第36話 「9.不法侵入」

 優しい探偵〜街の仲間と純愛と〜

 ーーー京都編❾




 夜も更けてきた。街は静けさを帯びている。街ゆく人もまばらだ。昼間の暑さは、落ち着いたが何か蒸している。

 バスで来たから、どうやってビジネスホテルのある京都駅前に行けばいいかわからないのである。


 しかし今、1番気になるのは実は、最近、タプタプしてきたお腹である。夜ご飯はヘルシーに行きたいところだ。


 まあしかし、そんな事は言っていられない。今の状況を整理しよう。俺もわかったようで、すこし混乱している。

 

 中村凛から見ての記載になる。凛の父親は中村豊彦であり、亡くなっている。母親は、若いのに古風な名前の雅美。おじいちゃんは、豊彦と紛らわしい重彦である。おばあちゃんは、操だ。凛から見たらひいおじいちゃん、ひいおばあちゃんの操の父母は亡くなっている。


 豊彦妻の雅美、重彦の夫妻(妻、操)は、夜逃げで、行方不明である。大知にしろ、やたら行方不明者が多いのである。



 大知と豊彦が繋がる。大知が失踪した理由は、わからないが、友人の娘さんに手を出した事は、とりあえず妻には知られたくかったのだろう。なんとなく推測できる。


 さて、凛と大知の関係性を探る目的の旅だった。あとは、大知を探すのが目的である。大知を探しだしたら、彩花と話し合わせるのが良いだろう。しかし、まさか凛のとこに来ていないよな?大知は、まさか生きてるよな?


 「そうだ!」考えたら、新京極商店街にまだ残存する中村旅館の外観くらいは、見てから帰ろう。 

 そう思い、新京極商店街に向かった。お土産屋さんと洋服屋の間の小道を中にはいった所らしい。

 旅館に着いた。思ったように民家と変わらず小さく、二階建てだ。看板が目につく。もちろんに灯りはともっていない。照明付きの看板に、障子の枠に使われるような細い木が、看板の周りにオシャレなデザイン的に囲んでいる。

 外観は意外と綺麗である。倒産したとは思いにくい真新しさ。しかし、月に照らされた外壁は、よく見ると、かなりくたびれた年輪感じる木造建築だった。


 門は開いていて、建物を囲む隙間の庭をぐるりと歩いてみた。草がぼうぼうと生えている。踏みつぶしながら歩いた。


 おや?


 「裏口がひっそりある。」


 僕は、扉のノブをガチャガチャ回してみた。

 「あ、やはり鍵がかかっているな。」


 何回か、ガチャガチャ回したその時だった。

 ガチリ。

 音がする。


 「あれ!?」


 ドアが空いた。入ると、不法侵入になってしまうなあ……。

 奈良先生に今から「旅館が誰の所有財産になっているか。」聞いたほうがいいかなあ。迷ったがもう夜だし、人も通らない。中へ思いきって、僕は、忍び込んだ。鼓動が鳴る。僕は、お守りのフワフワ猫ちゃんボールをギュッと握りしめたのである。



 ※この作品はフィクションです。あらゆる登場する人物、団体、すべては、架空であります。またあらゆる犯罪、非道徳な行いを勧めるものではありません。コンプライアンスには重々、配慮しています。空想のお話です。




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