第7話 「探偵の恋」

 美幸の仕事が終わる。二人で暗い道を手を握り並んで歩いた。


 美幸のぴったりと身体のラインのわかる白いレース生地のドレスが暗闇に映える。上には少しピンクがかった柔らかな生地のフードつきのコートをはおっていた。


 大通りに出てタクシー拾う。後部座席に乗り込んだ。



 「あ、その通り真っ直ぐいってください。八丁堀駅のほう」




 「美幸って、八丁堀に住んでたんだね。店の近くみたいには聞いてたよな。5回くらい食事とかしたけど、詳しく聞いたらいけないかと思って聞いて無かったんだよな」


 「あ、最寄り駅は八丁堀だよ。ごめんね、あんまり家の場所は普段から言わないよ」

 美幸ほどの美女なら、警戒して当然であろう。ましてホステスと客なんだからさ。




 連れていかれたのは、小さくて小綺麗なアパートだった。


 収入から考えて、民間病院の事務員であるから、当然質素に生きているだろう住まいだ。部屋は1DKだった。





 アパートの前には、暗闇の中にポツンと街灯がいとうがともる。カツカツカツ。コンクリートに美幸のハイヒールが響く。明かりに照らされた階段を登る。


 静かに同じアパートの住民に配慮して登る。もう深夜だ。みんな寝ているのだ。


 ガタンガタンガタン、ガタンガタンガタン

。しかし、二人の足音がさらに響いていた。美幸にただただ導かれて僕は着いていく。


 ガチャ。

 ドアを美幸が開けて部屋に入った。


 「だいたい片付けたんだあ」


 部屋は暗い。照明を美幸がつけようとしたが、僕はその彼女の右腕をさえぎった。そして、抱きしめる。初めて。


 「あっ。れいさん」


 「ごめん。ずっとこうしたかったんだ」






 しばらく余韻を味わった。








 「悲しい事今迄、美幸もあったじゃない。僕も色々あったよ。でも君に会えた」






 「私もれいさんに会えて良かったよ…」





 「そうなの?ありがとう」




 「君が何より一番大切なんだ」




 「……嬉しい」

 美幸が何か安堵するかのように微笑む。


 キスをする。唇の先が触れる。柔らかな彼女の唇。確かめあい、気持ちを確認するように唇をかさねた。


 それから

 長い長い時間…。





 僕は人生で、最高の恋をしていた。


 人生の本質は出会い。

 人生とは即ち、人との出会いである。

 人と出会うために人は生きている。

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