第35話 「8.友情の文通の日々」
優しい探偵〜街の仲間と純愛と〜
ーーー京都編➑
続きである。
「豊彦君に、金沢の友人と文通が続いてる話を聞いたことがある。」
(奈良先生の話より抜粋)
「文通相手が、大知さんならば、豊彦さんは、金沢に居た幼少期に、高木大知さんと出会っていた可能性がありますね」
「確かに。手紙の相手が大知さんかは、わかりませんけどね」
「しかし仮に、豊彦さんと大知さんが友達だったとして、そんな古くから長く繋がっているのに、なぜ文通に留まるような関係だったんでしょうね…」
「ああ、豊彦はね、父親に似てデリケートな子だから…」
「というのは?」
「お父さんの重彦は金沢で精神疾患になり退職して、豊彦は子供ながらに、一緒に逃げるように京都に来たわけでしょう」
「あ、重彦さんは、メンタル疾患だったんですか…。それで金沢から京都に越して来たんですね。重彦さんも苦労していたんですね」
「そうそう。あと、豊彦君はね、何かほかの人と自分は違う、というかなあ…。何か気持ちに暗いような部分、雰囲気がありましたかね」
「う〜ん。なるほど。微妙な気持ちが手紙にお互いなるのかな…」
「その大知さんという方は、お仕事は何をされています?」
「あ、大手町の大企業のエリートサラリーマンですよ」
「そしたらね。尚更にでしょう。何か劣等感みたいなもので、親しいながらも連絡を頻繁に取るような、友人関係になりにくかったんじゃないですかねえ」
「う〜ん、劣等感。僕も高校教諭辞めてから、何か自分の学生時代の同窓会に行く感じがちょっとしない。まっとうな仕事している人から見たら、探偵業なんて商売は、理解されにくいような気がしますから…。何か豊彦さんの気持ち、少しわかる気がします」
「まあ実際のところはわかりませんが、文通とはいえ、この歳までやりとりが続く関係性ということで言えば深い関係性でしょうね。」
「凛ちゃんが話していたんですよ。大知さんは私達にとって大切な人って。だから、大知さんがお父さんの豊彦さんの親友?!だから、大切な人なんじゃないのかなあと」
「それなら、分かりますねえ。やっぱり豊彦君の手紙の相手は、大知さんなのですかねえ」
「あ、文通か…」
「どうしました??」
「そうか!考えてみたら、文通なら、手紙が大知さんの自宅に今まで、届いているはずですよ!ご家族に聞いてみよう」
「ほうほう。確かに確かに。大知さんのご家族ならば」
プルルルプルルルプルルルプルルル
ガチャ
「彩花さん?」
「はい、彩花です」
「今、京都です。何かとわかりかけています。それで、これまで、大知さんに来ている手紙で、京都から来ている手紙がないか探してくださいませんか?」
「えっ?京都から?確かに一度、結婚したばかりの頃に、京都からの手紙が郵便ポストに来たの見たことあります」
彩花が驚いたような口調で言う。
「それです!その手紙を探しておいてください。大知さんは、その手紙については、何と?」
「友達からだと言っていました。男性の名前でしたから、気にもしませんでしたが。何か?」
「いや、その手紙を見たいので、私が東京に帰ったら、見せてください。たぶん差出人は中村豊彦さんという方です」
「わかりました!探します。今、ちょうどパートが終わり帰ったところです。良かった」
彩花の心の何か安堵するような気持ちが感じられる。
「では」ガチャ
『やはり予想通りだった!!京都から手紙が来ていたのだ!』
こうして奈良先生から始まり、重大な、中村豊彦、高木大知、中村凛の3角関係が発覚?!、確定気味になるのである。
しかしなあ、重彦さん、豊彦さん、大知さん、彩花さん、俺、美幸、桃介、みんな人生いろいろだよなあ。重彦さんや豊彦さんは随分と、苦労してきたんだろう…。
僕は、しみじみとした気持ちになりながら、自分の手をじっとみつめたのである。
「人生いろいろ男もいろいろ。女だっていろいろ咲き乱れるわ♪」…だな。
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