第19話 過去の足音、時間美歌の真意
「鉄心くん明日少し付き合ってくれませんか?」
そうレインで連絡が来たのは、レインで相談を乗ると耳元で言われ‥‥‥
また新が告白して振られたと伝えられた日の夜だった……。
「予定ないからいいけど、理由聞いてもいい?」
「新くんのことで相談したくて、相談に乗るって言った手前だけど、相談できるのが鉄心くんぐらいしか思いつかなくて」
新関係か、翔太は相談というより鼻を伸ばしそうだし、健人と祐樹は入学してからの付き合いだから俺に相談する流れになったのか。そう自分で納得する。
「わかったどこにいけばいい?」
「町にできたスターコーヒーわかる?」
若い人に人気のオシャレな店だ最近街中にできたのを知っていた。
「場所はわかる」
「ならそこに10時集合で」
「わかった」
「よろしくねそれじゃまた明日」
明日会う約束をしその日は早めに床についた。
翌朝、白シャツと、ジーパン、スニーカーと無難な格好をし目的地に向かう。
「いらっしゃいませ」
「あーアイスコーヒー、トールサイズで」
店につき腕時計を見る9時45分少し早いがこんなもんだと思い、店でコーヒーを頼み、空いている席に座り場所取りする。
それから5分も経たずに時間美歌は来た。
「あー鉄心くんお待たせ少し注文してから行くから待っててね」
そういい手を振る。
「キャラメルラテ1つで」
「お待たせ待った?」
……彼女はリボンがあしらわれた白いワンピースに麦わら帽子を被った初めて見る私服で笑顔で俺の前に座る。
「いや俺も今来たところ」
「……うん、コーヒーの氷減ってないし今来た感じなんだねよかった誘った手前待たせるのはねっ」
「律儀だな美歌は」
「そうでもないよ」
「………………」
「………………」
それから少し沈黙が続き、少し気まずく感じコーヒーを飲む。それから一息入れ沈黙を破る
「で、相談ていうのは?」
「うん、相談ね……」
「鉄心くんは正直に私のことどう思う?」
「綺麗で可愛いと思う」
「本当に素直なんだね」
「別に容姿に関して嘘言う必要もないからね」
「…………」
少し会話をした後また沈黙が訪れる、次に沈黙を破ったのは美歌だった。
「私ね…新くんに告白されて振ったの」
「あぁ、そのことは悪いとは思うけど新から聞いた」
「……あーあのトイレに行った時のかな」
「そう、それで相談はそのこと?」
「うん、そうだね、でも、それはもういいの」
「うん?どういうことだ」
相談に来ると聞いてきたがものの数分で終わり、頭の中が?でいっぱいになる。これで終わるなら解散か、女子と出かけたことはあまりないが要件がないなら帰りを切り出すかそう考えていると
「だってそうでもしないと鉄心くんこなさそうだから」
「あー用事がなければ別に来るけど」
俺をなんだと思ってるのか分からないが暇なときなら別に来る。
「えーそうなの?なんだぁー心配して損した。まぁいいか友達のことも伝えようと思ったからさギクシャクするのも申し訳ないし」
やはり優しいんだなと感心しつつ、新かわいそうだな全くの脈なしか‥など考えつつ話を聞く。
「そう、じゃあこれで終わり?てわけじゃないか」
聞いている途中彼女の顔が終わりじゃないよと伝えている気がして疑問系に聞いてみる。
「うん、終わりじゃないよ?‥‥‥」
「ねぇ、鉄心くん本音で答えてね私を客観的に見て鉄心くんにはどう見える?」
わざわざ客観的にという言葉を使っていうということは容姿……はさっき褒めたし違うと考える。
なら俺の本音に近い言葉を彼女は求めているのか、彼女を見ると真剣な目でこちらを見ている。
「ふふ、好きとか嫌いとか聞きたいわけじゃないよ?なんとなく言いたいことはわかるでしょ?」
好き嫌いでもない、俺から見た時間美歌という人、客観的なイメージ、それを言葉にすればいいだけ。それは人によっては傷つけることになるかもと考えるがその言葉を求めているのだろうと、言葉に出す。
「隠れメンヘラぽいところとか、あざといところとかそういうのか?」
クラスをよく見ており、誰とでも仲良くし、また周囲に自分という存在を求めているように感じそう伝える。
「うんっそうっ合格だよ鉄心くん」
ほっと安心したような表情の彼女、笑顔だが逆にそれが怖く、想像していた反応と違い少し驚く
毒を吐かれたのにむしろ笑顔で喜んでいるようにも見える…まるで事前にそう言われるのがわかっていたかのような反応、そう考えているとすぐに覚悟を決めたような真剣な顔になる。
「……何が合格なんだ?」
恐る恐る聞いて見る
「いやー鉄心くんなら本音で話せそうな気がしてさ」
「本音……?」
本音とはなんだろう……、新のことは前置きで、俺を呼び出すための口実……何を考えているのかわからなかった。
「うんっあのね私余裕がないの」
目線を斜め下にし、俯くように話す彼女。
「余裕?時間的な意味とかか?」
余裕とはなんのことだかわからないが何かを思い詰めているのはわかった。
「あー違う違う心の余裕の方て言うのかなやることが多くてさ」
「……何が言いたい」
美歌の事情は知らないが、まどろっこしく遠ましに言ってくるため、本心を尋ねる。
「何が言いたいか……そうだね、言うていうより伝える方かな?」
わざわざ言い直す意味、彼女は何を伝えようとしているのか返事を待つ
「ねぇ鉄心くんはさ本当に人を2人殺してるの?」
「………………」
体から血が引いていくのがわかり背筋がゾーとする。
彼女がいつもの笑顔なのもそれに拍車をかけて……過去のことを彼女には一度も話したことはないはずだし、間接的には関係しているためなんと返答するか考えていると先に彼女の口が開く
「沈黙は肯定てことでいいのかな?」
「なんで知ってるとか、このタイミングでとか思うかも知れないけど今のタイミングだからこそだよ、最初から知ってたしね青空中の事件のことも交通事故のことも」
「そうなのか」
高校入学2ヶ月前の2月14日のこと、それは大々的にテレビにも連日取り上げられていたこと、それを彼女は知っていながら、知っているからこそ話題に出ないようにし、その上で俺たちと接していたということなのだろう……しかし小学校のことはどこで‥‥‥
「それで伝えるて言うのはね私がどこで知ったかてところだよ」
考えている矢先、彼女が思考を呼んだかのように発言する。それを息を吸うのも忘れ答えを待つ。
「ネットの掲示板だよ、匿名の」
「ネットの匿名掲示板?」
御幸と知り合いなのかと一瞬思ったが、御幸は中学生の時の親友の自殺のことは知らないはずと考え直すとともに、匿名掲示板のことが気になり聞き返す。
「そう、そこに名前は伏せられてるけど高校の場所とか、鉄心くんらしき写真とかは載せられてるみる人が見ればわかるよ中学の卒業写真とか街中のとか……普通の人が見たら誰がとか分からないけど」
「人権はないのか匿名には」
「ないね、正義だと思ってやってる節もあるからねこういうのは、あとねその掲示版と似たようなのが最近になって増えてきてるの」
増えてきている?最近……青い瞳の幸せそうかと聞いてきた御幸の影を感じる。
「しかも、あることないこと書いてあると思う、見てみる?」
彼女はケータイを操作しこちらに渡してくる。
「あぁ見せてもらってもいいか」
それを受け取り掲示板を見ると、
「青空中学女子学生自殺、その裏にはイジメ、また居合わせた男子生徒は何事もなく1週間後登校、過去に女子小学生も殺めている危険人物」
――コメント欄――
「マジかよそんなの未成年だからって野放しになってていいのかよ?」
「単独犯ならサイコパスだな」
「一応虐めてた青空中の女子生徒2名は学校の内定取り消しになってるらしい……甘すぎねぇ?」
「裏でこういうことあるんだな」
「俺その男知ってるよ今普通に高校通ってる」
「こういう奴こそ○ねばいいのにな」
などなど……学校の住所、俺の中学の卒業写真などここ最近の日付で出回っている。
……冷静に見れている一方で胃がキリキリとし、途端に周りも俺を見ているような感覚に陥りつつ下まで無心でスクロールして少ししていると。
「ねぇ鉄心くん、ねえってば?もういいかな」
彼女から声をかけられハッと我に戻り
「あ、あぁごめん美歌さん」
ケータイを彼女に返す。
「さん付けに戻ってるよ?まぁショックだとは思うけど」
「あぁそうだな」
ショックどころではない、冤罪だが、知らない誰かからしたらこの情報では勘違いをしてしまう内容だ。しかも自分が彼女たちの死に対して罪悪感を感じていることも衝撃に拍車をかけていた。
「それでこれからどうするの?」
コーヒー手に取り一服した後彼女が聞いてくる。
「これからか……匿名の怖いところは相手が分からないことだよな、俺は周りの奴らが心配だよ美歌も含めてね」
「意外と冷静なんだね……」
彼女の目つきが少しきつくなる。
「慣れてるからね」
小学生の時に経験しており、中学生の時もよく知らない人は俺に対する陰口を言っていたのを知っているためそう発言してしまう。
「殺したことは否定しないんだ……」
そこだけピックアップして彼女は問いただすように告げる。
「間接的といえば間違いないし、今ここで弁明しても意味はないだろ」
そう間接的には関係しており、少し自暴自棄気味に答える。
「意味があれば話してくれるの?……本当のこと」
真剣な目でそう聞いてくる、彼女は何か本心に近いことを隠している気がした。
「いやごめん話さないかな」
「なんで教えてくれないの?」
「俺はもう怖いんだ大切な人を作るのがその人が傷つくのを見るのが」
自分の過去の記憶を思い出し弱気に彼女の問いに答える。
一呼吸し彼女は
「…………そう、自分に甘いんだね」
「そうだな、その通りだと思う」
間違いじゃないが彼女の言い方が段々キツくなってくる。
「すぐに開き直って話半分で肯定されるの嫌い」
「そうか、ごめんな」
気迫に萎縮し謝罪の言葉を伝えるが、逆効果だったようで
「謝らないで誠意も感じない謝罪なんてそれこそ意味ないよ」
「……なぁなんでそんなに怒ってるんだ?美歌は」
何を彼女はそんなに怒っているかが分からない、彼女がよほど友達思いのいい人でなければ……先なども感じた裏があるように感じた。
「なんで?なんでなのか教えたら私の問いに答えてくれるの……?」
「いいや、あいつらのことは墓まで持ってくって決めてるから」
ここでは俺の事情から話せない‥しきっと彼女に真実を伝えることはないだろうそう思い
彼女に墓までいう伝える気がない意思を伝える。
「そう、墓までね…じゃあこれだけ言わせて」
「?」
身構えるように言葉を待つ。
「私の初恋の相手、大切な従姉妹の詩音を殺したのはあなたなの?」
「……詩音は女だぞ?それに詩音と従姉妹…」
彼女の性別は女、詩音は中世的な美人だったため女性同士というのはあり得なくもないが、従姉妹という発言で彼女が何を怒っているのか繋がった気がした。
「そんなのは知ってる小学生の時の話だから、小さい頃は男の子だと思ってたの」
ない話ではないと思った彼女は親しい人には主語が僕になるため小さい頃は男の子にも見えたのだろう。
「話しがそれたね……答えてよそれくらい」
「………………」
それを聞いて尚更、詩音のことは伝えられない、彼女と親しく、詩音のことを思っているなら。「彼女がバレンタインの日に裸の写真を無理やり撮られ俺と二度と会うなと脅されていたことなど」彼女の唯一1人の肉親の母親と墓まで持っていくと約束したことを……伝える気にはならなかった。
「答えてくれないんだねやっぱり」
「‥‥‥一つ聞かせてくれ、もし俺が殺したとしたらどうするんだ美歌は?」
勇気を出してこの場に来た彼女が救われないと思い、普段では絶対に言わない発言だか、掲示板のショックと、親友を思ってくれていた人へ伝えられないなどの複雑な思いから自虐的聞いてしまう。
「自分は聞くんだ、はぁーそんなの決まってるよ、」
ため息をつきながら彼女は口を開く
「理由を知りたいのなんで詩音があんなに強い子が自殺なんてしたのか」
殺したい、恨むなどの発言ではなく、ただ理由を知りたいと、虐めていたかもしれない相手に対してその発言は眩しく優しく感じた。
「それがお前の救いになるのか?」
詩音は精神的に強かった、だが度重なるイジメ、陰口によるストレスと、写真をとられたことからか心の弱さが出てしまったのだと俺は思っている。イジメに対し何もしなかったわけじゃないが、常に見ているわけもいかず俺が絡んだこともイジメに拍車をかけていたことも事実だった。
「なるよ話してくれなきゃ鉄心くんのこと恨むから……」
「そうか……じゃあやっぱり答えられないな」
俺が恨まれるだけで、親友の尊厳が保たれるなら安いものだと思いそう伝える。
「なんで‥‥なんでこんなにお願いしてるのに教えてくれないの?」
下唇を噛み締め今にも泣きそうな顔で彼女が聞いてくる。
「お前は詩音を好きだったみたいだけど、きっと詩音は今の美歌は好きじゃないよ」
気持ちはわかるが、答えられない自分がもどかしく、どうせ恨まれるならと憎まれ口を叩く
「私と詩音の何がわかるの!どれだけ大切な人だったか」
あたり前の反応だが、大切と言う言葉に俺が美歌の立場だったらと考え、気持ちが揺らぐ、
「「大切な人か‥」わかった……わかった、ストップだこれ以上話すなら場所変えよう店に迷惑だ」
店にも迷惑だし、もし話すにしても俺の事情でここでは話せないため彼女をなだめるように伝える。
「……いいもう帰る」
先ほどまで突っかかってきた彼女が話さない俺に痺れを切らしたのか投げやりに、吐き捨てるように言う。
「そうか……気をつけて」
留める理由もなく……
「‥‥‥さよなら」
そう俺に伝え、飲みかけのキャラメルラテを持って店を出た。
「はぁ味気ねぇ」
すっかり氷で薄くなったコーヒーを飲み1人呟く。
とても短い間に沢山のことを知り呆然としたままそこから動けなかった。
過去の出来事が俺を追いかけて離さない現実を実感しつつ、彼女に今度会うときはきちんと謝らなきゃ、でも‥どんな顔をすればいいのか、関わらない方がいいのか思考を巡らさるが俺の中で答えが出ることはなかった。
――――――――――――――――――――
―――――――――――――――――――――――
作者余談欄
いつも読んでくださりありがとうございます!
よければハート等貰えると嬉しいですっ
今後の展開はちょっと鬱な展開が多いと思います。
もっと中を深めて、深めてーー!からこの内容は書きたかったのですが後15話程で完結させようと思いますので、時間美歌の人物像が想像しづらく申し訳ないです汗
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