第17話 「浮気か」


 「3年目の浮気くらっいっ、多めにみろヨ〜♫」

 「開き直るその態度が気に入らないのっよ〜♫」



 はいはい、はじまりました、はじまりました、こんにちは!やはり浮気と言えばこの名曲でしょう。

 そうだ、そうなのだ!浮気なのだ!両手をついて謝っても許してくれないだろうなぁ。






(シリアスに)





 しかしながら、彩花にとって、シリアスに、深刻、残酷な結果になった。



 大塚から徒歩15分。木村探偵事務所に昼過ぎ、彩花を呼んで調査報告の最中だ。9月も終わりなのに、ジメッとした蒸し暑さである。



 「で、池袋のこのホテルですね。1時間半くらい居ました。」僕は言葉を濁す。


 「これ写真です。」桃介がボールペンカメラで撮影した、レストランの写真、ホテルを出る写真をプリントアウトしていたものを見せる。


 じっと見入る彩花が少し怖い。怒りださないかなあ、そう感じた時である。


「彼女は何、なんなんでしょうか?………。(絶句)」

 怒りというより以前の混乱だった。


 「つ、辛いですよね。わかります。」

 桃介が即座にいたわりの言葉をかける。



 「辛いですよね、私もキャバクラ通い、くらいかなとは考えて調査していました。」


 少し間を開けて続ける。

 「しかしね、彩花さん。長い夫婦生活、山あり 谷ありですよ。この事をきっかけに、ご主人との関係が深まることだってありうるんですよ。探偵業やっているとですね、浮気をきっかけにして、逆に関係を修復したケースはいくらでもあるんです。だから、彩花さんの気持ちを大事にしてください。」


 「私はどうしたら良いのでしょうか……。」

 彼女の目頭に光るものがあった。



 「大知さんがどう思って関係を持ったかは直接に聞かないとわからない。(僕)」



 「何か理由があるかもですよ。(桃介)」



 「ご主人に話すかどうか、気持ちを確かめるか否か、は一概に良い方法はわからないですよ。」


 「木村が言ってるのは、やっば、彩花さんがどうしたいか?ですよ。ね、木村さん?(桃介)」


 「そう。あとは、凛さんからは、昼間は花屋で勤務とは聞きましたが、場所はあえて調べていませんので。」




 「教えてくれないんですか?」



 「いや、調べて欲しいと言われたら尾行は簡単にできますが、僕は彩花さんが凛さんにアクセスすることを心配してます。そういった危険は探偵業の決まりでも、避けなければならないんですよ。(木村)」


 「彩花さん、、彩花さんと凛さんがトラブルになる事は、僕らも望まないということですからね。(桃介)」



 「少し考えて見ます。」


 彩花は思いたったかのようにコーヒーを飲み干した。そして「フッー」と息を吐き、肩をやはり落とした。


 女心と秋の空。彼女も、話す会話の中で、微妙に心が揺れ動いているようだった。


 しばらく3人は無言になる。


 僕はこういった。

 「しかし、たぶん初めての関係でしょう。まだ今はどうにでもなる時期かもしれないし、ゆっくり対応を考えて下さい。」


 彩花は席を立つ。


 「お大事に。」


 「バカ桃介、病院じゃないんだからな。ごめんなさいね、彩花さん。コイツは医療関係だから。」


 「いえいえ。ありがとうございます。桃介さん、木村さん優しいですね。考えて、また何かあれば、相談します。」







 彼女は事務所を後にした。


 こうして調査は一区切り、付いたかのうに見えていた。秋。🍁

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