第23話 それでも信じたい気持ち、小さな体に大きな器。

少し時間は遡り。真昼の視点


「師匠!!」

師匠は私に気づかず軽くぶつかり、私だと気づくと驚きつつ口を動かそうとして、何か言おうとしているのがわかり、私は言葉を待ちます。

でも……でもさっきから涙腺が言うことを聞いてくれずポロポロと涙が溢れて止まらないのです。

彼は止まって考えるそぶりを見せますが、とても寂しい笑顔を見せて私を横を通り過ぎてしまいました。



「……追いかけなきゃ」

涙を拭き、師匠のことを思い出します……。


あんな表情の師匠……見たことない、いつも仕方ない様子でも、私の言うことをしっかり聞いてくれる人……大切な友人いや師匠を追いかけなきゃ。足を廊下に向け歩もうとすると

「やめろ、真昼」

金髪のエリカちゃんに手を握られ動きを封じられてしまいエリカちゃんの声がする方に振り向きます。


「そんな顔するなよ真昼……あいつのやったこと…噂のこと聞いただろう」

私を握ってる手が震えてるのが伝わってきます。きっと勇気を出して、私のことを考えてのことなんでしょうがそれで止まる理由にはなりません。それにイラっともきました。

彼女は師匠の何を知ってるのか、あの人がどんな優しい目で私達を見ていたか!人を見る目だけは自信があります。異性の誰にでも私は懐くわけじゃないです。


「師匠はそんなことしません!美歌さんを傷つけるようなことはしないです!」

「でも噂が……」

「噂もそうです!普段の師匠見てればわかりますよ!あんな優しい人がそんなことできるはずないじゃないですか」

そんなことできる人があんな表情するわけない!

あんな……あんな自分のことを諦めて引き受けるかのように状況を飲み込むわけがないっ、もっと意地汚く言い訳してあためふめくに決まってる。だからこそ師匠の気持ちを聞かなきゃいけない。私は私の大切な師匠のことを何も知らない!


「信じたくないのは分かるけど、火のないとこに煙は出ないて言うだろ、あいつ頑なに自分のことしゃべんねぇじゃん……」

「…………」

「家に行った時の写真の子なんだろうな、妹さんは生きていてだからこそのあの時の顔なんだろうな、私ニュースとか見ないから知らなかったけど中学の事件の人と一緒の顔だったよ」

難しい言葉を使ってよくわからないことをエリカちゃんは言います。私はぬいぐるみを飾りますが大切だからこそ、思い出があるからこそ飾るんですそんなことも……

「殺した人の写真なんか普通飾らないですよ!」

普通に考えればわかるはずです!

「サイコパスは何するか分からないって動画で言ってた、普通の考えじゃねぇんだろ、私たちも写真飾られてたかと思うとゾッとするよ……私は本当にあいつがわかんなくて怖いんだよでも、でも大切なものは守りたいんだよ……」

エリカちゃんは師匠よりも、動画の内容を信じるのんですか……、サイコパスは聞いたことがないので内容はわからないですが……、誰にだって話したくないことの1つや2つあるはず、人によってはもっとです!私だってオネショの卒業とか……未だにスポーツブラなこととか……

「それにな……この状況みろよ、もうあいつとは関わるなよ噂にされるぞ」

噂?噂がどうしたんですか…大切な人が1人孤独で傷ついてるのにそれよりも保身を優先しろと!頭に血が上ってきてしまいます。

「……エリカさんてヤンキーなのに心が小さい、いや器が小さい人なんですね」

エリカちゃんは私からそんな言葉が出るとは思わなかったのか驚いた様子です。気を張ってるのもヤンキーの真似事をしてるのも弱い自分を強く見せるカモフラージュに今は感じます。


「師匠は私の大事な友達です!追いかけます」

掴まれてる腕を思いっきり下に振って、振り解き廊下に向かいます。


「!!」


驚いた様子のエリカちゃんですが、私の動きが遅く、歩幅も短く……廊下に出る前に捕まってしまいました、しかも羽交締めで……

「ちょっと!エリカさん離して!!」

バタバタするけど振り解けません。教室を見回すとこっちに注目している人もいますが、みんな美歌さんの周りに集まってます。そうです、彼女なら私の知らないことも知ってるはず


「美歌さんも泣いてないで何か言ってください!」

「…………」

それでも彼女は動こうともせず床に顔を伏せてるだけ……。そんな様子を見て私も少なくとも彼女が傷ついていることに今更ながら思い出します。

「なんで何も言わないんですか?師匠がそんなことするはずが」

「バカ真昼認めろよ……」

後ろからエリカちゃんに囁くように私に伝えてきます。何を、噂だけで認めるなんて空気の読めないわたしには無理です。

「嫌です彼に聞くまで認めません」

「真昼あいつは危ないんだよユウミも心配で朝弱いのからアラーム止めて家に置いてきたし」

「ユウミちゃん……」

それで朝いなかったんですね……彼女がいたら必ず止めに入るはず、しかもわざと起こさずに……それが守るて言うことなんでしょうか……?私ならその場にいなかったことを後悔すると思うのですが。今は何も言わないです

「エリカちゃん、美歌さんのところに行くので話してください……」

「……離して下さい!」

「お、おぉ」

中々離そうとしなかったが強い口調にびっくりしつつも、丁寧に私を下ろしてくれて、私は地面に足をつけます。その足で泣いてうずくまってる美歌さんのところに向かいます


「美歌さん泣いてたって何もわからないですよ……」

「うぅ、うう」

「場所が悪いなら一緒に保健室行きましょうこのままじゃ授業にも支障がでます」

「ねぇ、かわいそうだからそっと」

近くにいた女子がそう私にいいます。

「かわいそうだから?本当にかわいそうなのは師匠ですよっ!最初から見てましたけど、皆さん一度言葉に出す前に考えましたか?」

「…………」

周りは考えるような素振りをする、新さんは変わらず怒ってるみたいだけど、

本当……顔だけ良くても中身はスカスカ、顔なんて親からの贈り物だから新さんは、実質みそカスのスカスカ野郎です。

「もし師匠が本当に皆んなが言う人の通りだとしても、やってることは皆んなも一緒ですよ?真昼は大切な人を侮辱されて怒ってますから」

私の大切な人を傷つけて、許さないと精一杯睨んでみます。

周りから見ると寝不足の真昼のように見えているが彼女は知らない……。


――――――――――――――――――――

時間 美歌視点


私はどうすればいいかわからなず泣いていた、周りから優しい声をかけられるけど、殆ど耳に入らないでも……途中から耳に良く通る声が聞こえる、「「もし師匠が本当に皆んなが言う人の通りだとしても、やってることは皆んなも一緒ですよ?真昼は大切な人を侮辱されて怒ってますから」」真昼ちゃんの言葉が耳に入りハッとする。

私は今なんで泣いてるのか……悲しいからか、騙されて悔しいからか、彼を思ってか……どれをとっても泣いてるだけじゃ何も変わらない……。 

でも私1人じゃ抱えきれないのも事実……ゆっくり顔を上げるきっとひどい顔してると思うけど今は気にしない。

「グスっ……真昼ちゃんありがとう……一緒に保険室…グスっ……ついてきてくれる?」


「もちろんですよ美歌さん行きましょう」

小さい胸を張り、彼女は私の手を握る

途中エリカちゃんが何か言いたそうに見ているが真昼ちゃんは

「私1人で充分ですから心配しなくても追いかけたりしません美歌さんも私の大事な友達ですので」

……大事な友達……、ただ心配してくれるだけの人とは違う、きっと彼女は私が同じ立場でも自分で考えて今のように行動して助けようとしてくれるのだろう……


「うぅありがとう真昼ちゃん……」

また涙が溢れてくる……私は手を握ってくれている真昼ちゃんの背中を抱きしめる……

「あの、大きい胸を頭に乗せるのは嫌がらせですか…そうなんですか?すごく歩きづらいんですが……」

そんなやりとりをしながら保健室へと2人は向かう。



―――――――――――――――――――――――

作者余談欄

いつも読んでくださりありがとうございます!

よければハート等貰えると嬉しいですっ


ポンコツキャラは描きやすいですねっ今後さらにポンコツぶりが加速していきますが、目を瞑って下さると助かります

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