6.百合の紋章
アーチの上から眺めると、ランス城外の街道沿いを、国王陛下の長い長い行列が進んでくる様子が、よく見えました。
遠くからでも、馬上で先導する白と黒の装束をまとった従者の方々の、華やかで威厳にあふれた様子がうかがえます。これほど立派な行列は、見たことがありませんでした。
列のずいぶん後ろのほうに、天蓋に伴われた陛下のお姿もあるようですが、しっかりと認めることはまだできません。ただ、あまりのんびりしていると、アーチの上で用意する私たちの姿に、ご一行の皆さまも気づいてしまいます。興ざめになるので、それだけは、なんとしても避けなければなりませんでした。
「マリー、きっとうまく行くよ!」
地球儀のなかに入ろうとする私に向かって、一緒に待機する職人たちが励ましてくれますが、私は心臓が一層高なり、無事にお役目を果たせるのか、不安になってまいります。
どのくらいの時間、私は待っていたでしょう。沿道の人々が口々に叫ぶ「アンリ、アンリ! 国王万歳!」という声が次第に高まってきた、と思うと、急に辺りは静まりかえったようでした。私の入った地球儀が、ゆっくりと動き出します。
いよいよ、私の出番が来たのです。
すぐに、地球儀が地面に接したときの感触が、鈍い音とともに伝わってきます。私は、何度となく練習したように、地球儀を内側から押し開くと、天蓋の下、馬上で見守っておられる国王陛下のほうをしっかりと見すえました。
黒いビロードに、黄金の
純白のドレスときらびやかな宝石に飾られた私の姿を見ると、周囲から、低いどよめきのような声が起こりました。私は、不思議と落ち着いた心を取り戻し、大勢の高貴な方々が見守るなか、陛下の前へ進んでいったのです。
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