第17話 恋バナ=小学校の記憶

それから日々は過ぎクラスも馴染み始めた頃いつも通りの昼の時だった。


「鉄心さー彼女作らないの」


何を思ったのか新がいきなり聞いてくる。こいつは中学の時のことは知っているが小学校は違く、初恋の葵の事件のことは知らない。


詩音が自殺してから半年程も経ち、新も高校生になって詩音のことも忘れてきているようで、あの場にいたのは俺と詩音だけだから記憶が薄くなるのは分かるが、親友を失い、大切なもの、それこそ彼女を作ろうなどと思う心情ではなかった。

だがそれを口に出すのも憚れる。


「いきなりどうした?それこそ新こそ彼女作らないのか?」

当たり障りない返答をし、どう言った要件なのか把握するべくオウム返しのように新に聞いてみる。


「いやさ、鉄心の周りには女子が集まってるじゃんいい人いないのかなって」

「なんだそれ?女子て言ったって友達だけど?」

「それはそうだけど、学生なら友達から彼女になるじゃん普通」

「まぁ、そうだな」 

「それでいい人いたら彼女とか作らないのかなって」

「……うーん?作らんな別にいい人いないし」

「それでも相手がお前を想っていて告白されたら?」

「なぁ新お前なんかおかしいぞ?」

ガラガラー

「あいたっ鉄心くんっお昼ご一緒しよーほらお姉ちゃんも」

「師匠来ましたよー」

「おー真昼にユウミそれとエリカ」 

「それとってなんだよ?まぁ、わたしはユウミと一緒に食べるだけだからいいけど」


「よいしょっと師匠それでなんの話ししてたんですか、なんか顔がいつもより晴れないですけど?」

席につき少しした後顔に出てたのか真昼が聞いてくる。


「うん?別にいつも通りの話し」

「あーそれは恋バナしてたんだよ」

さっきの今で、話題に出したくないのであたりさわりなく答えたのに、翔太のバカが口を滑る。しかも女子が好きそうな話を。

「バカ翔太そんな話ししてない…」

「えー!その話しわたし気になります」

止めようとしたが、目がキラキラしてる弟子に言葉を遮られる。


はぁーため息をつくが女子はこの手の話が好きなようで、ここ最近の流れだとこの後美歌が来て食べており嫌な予感がすると

「はろー鉄心くん、真昼ちゃんお昼ご一緒しよー」

クラスも日が経ち最初より慣れた口調で美歌が言う。

「あれ?美歌さんいつもの2人は」

「あそこで寝てる部活忙しいんだってご飯すぐ食べて寝てるの多いんだよね」 

最近では席替えをし隣に美歌が来たこともあり、美歌も真昼、ユウミ、エリカと一緒に食べることが多くいつも通りの風景だが、今はタイミングが悪い。……非常に悪い。

「それで恋バナの話です!なんの話ししてたんですか?」

「恋バナしてたの?このメンバーで?」

不思議そうに美歌が聞く


「師匠達がしてたらしいです気になりますよねユウミさん」

「え、なんでそこで私にふるの」

学食で買ったであろうパンを開けているユウミが驚いている。

「ま、まぁ気になるけど……」

「そういえば?この間鉄心くんの幼馴染に会いましたよ彼は元気にしてるか?幸せそうですか?て聞いて来ました。」

思い出したかのようにユウミが俺に向かい言ってくる。

「…………はい?俺幼馴染とかいないはずだけど」

少し考えたが幼馴染の女の子はいない。


「え?だって前に看病で家に行った時に勝手に見ちゃったんですけど、青い目の髪を結んだ可愛いこの写真あったじゃないですか、その子が成長したらこんな子になるんだなて人がお姉ちゃんと帰ってる時に声かけてきて、え?あの子じゃないんですか?」


葵はもう死んでいないはず、なのに葵が成長した姿でいるのはおかしい。おかしいはずだが一つ心あたりがある。

「御幸のことか……」

「御幸とかお前幼馴染いたんだ俺たちも知らないなんて意外だな?」

「御幸て人なんですねとても愛らしい人でしたよ」

「師匠の幼馴染気になります」

「へぇ聞かせてみぃ鉄心」


驚きからか言葉に出てしまっていたようで、周りに拾われてしまい、それぞれ反応は違うが気になっているようだ。だがそれよりも御幸だとしたら

周りの声も耳に殆ど入らず御幸のことばかりが頭の中を支配していた。

幸せかと聞いて来ているということは……俺のことを心底恨んでいるのは間違いない……。

山崎 御幸……山崎葵の2つ違いの妹。

どこでユウミ達と仲が良いのがわかったのか不明だが、何かしてくるかも知れない。小学生の時のように……。 

小学生の葵が死んだ後に起きたイジメと、彼女のあの時の言葉は忘れない。

「大好きなお姉ちゃんを殺したあんたをお父さんとお母さんを狂わせたあなたを……」

「私は絶対に許さない!!!あんたが死ねばよかったんだ」

「お姉ちゃんは優しいからあんな約束をしたけど私は許さない、絶対に許さないんだから」

唇からは噛みすぎたのか血が出ており、目は涙が流れ葵と一緒の綺麗な青の瞳は小学生とはお前ないほど血走っており心底恨んでいるのがわかった。


登下校の帰り道、小学生は集団で帰るため彼女も事故の時その場にいた。

事故がある前は

「私も鉄心くん大好きっ!お姉ちゃん独り占めしないで」

などと甘えて腕を組んでくれる妹のような存在で本当に可愛いく、少なくともあんな顔をする子じゃなかった。


事故の後、葬式は葵の両親の強い希望……いや拒絶で参加は出来ず、お墓の場所すらわからない。

そういっちゃんのおかげで泊まったり遊んだりできるようになった矢先だった。流石のそういっちゃんも葬式の時は口を出さなかった。「ただ、強く生きろあの子の分まで…」と言っていた。


亡くなった後、彼女がいなくなった喪失感は計り知れなかった。それだけでなく葵のおかげで馴染めてたクラスもある噂から一変した。

その噂も下の学年から広がった噂だと後で知った。

「鉄心が葵を殺したんだって」

「人殺し」「突き飛ばしたらしいよ小学生だから捕まらないんだって」

「親も殺したらしいよ」

「優しくしたら殺られるらしい」

実際は居眠り運転で、いち早く気づいた葵ちゃんが助けてくれたのが事実だが、そんな真実よりクラスは中心であった彼女がいなくなった喪失感か、純粋な悪意なのか有る事無い事をいい、そんな噂はすぐに広まった。


「葵ちゃんを返せ人殺し」

それから葵といて楽しかった小学校生活は変わった。恐らく好意を抱いていたであろう男子からは小学校にあったバルコニーの陰になるとこで涙を流しながら殴り蹴られ、無言で耐えた。反応が気に入らなかったのか上履きは屋上に投げられた。

教室に戻ると、丁寧に机は廊下にあり、授業のたびに自分で戻した。

教科書は中庭に雑に捨てられていた。

教科書は所々ノリで引っ付き、所々に死ねや、人殺しと描かれていた。


「鉄心くん臭いねうん、臭い臭い」

体操着はかけてあったが、丁寧に雑巾が入れられ、微妙に濡れており体育のたび異臭がし主犯だと思われる女子達がクスクス笑っていた。


それでも俺は彼女が通うはずだった学校に通い続けた。親代わりのそういっちゃんの「彼女の分まで強く生きろ」という言葉を……強さという単語を自分のいいように履き違えていたがその時は気づかなかった。噂は俺の心を蝕み、いつからか無口になり、自分のことを話さず、しまいには事実ではない自分が殺したと……成熟していない心に呪いのように焼きついた。

そんな様子をみんな曰く

「死んだような顔の人殺し」

「何を考えてるからわからないキチガイ」

などと言われていた。

自分がしたことに対する罪悪感がどんどんのしかかる日々を数ヶ月過ごしたある日そういっちゃんが葵の死の喪失だけじゃないと体の傷などから気づきすぐに対応してくれた。


学校の隠れたところにカメラを置き、それはイジメの一部始終を捉えていた。無断でなど、加害者や学校からは言われたが「お前らの息子、教え子が何したかわかっているのか」などそれこそ見たこともない気迫で全員に対し1人で話し、裁判などの話になったらしいが最終的には向こうの両親や学校の先生は謝って来た。やった子どもは来なかったが別に顔は見たくなかったので気にしなかったが、そういっちゃんは「謝るチャンスもやらんとは、クズの子はクズになるんじゃぞ」と珍しく憤慨し机を叩き愚痴っていたのを覚えている。


そして噂を流したのは恐らく御幸だとそういっちゃんから聞いた、だが噂を流しただけで咎められず、葵の両親は出会った頃より酷くなり、御幸は毎回送り迎えをされており時折その姿を遠目に見たが、向こうの母親の顔は子どもに見せるような顔ではなかった。

俺はそういっちゃんの計らいで学校を変えるという話も出たが、辛くなったら休むという約束をしてが良い続けた。


イジメはなくなり、腫れ物に触るように無視される日々を過ごしていたある日久しぶりに会った御幸が放課後の下駄箱の前にいた、

その時俺に向けて言った言葉が

「大好きなお姉ちゃんを殺したあんたをお父さんとお母さんを狂わせたあなたを……私は絶対に許さない!!!あんたが死ねばよかったんだ」

「お姉ちゃんは優しいからあんな約束をしたけど私は許さない、絶対に許さないんだから」


彼女の両親は葵が死んだ後、過保護になるだけならよかったが男を近づけない、事件に巻き込まれないよう外には出さないなど、他にも家庭内で色々とあったようだがそれを知る術は俺にはなく、葵の両親は彼女を蝕む毒のようになっていたようだった。

中学はそういっちゃんの計らいで、山を越えた反対側の街の学校に通い、小学校の時の知り合いとは合わず新しい環境の中学に通うようになり、小さかった俺も2時成長で心も体も大きくなった。


「ねぇ、鉄心くん話し聞いてる」

「師匠死んだような顔してますけど大丈夫ですか?」

「おい、鉄心大丈夫か?昔のこと思い出したのか」

昔のこととは詩音のことだろうか、翔太が知るはずもない。みんな心配してくれていることに気づき

「あぁ、大丈夫だよ」

と空元気で答える。

「ごめんトイレ……顔洗ってくるわ眠くてさ」

みんな心配して優しい言葉をかけてくれるその場にいたくなく。席を経ちトイレに向かう。


鉄心がトイレに席を立った後……


「恋バナどころじゃなくなったね」

「ねぇ……翔太くん昔のことってなにか聞いてもいいの?」


美歌が翔太に聞く、翔太は新に顔を向けるが

「ごめん俺もトイレだわちょっと遅くなるかも」

新も席を経ち鉄心を追いかけるようにトイレに向かった。

「……う、うん鉄心に聞いてくれ俺の口からは言えない」

流石の翔太も詩音のことは周りには言わなかった。


「ねぇ、お姉ちゃんわたし悪いことしたのかな鉄心くんがあんな表情するなんて……」

「バーカユウミは何も悪くないよ、何があったのか知らないがあいつが言わなきゃ何もわかんねぇよ」

「そうだね……いつか話してくれるかな鉄心くん」

「師匠、心配です落ち込んでる時は抱きしめると元気出るってお母さんが言ってました。お父さんが落ち込んでる時抱きしめると元気が出るので、師匠も元気が出るように抱きしめた方がいいですかね」

「大胆だね真昼ちゃん……」

隣の小さい子の発言に驚いていたユウミだった。


「おい鉄心トイレじゃなかったのかよ」

俺はトイレじゃなく校舎の渡り廊下の窓際にいた。

「あぁ、新かどうしたトイレはこっちじゃないぞ」

「そんなことは知ってるよ、悪かったななんか強引に色々聞いたから詩音のこと思いだしたのか」 

詩音のことは思い出してはいないが話に乗っておいた方が自然かと思い合わせる。

「あぁ、」

「悪かったな、俺さ顔はいいじゃん」

「いきなりどうした、いい方だとは思うけど」

「それでさ時間さんともいい感じかなと思って告白したんだよ」

「……」

行動が早いと思うが男女の中はわからないので無言で返す。

「ほら、毎日連絡するし彼女とも学校で話したりするからさ、高校だと彼女欲しいじゃん」

「それで振られたんだよ、今日普通に声かけてきたけど俺とは離れてただろ」

それでこのメンバーで恋バナとか聞いてたし、他の女子達と違ってグイグイ聞いてこなかったのか。

「話は続きがあって、振られた理由もダサいけど聞いちゃったわけだよ」

「…………」

「それで好きな人がいるからって教室で告ったんだけど隣の席見てる気がしてさ」

「それでお前とは確定してないけど、お前がいない時クラスで声かけたら話してくれるけど向こうからはあまりないし、親睦会の時も一言二言ぐらいしか話さなくてさ、勘繰って勝手にイライラして少し強引過ぎたごめんな」


「あぁいいよ」

気にしてないからとは言わないこいつの思いがどれだけだったか測れないし、クラスで話す以外あまり接点のない美歌の恋の行方など知ったことはないから。

「あーよかったなんか鉄心が遠くにいきそうなきがしてさ」

安心したのか、安堵の表情を浮かべている新。

新は気づいているのか分からないが、よく女子が集まるという発言、俺の昔のことになると優越感を抱いてるような表情をするお前自身のことを……。

いい人になりたいと思ってるんだろうが、根本的にそう思ってる奴はいい人ではない。新自身気づいているのかわからないが。

今話して救われたのは新だけだぞ。

とそれは口には出さない、それで崩れるならそれまでの関係だが、さっきまでいた教室の風景を思い出す。……その光景を、いつか崩れるのはわかるがまだ今は守っていたい気持ちが心にあり、自分で考えすぎだなと思考を放棄し「戻ろう心配させたしな」と言い新と教室に戻った。




――――――――――――――――――――

作者余談欄

ここまで読んでくださりありがとうございます♪

よければハート等貰えると嬉しいです。


ついに明かされた鉄心の小学生時代の一片。

一応葵の妹の御幸は後付けでなく、最初鉄心が葵の家に行った時の会話にも出て来てます。

虐められた辛さを知ってるから鉄心は優しく、自分のことを話さない性格になり、相手のこともよく見ていたりします。

一応最終章の序章になります。伸ばそうとすれば他のキャラとの中を深めるエピソード等考えていましたが、初投稿で一応終わらせるのが目標なので早足なところは目を瞑ってください。


初投稿なので手探りで頑張っていきます。心の片隅程度で良いので応援よろしくお願いします。

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