罪の聖杯
食連星
第1話
綺麗だなぁと思った.
頭上に見た惑星が,今足元に見える.
「地球は青かった.」
呟いた.
「起きてたんだ.見てる?」
「見てる.これから僕らの惑星になる.」
僕たちの事は,
『終わりの人』
って呼ばれるらしい.
僕たちが終わるからか,
僕たちが終わりをもたらす人だからか…
「ねぇ,あいうえおの発音では呼べない.
だって,五十音に名前が当てはまらないから…
何て呼べばいい?」
「そうだなぁ.
…ん.
んって呼んで.
僕は終わりの人だから.」
「ん?
呼びにくいし…
もろ中2病って感じ.
私も一緒の立場よ.」
「ノアはノアでいいね.」
「あれ学んだ?」
「何?」
『ノアの箱舟』
声が合った.
2人を乗せた小さな宇宙船は地球へ向けて進む.
向かい合わせに横たわる2人.
「ねぇ,手を握って.」
「いいよ.ノアは甘えんぼさん.」
「そんな風に言うなら,別にしなくていいわよ.」
「あはは.ごめん.」
んと呼んでといった少年は,ノアの手を握る.
「でも,あれも当てはまるわね.」
「何?」
「特攻…」
「ノア?」
「…隊…」
「ノア.
…それは,日本人にとってデリケートな話題だよ.
ノアは小学6年生くらいだから,
気をつけて振舞わなければならないよ.」
「さっき,学習してきた.
私は小学6年生のプログラムだったから,
その程度の知識しか,元々入れてないわ.」
僕たちの惑星では,成長が止まった人が,
同じくらいの人たちの地球社会に送り込まれる.
自分では選べない.
宇宙船にいる間に学習する.
降り立つ国の言語と,背景と歴史と,
そう地球上の人たちに溶け込めるように.
「ノアは…
結婚したい.だから一緒に付いてきた.」
「僕たちは多分,兄弟として戸籍を貰うはずだよ.」
「でもっ!」
「ノアが付いてきてくれるって言った時は本当に嬉しかったよ.
でも,兄弟は結婚できないんだ.
法律にも背くことになるよ.
僕たちは地球の決まりに沿って生きてかなくちゃならないんだ.」
「知ってる.
でも…兄弟じゃないじゃない…」
「…そうだね.
僕が就職したら,拠点をかえようか.
遅すぎるかな.
大学生になった時にしようかな…
ノアも地球に降り立ったら,
別に好きな人が出来るかもしれないよ.
僕たちは永くて短い時間を生きるから.」
「言わないで.こんなとこで喧嘩したくない.」
「そうだね.僕も一緒だ.」
地球に降り立つと,
僕たちの時間は動き出す.
地球の空気か水か.
何かが,スイッチとなるらしい.
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