第23話 「情報屋カトウとの出会い」

 「プルルル。プルルル。プルルル。プルルル。プルルル。プルルル。プルルル。」

 静寂の電話口、遠い意識の向こう側へ叫ぶように、スマホのベル音は鳴り続ける。


 7回目のベルが鳴ったその時だった。静寂を打ち破るように男が受話器を取った。

 「ガチャ……。」


 「カトウか?」


 「ええ…。」


 電話口の男性は静かに、しかし、やや明るめの声で言う。


 「調べて欲しいことがある。」








 「……。」







 「ある人の住所が知りたい。」




















 「………がってん承知。」




 「(笑)なんだそれ!」






 カトウシンタと知り合ったのはいつだったか。ある平日の冬の夜だった。


 木枯らしが舞い、風が吹き付けるような深夜21時を回った頃、いきなりに事務所に、彼が売り込みに来たのだ。



 彼がドアを開けた。「ガタッ」


 風貌は、黒のジャケット、スラックス、ワイシャツ、ナイキのキャップを深めに被っていた。


 彼は「カトウ」と苗字だけ名乗った。雰囲気は学生にしか見えない。キャップの下は、何か童顔色白な青年で血色は良かった。


 話すには、「情報収集のプロ」だという。親の仕事の関係で小さい頃からその道に卓越してしまったようで、ほどほどにお金をもらえたら、秘密厳守で、確実に仕事をするという。


 桃介、そしてカトウを連れて、夜の「バー」に繰り出し、落ち着いて、話をきいた。    

 「信用はできる。」


 1回目は、お試し「タダ」で、仕事をする条件付き。彼を信用してみることにした。


 それからいくつか仕事を頼んだ。カトウの仕事は実に正確かつスピーディー。かなりいろいろな探偵や組織から仕事をもらっているようだった。


 その道のヤバイ人に巻き込まれるのは嫌だ。しかしカトウは、そのあたりは熟知しているようだった。



 連絡をこちらからするときは、「7回だけベルを、鳴らしてくれ。」そう言われた。


 7回鳴らして出なければ切るようにと。暗号なんだろう。


 回数を重ねるうちに、なかなかに静かなユーモアのある青年だとわかる。冗句好き。俺にだけかはわからない。






 そして、今回の話は、こうだった。


 俺は凛のキャバクラ「Déesse de la mer」の場所を教えた。カトウは、店の管理PCにアクセスして住所を取り出すと。


 カトウの言うにはこうだ。


 あのキャバクラは、大手グループらしく、管理はしっかりとされているはず。


 給与は出ているから間違いなくPCに「凛の個人情報」はデータ化されているだろう。


 そこに何らかしてアクセスするという。

兎に角は、少なくとも数日で場所を突き止めると。

 支払いはいつもの「バー」で、情報と現金とで同時に相互が引き渡す約束だ。






 暫く、彼の連絡をまった。


 2日後にベルが鳴る。


 やはり夜が更けた21時過ぎだ。


 いつもの「バー」に出向くと、カウンターにはいつものようにバーテンダーの「りょう」がいた。静かに目で挨拶する、カウンターに座ると間もなカトウが来た。黒い統一感ある服装だ。


 お互いに、無言で、金を引き渡し「メモ」をもらう。





 その小さな紙には、


 「文京区小石川○ー12ー202セントラルコーポ 中村凛 」とあった。


 丸ノ内線の「茗荷谷」から歩いて徒歩12分。


 意外なほど、俺たちの近くに住んでいた。


 キャバクラが大手町だからナルホドである。


 やはり住所を最初に尾行しなかったのは「損失」だったな。勿体ない。




 「…まあ、いいや。明日に凛に会いにいこう。」


 僕はギュッと唇を噛み締めた。



 続く







 (ちゃんと純文学的にも、かけるんだもんね。余計か。)








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