第3話 「優しい探偵だ」
改めて僕の紹介になる。
4大卒業後、私立高校社会科教諭として勤務。35歳まで12年働いた。仕事はソツなくこなした。
しかし出会いに恵まれず、ことごとく成就しない。良き伴侶も見つからないまま13年目に入ったそんな時だった。
小学生時代の恩師・中山先生が亡くなった知らせがあった。そして、僕はようやく思い出した。
中山先生が低学年の頃に読み聞かせてくれた江戸川乱歩の「時計塔の秘密」である。
当時、僕は、
そんな中、みんなの声に応えた中山先生が、わかり易い児童文学ではなく、ややもするとおどろおどろしい探偵小説を優しく噛み砕きながら、読み聞かせをしてくれたのである。懐かしい想い出だ。
当時の僕は、「何か謎や事件はないか?」なんて不謹慎な事を夢想しているような、ヘンテコリンな少年だった。小学生に事件など起きるわけもない。
いや1つだけあった。同級生に差出人不明のラブレターが届いたのである。さっそく僕をリーダーに数人が徒党を組み、告白を受けた友人の承諾は得て調査に乗り出す。今思えば、全くデリカシーの無いバカタレである。
さらに僕は、中学高校と「シャーロックホームズ」や「三毛猫ホームズシリーズ」も大好きになる。さらに探偵や推理に夢中になっていったのである。
そんな思い出が次々と思い起こされた時、僕は自分の何か運命を感じ、探偵になる夢を実現してみることにしたのである。
考えてみたら、蓄えもまあまあ、ある。また塾講師なら直ぐに復帰もできるだろう。一念発起して、探偵業を開業した。
教員時3〜4年目くらいの時に受けもった1年生の生徒が、
ずっとなぜか師弟関係があり、悩みは度々聞いていた。彼は民間病院で4年ほど働き、本来なら中堅になり、やり甲斐が出る頃だったはず。しかし、雇われナースに嫌気をさしていた。
そこに乗じて誘った。年はちょうど10年離れているが、彼とはなぜかソリが合う。
まあ、全く先の見通しなく、とりあえず俺は蓄えを切り崩した。まずは住まいだ。
住居兼、事務所は、たまたま大学の親友の
桃介は、誠実さが売りのなかなかのイケメンで探偵業の助手をやりながら、週に3日程は、ホストをやっている。
広告宣伝費がバカにかかった。ビラ配りもした。ホームページも作った。
しかし桃介がホスト業で、お金を入れてくれて何とか経営できているのである。いつまで続くのやら。
確かこんな言葉あったよね。
「俺は街のプラ○ベートアイ探偵だ」
いうなら、「僕は街のプライベート愛?」
ってホストかよっ。いやいや、自分で言うのも何だけど、僕は単なる街の「やさしい探偵」だ。
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