3.「悦ばしき入城」
そのようなわけで、私はほとんど家の外に出ることすらなかったのですが、ランス市内の慌ただしい様子は十分に感じとることができました。そして、いよいよ「
私はようやく十五歳になったところで、「
戴冠式に向かう国王陛下が、ランスの市門から入城される日のことをそのように呼ぶことは、すぐわかりましたが、何がそれほど「悦ばしい」ことなのか、私には想像がつきませんでした。それに、異教徒や異端から祖国を守るのに尽力された先王陛下を悼むより、なにやら
ええ、もちろん。そのとおりです。私自身も、その祝賀のなかで、とても大きな役目を与えられることになりました。この取り決めには、町の名士の方々がこぞって賛意を示されたそうです。父は、そのことをたいそう誇らしく思っていました。
信じていただけないかもしれませんが、私はそのころ、町で一番美しい娘と言われていたのですよ。輝くブロンドの髪と、透きとおるように白く柔らかい肌。背も、年のわりには伸びておりました。どちらかというと華奢な体つきでしたが、生涯病弱だった母とちがい、私は病気らしい病気もしません。屈託なく、よく笑う娘でした。
「私の可愛いマリー」
ある晩、父はまた私を呼びつけました。
「聞いているね? 国王陛下がおいでになる日、お前には、とても重要な役目を果たしてもらう」
「はい、お父さま。でも、どのようなお役目なのでしょう?」
「陛下と高貴な方々の一行を、城門の手前でお迎えするのだよ。これからその準備でいろいろ忙しくなる。あとのことは、お母さまが詳しく話してくださるから、よく聞いておきなさい」
父から聞いた説明はそれだけでした。とても重要なお役目となれば、いろいろ細かく言いつけられるものとばかり思っていたので、拍子ぬけしたと申してもよいでしょう。詳しいことは、その晩のうちに、母から聞かされることになります。
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