第21話 御幸という少女

時間美歌との会話を終えて自分の仕込みに感触を感じつつ家に帰るべく足を運ぶ。


「ふんふんっふーんふん」 


頭の中に浮かぶフレーズを口ずさみながら

周りから見たら可愛い少女の微笑ましい光景だがその間も彼女の頭の中では次の行動を考えていた。


時間美歌……お兄ちゃんに惚れたらどうしてやるかと思ったけど先手は打ったしっもうあの駒はいらないかな……。一応保険はかけておいたけど‥‥‥

「お兄ちゃん本当に外面いいから大変だよーまぁー中身もそれ以上に素敵だけどっ」


うーん匿名掲示板だけじゃ弱い……今日はと、うんよしっ!次は、凸待ち配信かな?機材もお小遣いで揃えたし。


「ただいまー」

「お、おかえり御幸」

「うんただいまお母さんっ」

「…………」


私の両親は少し前みたいに私の行動を無理やり制限したりしない、流石に門限は守るけど……調べたところによると両親は姉が死んだ後からだが毒親だった、幼かった私は知識もなく、調べる手段もなかった。「出かけられない、家庭内でもぎくしゃくする、優秀だったお姉ちゃんを引きずって女子中学にまで入れて縛って、縛って、縛って、縛って」

私は第二次成長とともに、心の中で気持ちが溢れ出した……ただ暴れて拒否しても長い説教をもらうだけ、反抗しても部屋には鍵すらない……

そんな私は洗面台で自分の顔を見た、成長した私はお姉ちゃんににてきていた。目元は私の方が眠そうな感じだけど……。ボーと見つめてると洗面台置いてあるI字剃刀が目に入る。………………

泣いてもダメ、幾ら優秀な点数を取っても、従うままいい子にしててもダメ。なら……これなら?

「ねぇお母さん……私を自由にして他の子みたいに外で遊びたいのお買い物したいの」

「何言ってるの?あなたは勉強とか習い事とかやることがたくさんあるでしょ?後1時間でピアノの先生くるわよ」

「…………そう、ダメなんだね」

左手に剃刀を当てる。

「え?何してるの御幸バカなことはやめて!」

「なら言うこと聞いてくれる?」

「いい子だからね?だからそれをこっちに」

「ザクっ……」

私は手首を切り血が流れ始める。

「いやーー!!やめて」

「近づくともっと深く切るよ?」

「わかったわわかったからもう自分を傷つけるのはやめて」 

母親は泣いていた、手首は痛くて血がたくさん出たけどそれより初めて要求が通ったことが嬉しかった。

それから手首の処置をし、泣いていてうるさい母を尻目に、久しぶりのお小遣いをもらい外に出た。

何年ぶりだろう久しぶりの自由……

子どもが自転車を漕いで目の前を過ぎていく。

「お兄ちゃん何してるのかな?」

心も成長した私は、昔ほど鉄心お兄ちゃんのことを恨んでいなかった。それもこれもあの日の下駄箱前の廊下の前での出来事から私の中で何かが変わった。

―――――――――――――――――――――――

「大好きなお姉ちゃんを殺したあんたをお父さんとお母さんを狂わせたあなたを……」

「私は絶対に許さない!!!あんたが死ねばよかったんだ」

「お姉ちゃんは優しいからあんな約束をしたけど私は許さない、絶対に許さないんだから」


幼い私はたくさん恨み口を言った、教室でも言っていたらいつのまにか噂は広がりいじめは広がった。3年生の校舎と4年生以上の校舎は対面する形になっておりお兄ちゃんの様子はよく見れた。

誰かが教科書を中庭に窓から捨ててる様子、バルコニーに髪の毛を引っ張りながらどこか見えない場所に連れてかれる様子他にも沢山のイジメを見た。

それでも通ってる彼を見て怒りと、例えられないぐしゃぐじゃした感情がひしめいていた。まるで平気なような顔のあいつを見て……でもある時イジメが止まった……。

あのいかついオールバックのじじいのせいだと後で知った。

その後はひたすら無視される日々、腫れ物のようにされて顔が沈んで酷いことになっている彼、目は生気がない……それを見ていて何か不思議な感情が私の中で生まれていた。ある日足母親が遅れる日に彼に普段の鬱憤をぶちまけた。

「…………」

何も言わなかった体が、だんだん身体が震え始めて床に吐瀉物をぶちまけて痙攣し始めた。調べたらパニック発作とか、PTSDと呼ばれるものだと知った。

彼に近づき、足で頭を踏む、それでも痙攣して吐瀉物に顔を埋めてる耳をすましよく聞くと何か言っている。

「ごめんなさい、ごめんなさい、生きててごめんなさい頑張る、葵の分まで頑張るから、許して下さい」

それを見て私は安堵した、彼は何も感じてないわけじゃない、もう壊れてるんだ……

その時優越感と、今まで感じてた感情に変化があった。弱ってるお兄ちゃんが愛おしい……独占したい。あの時はお姉ちゃんがいたけど今は誰もいない。あれ、お姉ちゃんもしかしてあの約束も私のため……ふふふ、ははは!!

「ねぇ?答えてお兄ちゃん?」

「ごめんなさい、ごめんなさい」

「どういう時にそうなるの?」

「あ、あ、あ、人に話そうと思いだしたり、感情が溢れたらごめんなさい、夢に見たり、ごめんなさい、」

あぁ、これは都合がいい、弱らせてもそれを吐き出すすべがないからたまる。さらに弱って壊れる。私みたいに壊れてく。平気な顔してるだけお兄ちゃんは本当に狂ってるよ私以上に……それだけに他の人に発作は見せられない……これは私とお兄ちゃんだけの秘密……

「おい!何してるんだ大丈夫かい君」


その後教師が駆け寄り、私はその場限りの嘘を言い何事もなかったかのようにお迎えにきたお母さんの車に乗った。

まさか……中学まで。街外れの遠い女子中に行かされて、小学生の時と変わらず送り向かいとは思わなかったけど……。


話は少し前に遡る。

私は記憶を辿り、お兄ちゃんの家に行く、あのジジイがいたら厄介だけど、確かここ立て付け悪いんだよね。……昔と変わらず入れた。

家には誰もいないのか、靴を手に持ち入る。

そのまま忍足で物色するが誰もいない様子


そのままお兄ちゃんの部屋に久しぶりに入る。


「…………変わらないけどこれはお姉ちゃんの写真?」お兄ちゃん女々しいな、お姉ちゃんはもういないんだよ。そう思いながら隣に目をやると中性的な美女がお兄ちゃんと一緒にピースしてる写真が目に入る。

「は?誰これお兄ちゃんまさか彼女?」

今すぐ叩き割ってズタズタにしたいが怪しまれて入れなくなると困るため気持ちをその時気持ちを沈めた。その人の写真を一応ケータイのカメラに入れてその日は帰った。

誤算はそのまま帰宅した父親に母親が喋ったらしく精神科に入院させられたことだった。

そこでは私はいい子を演じ、色んな人に事情を話し家族会というものや、家族指導なるものを経て3ヶ月とで退院した。それから両親は変わり強硬手段は使わなくても済むようなったのが現状。薬は未だに飲んでいる。どう接すれば迷ってる面はあるけど都合が良い。また入院なんてなったら計画がパーになるから。

退院後も、時間を見ては忍びこみ情報を集めた。尾行だってした。あの女がお兄ちゃんの彼女じゃなく親友ということを知ったがその距離感がとてもじゃないが許せなかった。あのジジイは認知症になっていたのは本当に都合が良かった。そしてあの女が死んだのはニュースで知った。お兄ちゃんの顔を見ると……あぁ、よかった昔のお兄ちゃんだ、成長してなおさら興奮する。……もうあんな女のような奴が寄り付かないようにしないとね。それが行動の始まりだった。

「私公明高に受かったよっ!」

「おー共学デビューだね!美歌ならすぐ彼氏できるよっ隠れメンヘラだもん」

「えー酷いけど許すっ素敵な人作っちゃう笑」

ネクタイの色から3年生の人の会話が食堂で聞こえる。あの女……お兄ちゃんと一緒のクラスになるかわからないけど、見た目もいいし、ポジションも中心的な人かな……?都合が良い。 

行動に出て、彼女の協力を得ることができた。ない恨みつらみを言ったら、それぐらいならと共感して協力を約束してくれた。神はいるんだと思った……同じクラスにになるなんて、しかも本当にこまめに連絡してくれて律儀な人だと感じた。そして機は熟し彼女の役目も終わり……いるだけで毒を撒き散らかす爆弾になってるかな?綺麗な花にはトゲなんてね。


そして事前に準備しておいた、有名実況者の凸待ち配信にて、匿名掲示板のこと、お姉ちゃんのことを涙ながらに誇張して語った。反響は凄かった。 

どうか、どうかあの学校の人に広がりますように……神様お願いします。


「お兄ちゃんもうすぐだよ……。」

盗撮した鉄心の写真を見つめながらそう呟く




――――――――――――――――――――

作者余談欄

いつも読んでくださりありがとうございます!

よければハート等貰えると嬉しいですっ


詰め込み過ぎた気もしますが彼女の背景です。時間 美歌にしかけた保険も今後に関係してきます。後10話ちょっとですっ最後まで書き抜きます。

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