第22話 一度考えてから発言、行動するのは難しい

週末美歌からの連絡はなく、学校を休むのも逆に気を遣わせると思い出した結果が……とりあえず誠意を持って謝る。それを目標に登校する。

歩いていると周りが見ているんじゃないかという錯覚に陥るが考えてもしょうがないと学校に向かう。


教室のドアを開けると、先に新が教室にいた。  


「おはよう新」

 いつものように挨拶する。心なしか教室にいる人の視線が痛く感じる。

「…………」

 いつもなら挨拶をすぐに返してくれるのだが、なんだか思い詰めたような表情をしている。


「どうした?」


「お前のこと友達だと思ってた」

「?」

何を言ってるのかわからないため首を傾げる。


「美歌に何した?」

「なにもしてないけど」

少し憎まれ口を言ってしまったが、それは彼女と俺の問題であり新には関係ない。

「そうか……相変わらずお前は何も言わないんだな!」

「!!」

いきなり新は俺の頬めがけて殴りかかり、床に転がる、まだ人は少ないが教室内もざわつき始める。


「いきなり何するんだよ」

「何だって自分に聞けよ」

自分に聞いても、休みの日のことなら悪いことをしたと思うが、殴られるようなことはしてないはずだ。

「ねぇ!やめてよ何してるの!」

クラスの誰かが声をあげる。

「師匠どうしたんですか?!新さんがやったんですか?新さん最低ですよ!」

今登校してきた真昼が俺に駆け寄り、新と俺の間に手を広げながら新に言う。

「最低なのはこいつだろう?そうだろう美歌」

「…………」

ドアの前にはカバンを背負ったままの美歌がいた。だが明らかに表情が優れておらず、化粧で隠しているが目の下にはクマがある。そして、何も言わず瞳に涙を溜めてこちらを見ている。

「ほらなショックで何も言えないくらい傷ついてる顔見ればわかるんだよ」

呼吸を荒くしながらそういう新。

「師匠?何かしたんですか……」

真昼もその美歌の様子を見ておかしいと感じたのか俺の方を振り向き聞いてくる。

「何もしてないはず……」

教室の視線が痛く、自分の言葉に自信がなくなる。


「うぅ……うぅ彼は何も違うの、違う」

美歌はリュックを背負ったまましゃがみ込みそのまま泣き出してしまった。正直状況が飲み込めないでいると。

「美歌いいよ辛くなるだけだよ……新が殴ってなきゃ私が殴ってたよ」

いつも美歌と仲良く喋っている1人の女子が背中をさすりながら鬼の形相でこちらを見ている。

「クソやろう、プレイボーイてあだ名本当だったんだな」

吐き捨てるようにもう1人が駆け寄る。

何が起きてるのか……わからない。匿名掲示板のことを聞いて、美歌に詩音のことを聞かれいつも通り登校して……そんなに美歌を傷つけていたのか。そう考えていると取り巻きの1人が

「あとお前終わったよようべつに凸の相談で大々的に出てたよ」

ようべつは動画投稿できる。世界規模のサイトだが凸相談?

「私もそれと掲示板もみた……目隠れてたけど写真鉄心くんだった」

クラスの1人が掲示板を見たと声を上げる。増えてはいると聞いたがそんなに早いはずもなく、それとと言う言葉から凸相談で内容に触れていたのか……

「相談した人も泣いてたよ許せないって美歌正解だよ気づけてよかったね」

「うぅえ?グズッそんなの知らないよ」

「そうだよね後で見せてあげる」

なんの話だ?美歌が何か関係してるのか?恨むと言っていたが甘く……、どこか甘く俺は考えてたのか?

「私も……昨日動画見たよ、もう妹も真昼とも関わらせねぇよ!人殺し!大切な妹と友達は私が守るから二度と近寄んな」

エリカが遠くの席から少し声が震えながら聞こえるような大きな声を出す。

「何々それ、これだよクラスので送るよ」

「ねぇ人殺しがいるグループなんて嫌だよね新しいの作ってそこに……」

クラスの端々で小声だが、内容が聞こえてくる。

「おはようーて、鉄心どうしたんだよ」

「翔太……」

翔太は何も知らないのかいつも通りのペースで挨拶しこちらによってくる。

「鉄心顔どうしたんだよ、息荒くして新がやったのか?お前友達になんてことしてんだよ!」

俺の顔に赤くなっているのに気づき新の肩を思いっきりどつく翔太。

「いってぇなバカ!!」

それに伴い新が大きな声を出し、また肩をどつく動作をしているため体を起こし腕を後ろから掴む。

「な、なんで止めるんだよ鉄心」

「翔太、こいつはな美歌の告白に対して身体だけの関係ならとか答えやがったんだ、それしか価値がないってよ!」

「しかも過去に2人も殺してる殺人鬼なんだよ、危ない人だよ」

「…………え?なんだそれ鉄心がそんなことするはずが」

「俺も過去のことは今日初めて知ったし見たよ、美歌だけのことだと思ったらこんなこと過去にしてたんだよ!こいつ俺たちに何も言わず……あの時いたのは鉄心と詩音だけだっただろう」

「…………」

美歌から告白?身体だけの関係なら?それしか価値がない?そんなこと言うはずないし、まず告白されてない……、掲示板だけじゃなくて……

なんだそれ、美歌が俺をはめようとして?恨むとか言ってたけどここまで恨まれてたのか……。ショックのあまり言葉が出ず否定に遅れる。

「嘘だよな鉄心……テツ?」

「告白されてもいないし、そんなこと言ってない」

「あー!?なんだよそれじゃ美歌が嘘言ってるて言うのか?あんなに苦しんで悲しんでるのによ!」

……部が悪い、状況も噂がまるで真実かのようになっているのも、状況の悪さに拍車をかけて最悪な状況だ……付き合いも数ヶ月だと仕方ないのか。


新は恋心を抱いてる相手がそんなことをされて我を忘れてる。どんな相談を美歌がしたのかわからないが尋常ではない……。もともとこいつは悲劇のヒーローのような俺と関わって優越感に浸ってる節もあり、女子と話せる利益があったが今は……全くなく友人でいる理由はないのだろう……。

翔太は……バカだけど友達思いで、だから今もこうやって俺を見て答えを待ってくれてる。 


どうするべきか、そういっちゃんの言葉を思い出すんだ……「戦争の時はな頭のいいやつなら大国相手に負けるってわかってる人も少なからずいたんだ、それでも大勢のバカのせいで命を散らした」

「頭のいいやつならなんで負けるのに戦争したんだ?と思うだろ?世間体とかもあるけどな、違う面もある。」

「何?そういっちゃん」

「上の奴らはずる賢くてな?意思がバラバラの奴らが団結するのはな……」

それは

「共通の敵を作ることか……」

おれはそれでいいのか……自問自答するが……人より孤独には慣れている。ヒリヒリする口を開き翔太に伝える。

「なぁ翔太、友達1人失うのと2人失うなら1人の方がいいと俺は思うんだ……」

「何言ってるんだよ鉄心!詩音の時だって……」

「だってお前の手の傷あんなに……」

―――――――――――――――――――――

翔太……お見舞いの時見たのか、よく見ている。俺は飛び降りた詩音の腕を飛び込んで掴んだ。廊下にある傘立てに足を絡めて、死んでほしくない一心で引っ張ったが、体力の限界で乗り出した俺も落ちそうになった時、詩音が下を向きながら呟く

「鉄心……覚悟決めたのに未練は消しきれないね」

「詩音!生きよう俺と生きよう」

「いいやここで終わりだよ」

「イッやめろ噛むなやめろ詩音」

右手に歯が食い込み、肉まで到達しているだろうか握っていた手に血が滴り……滑った。

「ありがとう鉄心……」

そのまま彼女は地面に落下に、真っ赤な水たまりを作った。

―――――――――――――――――――――――

「翔太分かれよ俺はお前とは友達でいたい」

新が翔太の肩を揺さぶりながらこっちを睨む。

「なんで朝からこんなことになってんだよわかんねぇよ」

困惑しながら目からしずくが落ちる。

「ごめんな翔太」

罪悪感から謝るこうしないと心がもたないから

「なんで謝るんだよ」

涙を流しながら聞いてくる。本当にいい奴だとつくづく感じる。

「うぅ手って?」

私は彼達のやりとりを聞いて彼の右手をよく見る。本当によく見ないとわからないが薄く歯型がついてるのが見える。私の視線に気づいたのか後ろに手を隠す彼そして私の方に来ようとするが周りが囲み、近づけないと悟ったのだろう。

「美歌……時間さんも本当にごめんなさい」

その場で土下座して、名前も出会った時に戻っている。

「そんなんで許されるかよ?」

「本当最低だよ」

周りがそんな彼をゴミを見るかのような視線で見つめる。違う、違うんだよ

「え、え、なんで、なんで鉄心くんがあやまるの?わたし、わたし」

彼の手を見て最初から勘違いしていたのだと悟るイジメて自殺に追い込んだ人が、あんなに歯型が付くまでその人を助けようとするはずがない

それにこの状況を作ったのは私で謝らなきゃいけない、いや謝るどころじゃない、許されないの私なのに……なんで鉄心くんが謝るの。

「俺さきっと言葉で時間さんを傷つけた、酷いことした、週末考えて反省したよでも……いいやなんでもない、もう声かけないから」

「やっぱり!!お前」

「当たり前だろう視界からも消えろ」

「もう学校に来るなよ!」

周りの声が熱くなってるのがわかる。

「ち、違うの鉄心くゆ、鉄心くん」

私の声は嗚咽も混じりうまく聞こえない。彼は体を起こし

「今日は帰る」

そういいバックを持ち廊下へと向かう

「逃げるのかよ」

それを見て新が殴りかかろうとするのを翔太が止める。

「やめろよ新!」

「翔太……いいんだよ」

「鉄心何がいいんだよなぁ」

翔太が新を止めてくれているのを、横目に俺はそのまま足を進めると、廊下に出る前に誰かにぶつかり下から声がする。

「師匠!!」

本当に心配してくれてるんだろう、目に涙を溜めながら声をかけてくれる。ここは声をかけるべきじゃないなほとぼりが冷めたら……ほとぼりなんて冷める時が来るのだろうか、自虐的に少し微笑み、彼女は涙を流しながらその場に立っている。

俺はそのまま歩み始める

「…………」

「ヒッ」

廊下に出るとメガネをかけた子が驚いた様子を見せる。

「…………」

そのまま歩き続ける

「ねぇ隣のクラスで……あの人」

「…………」

小声で喋っている女子

「なんの騒ぎだ?あの人がね……いやこっち見た」

「…………」

視線を合わせると怯える別クラスの知らない人

「それでどうしたんだよ?あいつ鉄心だろ?なにこの動画……は?…まじか……」

「…………」

中学の時少し話す程度の知り合い

「あの人がね……本当かよ?!やべえ奴じゃ……」

「…………」

異様に騒ぐやつ

「カシャカシャあー空が綺麗だね」

「…………」

明らかに俺の写真を撮るが知らんぷりをするギャル

他の教室にも騒ぎは広がり、みんなの視線を浴びながら下駄箱へと向かった。



「おい鉄心」

誰かに声をと思い振り向くと光秀先生がいた。

「なんですか?」

帰った後で連絡しようと思っていたが、騒ぎの件だろうか……

「ついてこい歩きながら話す」

そう思いながら外は晴れていい天気なのに憂鬱な気分で靴を下駄箱にしまい先生に付き添いながら歩く

「時間美歌さんの親御さんからお前に対して苦情が来てる」

「苦情ですか?……」

「あぁ、今は苦情だが場合によっては……はぁ面倒ごとをとりあえず校長室にいてもらってる」

身体だけという偽りの発言の件か、さっき謝り気分が幾分か楽になったのは俺だけだろう……

そこまでするのかとは言わない……人によっては「バカ」と言われるだけで落ち込み自殺はなくても登校拒否になるナイーブな人だっている。ようは相手の中でその言葉がどれだけ大きいかなんてその人にしかわからないのだから……きっと俺はそれだけのことをしたのだろう……。

そう思い落ち込みながら校長室に向かって歩いた。



―――――――――――――――――――――――

作者余談欄

いつも読んでくださりありがとうございます!

よければハート等貰えると嬉しいですっ


みんな周りに合わせて自分の中で考えるのをやめて口に出してしまうことがあると思います。人を傷つけるのは生きている上で仕方ないですが、自覚があるのとないのとじゃ視点が違うことを書きたくて書きました。

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