第2話

「ねぇ,かぐや姫の物語って…」

ノアが言う.


「うん.竹取物語ね.

あれはケース:0のカグヤの話だね.


僕たちと同じ惑星から来た.」


そう,カグヤのケースで分かった事から,

『終わりの人』はそれ以降本国へ戻されなくなった.

なぜなら,どうしたって20年ほどで死ぬから.

動き出した時間は限りある時間で止まる.

地球の空気や水で,時間が流れ始め,

地球の空気や水のために,永くは生きられないのだろうと…

詳しく調べる者はいない.

なぜならば,理由はどうだって良いからだ.


ノアが言うように,

僕たちは特攻隊だ.


カグヤは珍しかった.

生まれたままで時が止まったのだ.

カグヤの母はカグヤが収容されるときに,

かなり抵抗したようだ.


一親等が死に絶えるまで,派遣されないと決まってた.

カグヤは分かっていたのだろうか.

赤子のままで.

父も母も死に絶えた後,

地球へ送り込まれる.


昔の地球人は何も分からないだろうと,

送り込まれる際,今より随分ずさんな手口だったと聞く.

だから,見られた.


竹ではない.

筒状の宇宙船で送り込まれたのだ.

便宜上,見た事のない昔の地球人は見た事のある物になぞらえる.

昔より,宇宙船は地球上の物質へ戻るように作られているから,

竹にそっくりであった.


あの羽衣は身に着けるタイプの発信機だ.

あれが無いと,見つけても貰えない.

IDも兼ねているので,本国へ戻っても自分が何者なのか誰も分からない.

カグヤは羽衣を探した.

そう考えると,カグヤは何もかも理解していたのかもしれないな.


「カグヤは,育て親に恩を感じていただろうね.

では求婚者は?

帝には?

愛してくれて嬉しいと感じていただろうか.

愛が重く迷惑だと感じていただろうか.」


「さぁ…

知らないわ.

私はカグヤではないもの.」

ノアが言った.


僕たちにとっては重要だ.


僕たちの気持ちが,罪の聖杯に影響を与える.


「あっ地球が近づいてきたら,

名前を通信してと言われていなかった?


ん,ではだめでしょ?

デーモンって名付けて良いか議論されたらしいじゃないの.

ん,も受理して貰えないわ.

私たちは目立ってはいけない.」

ノアが言う.


「ノア.

そうだったね.

何にしようか…


名字は?

ノアが決めていいよ.」


「夜明け前の,あの景色が好きだわ.

日本では,暁というみたい.

暁という名字は?」

ノアが言う.


「暁かぁ.

僕も,あの景色好き.

そうしよっか.

暁ノア.

大丈夫?」


「うん.私は,暁ノアで生きていくわ.

下の名前どうするの?」

ノアが聞く.


「初めて地球を見た人が言った言葉から,

アオにするよ.

暁アオ.どうかな.」


「いいんじゃない?

イニシャル,A・Aだけど.」

ノアが笑う.


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