第20話 密会 嫌いの反対は‥‥‥狂愛。
注意⚠︎この話は刺激が強いのでそれでもという方のみご覧ください。
時間 美歌視点です。
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彼とスターコーヒーで一方的な別れを告げて少しした後
今回のことを私に伝えるようにお願いし、
また詩音の死に彼が関わっていると教えてくれた中学校の後輩に会いに足を進める。
彼女とは付き合いが長いわけではない、下の学年で容姿は優れていることは噂で知っており、時折遠目で見たことがある程度の関係だった。
そうあの時までは‥‥‥進学先が決まって少しした時だった、どこで私の進学先を知ったのか誰もいない放課後の廊下で、声をかけられ、その子は自分の手首にI字剃刀を当ててただ一言、「一生に一度のお願いを聞いてほしい」と‥‥‥悲しい顔でこんな綺麗な子がどうしたんだろうなど思っていたが、あの時今でもお願いを聞いたことに対し深く後悔している。
私から見ても彼女はその見た目からは想像できないほど常軌を逸した存在で簡単に言うと
「とても狂っていたからだ」
過去のことを思い出しながら呼び出した相手山崎御幸との待ち合わせ場所に着く。大きな木漏れ日が差し込んでいる公園のベンチに彼女はいた。
「彼どんな反応してた?」
隣に腰を下ろして開幕1番彼女は愛らしく人懐こい笑顔でそう聞いてくる。
「ショック受けてたよ」
その言葉を聞いて彼の絶望したような表情を思い出す。自分でも酷いことをしたと思う。
「そう…………」
短く彼女は呟く。
「でもね何も教えてくれなかった」
「そうだろうね「あそこじゃ無理だもん」」
後半の言葉は小さい声で隣にいても聞こえなかった。
「うん?何か言った御幸ちゃん?」
「なーにもっ」
すぐにパーと晴れた笑顔になる。
「それで私が伝えるの意味あったの?学校で見てる限りだと彼何も言わないこと意外、面白くて優しい普通の高校生に見えるの、彼が本当に詩音が死ぬ原因を作っただなんて……」
高校生活の中で彼を見ても、詩音のことを話してくれないのは許せないが、それがなければしっかりしてそうで、抜けているのが微笑ましく、話していて自然と笑顔になり好感が持てる人という印象だった。
女子中学卒の私からしたら、告白してくれた新くんの時もドキッとしたがそれ以上に彼と会うと心臓が速くなるのを感じるくらいには好意の自覚はある‥‥そう、この子のお願いさえなければ‥‥。
「何も言ってくれないことがどれだけ相手を苦しめてるか知らないんだよ」
私に対してではなく独り言のように御幸は遠い目をして呟く。
「それって?」
「うんうんっなんでもないよっそれで美歌さんに頼んだ理由は丑の刻参りだよ」
丑の刻入り?え、彼女のお願いは、鉄心という人の交友関係、日常の様子の観察、時期が来たらスターコーヒーで掲示板のことを伝えることだけだ。
今回の詩音のことは私の私情だったが会話の流れから私が聞くことも想定内だった気がし彼女の掌の上にいるような錯覚に陥り血の気が引くのを感じる。
そんな状況だが疑問に思ったことを口に出す。
「……?えーとあの気に人形の藁でできた奴に釘刺すやつ?」
「そうそうっ」
「えーと彼に掲示板のこと伝えただけだけど?」
笑顔で肯定する彼女、私は意味がわからず困惑する。私はただ掲示板のことを伝えただけだ。
「そうだよ?」
「どういうこと?うんー丑の刻参りしている人は見られちゃダメって聞いたけど匿名掲示板とかけてるとか?」
私なりに丑の刻入りと匿名掲示板のことを繋げて考え、御幸ちゃんに聞いて見る。すると
「うーん20点」
「ねぇもったいぶってないで教えて?御幸ちゃん」
20点‥‥残りの80点はなんなのか、全く分からないため尋ねる。
「丑の刻参りの真意はね……釘で刺す藁人形は相手の写真もついてるの知ってる?」
「現代版的な?」
そういうところは疎く知らないため聞き返す、未だに話が繋がらない。
「そう、それでね呪いていうのはね相手に恨んでいる人がいるていうのを自覚させることが大切なんだよ」
「…………それって」
その話、呪いという日常では聞かない言葉に対し私の中で彼女の自覚という言葉で繋がる。
彼女は、育ててきた呪いが育つまで待っていたということを、いったいいつからと言葉が怖くて出ない、そうきっと私に会う前から考えていたのだろう。
「私でもよかったんだけど……もう掲示板の方は殆ど私の手から離れてるし……何より美歌さんにあそこで言ってもらう必要があったの、強いて言うならこれは序章かな?それで私が彼に会うのはさしずめメインディッシュ?」
私が言う必要があった?それが未だに繋がらない、彼とすごく親しいかと言われたらそうではないからだ、主に観察という名目も関係しているが、その答えはすぐにわかった。
彼女はその後、私に言葉と行動で私じゃなきゃいけない理由を明かした。
「匿名は誰だか分からないから周りの目を常に気にしなきゃいけないから気を張って苦しんで…… 」
うっとりとした表情がとても怖い。
「噂は勝手に独り歩きしてあることないことが広まってくの……ねぇ掲示板見せて」
彼女に心底怯えているとケータイを貸してほしいと頼まれる。
「……あれ?ケータイは」
素直に疑問に思い聞き返す
「忘れたのちょっとどうなってるか確認させて」
「うんいいよ?」
先ほど彼に渡した要領で彼女に教えてもらったサイトを開き渡す。
だが、この時どうやって彼と別れた後に待ち合わせ場所の指定の連絡ができたのか、他人にケータイを渡してはいけないという私の今後の人生の教訓になる出来事が起きた。
「ポチポチ……」
無言で何か操作し、文字を打っている。
「何を打ってるの?掲示板に書き込んでるの?やめてよどこかでバレたら嫌だし」
そう言っても彼女は無言で何かを打っている。
「………………ポチポチ」
「ねぇ何やってるの返して」
何をしているのかわからない恐怖から彼女からケータイを無理やりとる。
「あ……」
わざと驚いたような表情をする彼女。口もとは少し笑みを含んでいる。
そして画面を見るとそれは先ほど開いて渡した掲示板ではなく‥‥
「え?レイン」
もう送信済みの内容を見ると
「「ごめんね突然‥‥今日鉄心くんに告白して身体だけの関係ならとか、それしか価値がないって……もう立ち直れない相談に乗ってほしい」」
そんな事実はない、彼を貶めるために私と周りを平気で巻き込む彼女を睨みつけ、もう遅いが問いただす
「ねぇ御幸なにしてるの?」
「チャット欄の上の方から数人にレインしといたから弁明しといて相談なんてしなくていいからさ事実じゃないし」
確認すると、クラスの仲の良いメンバー関係ない親にまでレインは行き渡っていた。
「こんな酷いよ!あなたの頼みだから、あの時死ぬ前にお願い聞いてって目の前で手首切るからお願い聞いたのにここまでするの……」
過去に戻れるなら、あの時話を聞いた自分を止めたい、最初から何を考えてるのか分からず怖かったけど、今は心底怖い。
鉄心くん‥‥‥詩音のことは教えてくれなかった彼だけど、これから彼の周囲に与える影響を考えると、詩音のことなど関係ないくらいに申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
「少し大変だけどよろしくね?早打ち得意でしょ」
平然と悪びれる様子もない彼女、目的のためになら自分が血を流すこと、相手の気持ちも関係ない彼女の狂気が怖い、ここにいたくないほどに
「もう手伝わないから……どっかいって!私と関わらないで……」
自分でも驚くくらい震える声で、そのまま立ち上がり彼女から距離を取るように後ろに下がる、それを見て彼女も立ち上がり
怯えながらさらに距離を取る。
「純情なんだね、うんっ!約束だもん短い間だったけど助かったよ美歌先輩じゃあね」
そういい彼女は私に背中を向けて歩き出す。そんな彼女に正直声をかけたくないが、鉄心くんの今後を考え、勇気を振り絞って声をかける。
「…………ねぇ!お姉さんのことは知ってるけどそんなに殺したいほどに鉄心くんが嫌いなの?」
そう聞くと彼女は振り返り笑顔で
「逆だよ♪殺したい程大好きなの」
「私だけ見てもらえるようにどんどん心を殺してくの、いいよねあの絶望した表情、孤立した彼は可愛いくてもうー!はぁはぁ壊しがいがあってもっとぐちゃぐちゃにしてあげたくなっちゃう」
「え?」
逆?大好き?この一連の行動が愛の形?歪すぎて頭が混乱していると彼女は手を振り
「……バイバイ巻き込まれるから鉄心に余り近づかないでね、振られた可哀想な美歌さん」
振られた事実はないが、彼女のせいで周囲にそれは認知されてしまった。そのことに対する憎まれ口を叩きながら、彼との交流は控えるように助言してくる。
だがこれだけは言わないと彼女を止めないと鉄心くんは‥‥と思い大きな声で去りゆく彼女に叫ぶ。
「ねぇー!!やめようよ鉄心くん好きならなおさら」
「ふふ美歌さんのそういう優しいところ好きだけど本当に気持ち悪いよっ反吐が出そうなくらい」
こちらを見ることなく、毒を吐く彼女、どんどん遠くなる彼女の背中に、次の言葉がでず。ベンチに腰を落とす。そして1人
「ご、ごめんね鉄心くゆ、う、うぅ」
加害者になってしまった自分‥‥‥
どれだけ想像してもこれからの彼の周囲の関係を壊すことは確実で泣きながら謝ることしか出来なかった。
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作者余談欄
ここまで読んでくださりありがとうございます♪
よければハート等貰えると嬉しいです。
少し刺激が強い話になってます。色んな愛の形がありますが、御幸のは自分で書いてても怖いですね汗
よく小さい頃から泣いたら解決するのを覚えた子は、大人になっても困った時とか泣いて解決しようとするというのを聞きますが、彼女の方法はフィクションなので真似しないようにお願いします。
時間美歌の視点が少ないのは彼女が内通者として動いているのが関係していました。最初の保健室も緊張のあまり気疲れして寝込んでのことです。
初投稿なので手探りで頑張っていきます。心の片隅程度で良いので応援よろしくお願いします。
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