の入った土鍋をそ〜っと、運んでくる。


 さらには、美結も手伝い運んだが、レンジでチンした唐揚げ。あとは、レタスや、ミニトマト、きゅうり、玉ねぎスライス、オクラ、の盛りだくさんサラダが本日の会のメインのようである。

 酒もあるのかな。

 

 さあ、食べようかと言う時、「ちょっとごめん。」

 「どしたの?」

 「お花摘みに。」

 「ええ。ええ。どぞどぞ。」

 美幸は、トイレに立った。


 「れいさんって、お姉ちゃんみたいな女性がタイプなんや?」急に美結が話しかけてきた。


 「まあね。あ、大阪弁なの?」


 「大阪いたら、大阪弁みたいになっちゃった。」


 「そういうもんなんだねえ。(淡々)」


 「私、マヨネーズとってくる〜。」


 美結が立つと、ジーンズのお尻が何か随分と丸くプリンとしている。そんなデザインなんだろうな、そう思うやいなや美結が振り返る。

 

 「お尻、きれいでしょ。」

 

 「はっ!?」

 

 「ニッコリ。」

 

 「ちょっと…。全く変なだなあ。」

 (なんで考えたこと、わかったんだろ。)

 僕は急に汗をかく。


 美幸がトイレから出てきて、マヨネーズを取って戻る美結と重なる。

 

 「ドレッシングあるじゃん。」


 「そらお姉ちゃん、サラダは、マヨネーズやろ。」


  3人で席に着く。

 「二人は、今日何してたの?」


 「ネットみたり、ごろごろしてたかなあ。」美結


 「二人で?」


 「二人で買い物には行ったよ。スーパーに。」美幸


 「あ、そう。」

 

 「あれかな、朝霞から学校は近いの?」


 「電車で15分くらい?」


 「そうなんだ。病院に実習とか行くんでしょう?」


 「そうそう、れいさんって、よく知ってるね!」


 「だって、桃介が看護師だから。学生時代によく悩みを聞いたよ。だいたい教務の先生か、実習先の教えるナースが怖いんでしょ。」


 「受けるんやけど。(笑)」


 「まあ、なんの世界もプロは厳しいよな。」


 もつ鍋の沸騰がやや収まる。

 

 「あ、そっか。ビール持ってくるね。」

  美幸がまたキッチンの冷蔵庫に席をたつ。

 美結がじっと見つめる。

 「え。どした?」

 「れいさんって目が大きいね。」

 「どっちがよ。美結ちゃんはめちゃくちゃ目がぱっちりだぞ。カラコンか?」


 「茶色のやつや。」


 「あ、そう。俺もコンタクトやな。」


 なかなかに、美幸と美結と僕という、美人姉妹と探偵の化学反応は、どうなるのか、実に気になるところだが、本題から逸れすぎるから、また続きはいつかにしよう。

 

 来月の5日ではなく、いつかである。今話は、たまにする寄り道である。ユー○ールであ~る。美結ちゃんも嫌いではない。



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