第18話 甘い抱擁

「ぎゅーですよ師匠?元気でました?」 


「う、うん元気出たから離れよう真昼ちゃん」

俺は元気が出るというか困惑していた。

教室に戻り席に着いた俺は何故か真昼に背中から抱きしめられていた。甘い柔軟剤が鼻腔を刺激し、柔らかく小さい感触が背中を包んでいる。

「くんくん、師匠何かつけてますか?とてもいい匂いがします」

「恥ずかしいからね?羞恥心どうしちゃったのかな?ははは」

「癖になりそうです」

「話聞いてるかな?」

本人の表情は見えないがおっとりとした口調から顔も想像できる。それよりも周りからの視線が絶妙に優しいのもなんだか気になるけど……

翔太お前はなんでハンカチ噛み締めてこっちを見てる。健人はなぜか親指でグッとしており、勇気は満面の笑みでニヤニヤこっちを見てる。 


「聞いてますよ羞恥心はお母さんのお腹の中において来たました」

「…………」

何この子どんな育ち方したらそういう言葉出るの?お母さん、お父さんお宅の娘さん出会って数ヶ月の男に抱きついて匂いを嗅いで惑わすような女の子になってますよ。


「あの、鉄心くん」

今度は右手の上に感触を感じる。

「えーとユウミさん?」

今度はユウミが手を握って来ており思わずさん付けしてしまう。

「鉄心くん心配です、何も言ってくれないけど顔には出てるんですよ?」

「………………」

「だから私でよければ‥相談してね」

顔に出やすいのは良く言われるが常に鏡を持っているわけにもいかない。ユウミさん、ちょっと違うけど指絡めるのはやめてね?

お姉さんは……すごい顔してるけど大丈夫かな?


「鉄心くん話しにくかったらレインでもいいからね?みかみかは結構聞き上手なんだよ?」

不意をつかれるように耳元で美歌さんが声をかけてくれる。みかみかは確かあだ名て言ってたけど美人にこんな近くで声をかけられるとドッキとする。

新は凄く複雑な顔をしておりさっきの会話を思い出すが、どうにもうまく反応できず右腕と背中の暖かさ、左耳に残るゾワゾワとした感触が俺の中を支配していた。


みんなの優しさがくすぐったくも感じまた、もし俺の過去を知られたら、全てを伝えたらどうなるのかわからないが、その時何故か俺は俺じゃなくなる予感がした。


「かくれんぼだよいつか私みたいな素敵な人を見つけてね」

葵……俺の周りには優しい人がたくさんいるよでも、葵みたいな素敵な人が見つかるか俺にはまだ分からない。

でもこんな関係がいつまで続くのだろう‥‥‥そんなことを考えてしまう自分がいた。




―――――――――――――――――――――――

作者余談欄

いつも読んでくださりありがとうございます!

よければハート等貰えると嬉しいですっ


ラブコメなのに、ちょっと密着度とか足りない感じがしたので今の関係でできる限り追加してみました。プラトニック過ぎるとつまらないと思いますので……特定の人に親密度を高めると最終話に繋げるのが難しいので今後も小出しにしていきます。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る